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ワゴンからもうひとつボールを掴み、「よ〜いドン」でリフティング開始。

俺もテツも、腐っても(?)経験者だから、すぐに落とすようなことはしない。
あとは、持久力勝負になってくる。
腐っても(?)ヤングライオン、3つも年上の、しかも干支を3周したようなオッサンに負けない自信はある。

それでもこういう勝負事での村上てつやは気持ち悪いほど強い。
ヒ〜ヒ〜言いながら、時には「こらっ、落とせ安岡!」などと卑怯な脅しをかけつつも、必死にボールに食らいついている。

何分こんなことを続けていただろうか、撮影を終わらせた北山さんと黒ぽんがこっちにやって来た。

「何やってんの?」
「ん?見て、わかる、でしょ?リフ、ティング、対決っ・・・」
「おわ、楽しそう!北山、俺らもやるか!」

黒ぽんがそう言ってボールを地面に置き、蹴り上げた。

ボバン!・・・という鈍い音とともにボールは俺の方に向かって飛んできて、見事俺のボールに命中・・・
ふたつのボールはコロコロと校舎の横手へと消えて行った。

「あはっ、ごめんごめぇ〜ん。」
「ちょっ、黒ぽん!!」
「ぃよぉ〜っし!俺の勝ち!黒沢サンキューな!グヒヒヒヒ!」
「黒ぽん、それ、リフティングというよりキックベー・・・」

唖然とする俺をよそに、テツは大きくガッツポーズ、北山さんはヒィヒィ笑って最後は言葉になっていない。
そしてあのA級戦犯はヘラヘラと笑いながら、靴に付着した砂を指で拭い去っている。

「んもぅ!」
俺はボールを追って校舎に向かって走った。

「お〜い安岡〜、撮影だぞ〜。」
何も知らない酒井さんが、走る俺に暢気に声をかけてくる。

「はいはい!わかってますよ〜だっ!」

「あいつ、何を怒ってるんだ?」という酒井さんの声と、「さぁ?」と答える黒ぽんの返答にイライラしながら、校舎の横の細い道を入っていく。

ひとつはすぐに見つかり拾えたが、黒ぽんが蹴ったと思われるボールが見当たらない。

「んもぅ、ホントあの人は・・・なんでテツは黒ぽんに声かけたんだろ。信じらんない。」

ブツクサ言いながら、草を掻き分け歩いていると、足元に銀色に光るものが目に入った。

「ん?何か落ちてる。」
そこにしゃがみ込み、半分土に埋まっていたそのものを拾い上げる。


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