あ、そうだ。ついでに・・・
「あ、あのさ・・・お願いがあるんだけど・・・」
「・・・今度は何ですか・・・?歌なら歌いませんけど。」
不信感マル出しの顔でカレーを頬張る。
「黒ぽ・・・黒沢くん・・・カレーおごってあげた代わりにやってほしいことあるんだけど、ダメかな・・・?」
「へ?」
「俺、いろいろ事情があって、君にしか頼れないんだよ〜・・・お願ぁいっ!」
手と手のシワを合わせて幸せってポーズをとって、ちょっと上目遣い、瞳キラキラさせてみる。
「・・・何ですか?内容によりますけど・・・」
「あのね、俺の台本どおりにやってくれればいいから!」
「・・・はぁ。台本・・・。」
黒ぽんは頭にハテナマークを5つぐらい出しながら、またカレーを口へと運んだ。
昼休み、早めに事務室に戻った俺は時計をチラチラ見て、その時間を待った。
昼休みが終わる5分前。約束の時間だ。
「あの〜・・・。」
黒ぽん来た〜!!
「財布、落ちてた、みたいなんですけどぉ。」
し、芝居ヘタだな、それにしても・・・ま、いいか、この際。ツベコベ言ってる余裕はない。
「財布?!」
俺は財布という言葉に反応して立ち上がったフリをして、黒ぽんに駆け寄った。
黒ぽんの手には、さっきコッソリ渡した俺の財布が。
「お、俺の財布だ!これ、どこに?」
「えっと・・・学校の体育館の近くの植え込みのそばに・・・黒いのが、見えて〜。」
「あ〜!昨日面接の後、学校の中いろいろ見学に回ってたんだよ〜。その時に落としちゃったかなぁ〜?
うわぁ〜、よかった〜見つかって!ホントありがとう!・・・君、名前、なんて言うの?」
「え?!!名前ってっ・・・あ!え・・・えと、黒沢っ、黒沢です・・・ハイ・・・」
「黒沢くん、ありがとぉ〜!!」
財布ごと黒ぽんの手を握って感謝の意を述べる。
「うわ、手、すごい汗・・・」
「え」
「あっ、なんも、ない、です。じゃ、失礼しまぁす・・・」
黒ぽんは逃げるように事務室から走り去ってしまった。
もう、いっぱいいっぱいだったようだ。
かく言う俺も、いっぱいいっぱい、汗いっぱいだ・・・。
ぎこちない部分がありつつも、それでも一芝居打ったことで事務室長に前借りしたお金を無事返すことができた。
黒ぽんさまさま、だ。
でも、黒ぽんとの契約で、これから毎日カレーをおごらなきゃなんなくなった。
「カレー1杯でそんなことしたくない」なんてゴネるからさぁ、仕方なく・・・。
俺、この世界では金ないんだよ?!
ホント手のかかる子たちだよ、まったく〜・・・!