【5.黒沢くん】
与えられた仕事は全く手につかず、はかどらない。
理由はもちろん・・・テツの1件があったから。
なんとかテツと黒ぽんを結びつけないといけない。
そのためにどうすれば・・・
「むむむむむむむむ・・・」
「安尾さん、計算合いませんか?」
「ひぇ?!あっ、や、あ、あのっ、だ、大丈夫でしっ!!」
動揺のあまり思いっきり噛んでしまった・・・
俺の居場所を提供してくれたここの人たちへの感謝も忘れてはいない。
だから事務仕事も頑張らないと・・・
俺はまた伝票と電卓の睨めっこを再開した。
昼休みになったのを見計らって、俺はあのふたりがいる教室に走った。
教室のドアの外から様子を覗く。
が、ふたりらしき姿が見えない。
俺は教室から出ようとする生徒さんを捕まえ、尋ねた。
「あ、あのっ、ごめんね、」
「はぁ。」
「テ・・・村上くん、いるかな?」
「えっと〜・・・」
クラスメイトさんはキョロキョロと教室内を見渡し、俺に視線を戻す。
「村上はもう食堂行っちゃったんじゃないかな。いつもチャイム鳴ると同時にすごいダッシュ力(りょく)見せて食堂走ってくから。」
「あはは〜・・・わかる気がする・・・。じゃあ、黒・・・沢くんは?」
「黒沢?ああ、あれです。」
「へ?」
指を差す方向を見て俺は唖然とする。
教室にいる全員が弁当を食い始めてるっていうのに・・・黒ぽんは教科書とノートを広げシャーペン握り締めたまま、机に突っ伏して爆睡中だ。
「あは・・・あ、ありがとうね。」
「あ、いえ。では失礼しま〜す。」
クラスメイトさんはひょいと頭を下げ、立ち去った。