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「で、何で俺とメシなんですか?」

学食のカレーを頬張りながら、黒ぽんが尋ねてきた。

「あの、ね、噂に聞いて。あの、えっと、黒須くんに。」
「黒須?」
「そう。黒須くんから黒沢くんのこと聞いてね、ちょっとお話したいなって思ったんだよね。」

本当は黒須くんから黒ぽんの名前は聞いていない。
でも黒ぽんの疑問を和らげるためにはこれがしっくりくると思ったのだ。

「昨日・・・カラオケ行く予定だった、んだよね・・・?」
「そうなんですよ。足捻っちゃったらしくて。行けなくなっちゃったんです。」
「そ、っか・・・実はね、黒須くんとぶつかったの、俺なんだ・・・」
「そう、なんですか?」
「うん・・・ごめんね・・・どうしても君にも謝りたくて・・・」
「ううん、いいんですよ俺は。また今度行こうって話になってるんで。それに黒須のケガもそんなにひどくないらしいし。」

いいや、よくないんだよ、黒ぽん・・・今の君が知らないところで、事態は最悪の方向に向かってるんだよ・・・。

「あの、さ〜・・・黒沢くんってさ、歌うまい、んじゃない?」
「いいえ〜?そんなことないですよ。たぶん普通じゃないかなぁ〜。歌うのは好きだけど。」
「うそぉん?!めっちゃうまいじゃん!高い声だって出るし、」
「は?」
「はっ!・・・あ、いや、たぶん、高い声・・・出そうな顔してる・・・顔の骨格が、そんな感じ。うん・・・」
「顔の、骨格・・・??」

またも失言だよ・・・
黒ぽんは首を傾げながら、自分のエラの辺りをペチペチ叩いている。

「黒沢くんは・・・人前で歌ったりするの、興味ないの?」
「ひ、人前?!無理です無理です!そんな人前で聴かせれるほどうまくないし!
そんな根性ないですよぉっ!!絶対ムリ!絶対ムリです!」

ブンブンブンブンと首を左右に振って、でもカレーとごはんが乗ったスプーンはしっかり握り締めたまま、激しく否定している。

「いや、でも、きっとチャレンジしたら」
「無理ですって!絶対歌いませんから、俺は!」

そうか・・・俺が言ったぐらいじゃダメか・・・あの眼光鋭い大男の脅しがないと・・・。
とりあえず今度テツの方にアプローチかけて、黒ぽんを歌の世界に引きずり込んでもらうことにするか。


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