「じゃ、今日はここの修道院の敷地内を案内がてら、いろいろお仕事をやっていただきますから。覚悟はいいですか?」
「ああ、やってやろうじゃねぇか。」
と、ユリエルに大見得(おおみえ)を切ってはみたが、これがまたとんでもなく重労働だった。
この修道院、思った以上に広くて、小麦畑・野菜畑・果樹園、それに乳牛を飼う畜舎まである。
それを順番に案内されながら各々の場所で仕事を手伝うもんだから、あっという間にバテてしまった。
「はい、早く牛にエサやってくださいよ。俺、もう向こうの列全部終わりましたよ?アナタまだ2頭しかエサやってないでしょうが。」
「ま、待て・・・やる・・・やるから・・・ちょっと休憩させろ・・・」
「ダメですよ!ほら、立って!」
カラダがいくらあっても足りないほどの疲労に襲われているのに、ユリエルはピンシャンしている。
くそ、体格は変わらないのによぉ・・・。
「あ、そろそろ昼食ですねぇ。戻りましょう。」
「うへぇ〜・・・やっと終わりかぁ〜・・・」
「昼からはレオの手伝い、お願いしますね。」
「はぁ?!まだやんのか?!」
「何を言ってるんです。そんなの当たり前でしょうが。」
また敷地内をひたすら歩き、修道院の棟へと戻る。
そこでやっとメシだ。
「あ、朝と違ってモリモリ食べてる〜。」
「食わなきゃやっていけねぇだろうがよ。」
「朝言ったことがわかったでしょう。残さず食べる。これ、基本です。」
「うんうん、そうだよ〜。」
昼食後、またお祈りがあって(またか!)、今度はレオに付き添い、工場へ向かった。
「ここ。ここでクッキーとか作ってるんだよ。」
「男がクッキー、か。」
「何で?」
「ううん、別に。」
工場は甘くていい香りが充満してて、その香りだけで幸せな気分になる。
「これさ、試食とか・・・」
「ダメ。」
「あっそ・・・」
レオにあっさり却下された。
「あ、もうそろそろ焼き上がる時間だね。オーブンから取り出すの、手伝ってくれる?」
「おお。」
昔ながらの大きなオーブンの鉄の扉を開けると、ムンとした熱気と、さらなる甘くて香ばしい湯気に包まれる。
「ヤケドしないように、気をつけて。」
「おお、わかってる。」
手に鍋つかみをはめて、天板を引き出す。
「うわぁ・・・すっげ・・・」
「ふふっ、すごいでしょ〜?」
「ホントにこれ、ここの人間が作ってんのか?」
「もっちろん!」
「これ、焼きたての試食・・・」
「ダメ。」
「あっそ・・・」