5時を少し過ぎた頃、テツは再び事務室に訪れた。
「や〜す〜お〜さぁ〜ん!」
登校時に友達ん家に迎えに来た小学生のように呼ばれ、引きつった笑顔を浮かべる俺・・・。
「そんな大声で呼ばなくても聞こえてるから!」
「早速やりましょう!練習練習〜♪」
後片付けも半端な状態なのに、テツはまたまたズルズル〜っと俺を引っ張って音楽室へと連れていった。
音楽室に入って早々、浜野くん・平井くんを紹介された。
「村上から聞きましたよ。」
「すごく歌がうまい人が見つかった、って。」
「あ・・・ども、ありがとう・・・」
俺は、噂に聞きし2人組にペコペコと頭を下げる。
「安尾さん、3人で練習したの聴いてください。」
「あっ、うん・・・わかった・・・」
テツのカウントで始まったのは、オーディションに使われていた「ALONE」。
高校生、しかもまだ世にアカペラブームがそれほど起こってない時代の素人さんにしてはバツグンの出来だ。
3人組はその後も「The Longest Time」など本番で披露する曲を順に聴かせてくれた。
「安尾さん、どうでした?」
「すごい!みんなホント上手だよ!」
俺は拍手を交え、お世辞なく完成度の高いハーモニーを素直に褒め称えた。
「ありがとうございます!昼休みにチョチョッと練習してただけなんですけどね。
やっと今日メンバー4人揃ったから、放課後も練習しようってことになったんです。
さっき部活でヒザやっちゃったことにしてこっち来ちゃいました☆」
テヘ〜ッって笑いながら言うテツ。
知ってる知ってる。
根回しもしっかりしたんだよね〜、副キャプテン。