「・・・不思議な人ですね、本当に・・・」
「す、すいませぇん・・・」
「・・・そんなに興味あるなら、泊まられます?宿直室。」
「えっ!い、いいんですか?!」
「宿直はなくなりましたけど、今でも時々使うんですよ。宿直室。」
「そうなんですか?」
「例えば、翌日が修学旅行や体育祭で早く学校に着かないといけない、でも家が遠い、っていう教師もいましてね。
今はそういう時に宿直室を使ってるんです。
ただし、毎日私がここを出る時に校内のセキュリティをONにして帰るので、それ以降に職員室や事務室、特殊教室などのドアに触れるとブザーが鳴って警備会社に自動通報されます。
だから絶対におかしなマネはしないようにしてくださいね。」
「も、もちろんです!!泥棒するなんてマネは・・・」
「疑っているワケじゃないんですがね。センサーに引っかかってしまった場合、あなただけでなく、許可した私も始末書モノなのでね。」
「わかりました!」
「では、これが鍵です。朝必ず私に返却してください。」
「ありがとうございます!!」
やった!これで何とか宿(?)は確保できた!
おっと、また涙が出そうだ・・・
俺は渡された鍵を手に、宿直室へと向かった。
小さいテレビもある。
ボロいけどエアコンもある。
ベッドもある。
小さな流しもある。
それに、なんてったってシャワールームもある!
「ぃえっす!」
ガッツポーズ、グッと引きながら、大喜び。
ホント、事務室長最高!
あの人、ホントいい人だよ!
残業中の事務室長が業務を終えるまでに買い物を済ませておかないといけない。
俺は早速駅前まで買い物に出かけた。
そしてシャツやタオルや石鹸などの日用品、食糧等々を手早く買い込んで、宿直室に籠もった。
買ってきた晩メシを食って、シャワーを浴びて、再放送で何度も見たことのあるドラマを見た。
口から出まかせで言ってしまった「夜の校内見回り」は恐くてできなかったので、そのままおとなしく寝た。