「これ・・・懐かしいなぁ・・・」
それは、ストップウォッチだった。
今みたいなデジタルのじゃなくて、時計みたいに針がついた昔ながらのヤツ。
この手のタイプのストップウォッチを見るのはいつ以来だろう。
周りについた土を指で拭い、手で軽く叩くだけで随分と綺麗になった。
「まだ動くのかな。」
俺は親指でストップウォッチのボタンを押した。
カチッ。
押した途端、一瞬地面が大きく揺れたような感覚に襲われ、思わずその場にうずくまる。
しかし地震ではないようで、地面はそれっきり揺れていない。
「今の・・・何だ・・・?」
もしかしたら、ずっとリフティングしてたから足にキちゃったのかも。
あは・・・いつまでもヤングなつもりが、もう年だなぁ〜。
「ん?」
立ち上がろうとしたその視界の端にサッカーボールが映った。
「あ、やっと見つかった。早く撮影に戻らなきゃ。」
咄嗟にポケットにストップウォッチを押し込み、もうひとつのボールを持ってグラウンドへ向かう。
「すいません、お待た、せ・・・?」
そこにはメンバーの姿はなかった。
「あれ?みんな体育館に戻っちゃったかな?」
俺はボールをワゴンに戻し、体育館に駆け込んだ。
「・・・は?」
体育館では、なぜかバレー部とバスケ部が練習している。
メンバーもスタッフも、誰ひとり見当たらない。
たしか今日1日体育館貸し切りだったはずなんだけど・・・おかしいな・・・。
「俺の撮影場所にみんなで行っちゃったのかな?」
俺は体育館を抜け、廊下を走った。