ChronoGraf(クロノグラフ)
【1.どうなってるの?!】
今日、俺たちはPV撮影のため、テツと黒ぽんの母校を訪れていた。
特別に借り切った体育館の中央で円を描くように外向きに立ち、曲に合わせて何度も歌う。
単純に見えて結構骨の折れる仕事だ。
「はい、OKです!次はひとりずつのカットです。ここから遠い教室からの撮影になりますので、北山さんからお願いします。」
「はい。」
「他のみなさんは待機してください。」
「は〜い。行ってらっしゃ〜い。」
待機班が北山さんとスタッフに向かって手を振り、見送る。
「次は黒沢で、その次が酒井で、安岡、んで俺の順か。」
テツが、残ったメンバーを順に指差しながら確認し、自分の腕時計をちらりと見遣った。
「俺、ちょっくらサッカー部の練習見てくるわ。安岡も行くか?」
にやりと笑ってるのは、恐らく早くボール蹴りたくて仕方ないからだね。
「わかった、俺も行く!」
「よっしゃ、じゃあ行くか。」
足早に前を歩くテツの後ろを俺は追った。
グラウンドに到着すると、サッカー部はドリブルの練習中だった。
祝日なのにPV撮影のために出て来てもらっている。ありがたいことだ。
テツは早速ゴールネットの横に置かれたワゴンからひとつボールを取り出した。
「ごめん、ちょっと借りるね〜。」
「はい!どうぞ、使ってくださいっ!」
いかにも体育会系な返事が返ってきて、思わずふたりして笑う。
グラウンドの片隅、ふたりでパスを回した。
「お、そうだ。リフティング対決、しねぇ?長く持たせた方の勝ち。」
「いいよ。何賭けんの?」
「お前ホント賭けんの好きだなぁ。」
「だって、下剋上を謀れるチャンスじゃない?」
「お前になんか負けねぇっての!」
「俺だって負けないっすよ!」
「大した自信だな。じゃあ負けた方がサッカー部の片付けの手伝い。これでどうだ。」
「おっけ〜☆」