【6.村上くん】
6時間目の終業を告げるチャイムが鳴って、5分ぐらい経った頃だろうか。
「事務員さぁ〜ん。」
事務室にズカズカと入ってきた生徒がひとり・・・。
「うわ、来たっ・・・」
「来ましたよっ☆返事聞きに。・・・で、やってくれますよね?」
「いやっ、あのっ、俺困る・・・」
「俺も困るんですよ、人数が集まらなくて。だからゼヒ事務員さんに入っていただきたいんです!お願いします!」
ぺこぉ〜って深々と頭を下げられ、こっちが恐縮してしまう・・・。
「そう言われても・・・」
「お願いしますっ!ちょっとだけ手伝ってくれればいいっすから!ね!」
テツは俺の腕を掴んだ。
周りの事務員さんも事務室長も、『若いっていいな〜』って感じのさわやかな笑みを浮かべて俺たちの動向を窺っている。
そういう悠長なシチュエーションじゃないんだよ、ゴスペラーズ的には!
「いや、あのさ、俺ここのお仕事あるしね、とにかく困るん・・・」
「あのぉ、すいませ〜ん、この人借りていいですか?」
テツが周りの事務員さんたちを見渡しながら尋ねた。
「いいですよ。そのかわり10分だけね。」
「ちょっ、事務室長っ?!」
事務室長、勝手に許可出しちゃダメぇぇぇっ!
「じゃあ借りま〜す。」
「いや、あのっ・・・!」
俺の困惑をものともせず、テツはズルズル〜っと引きずるように俺を連れ出した。
そして到着したのは、屋上手前の踊り場。