他の連中の歌も聞いて、パートに振り分けていくと、それだけでかなりサマになってきた。
3日目ともなると完成度がさらに高まり、不協和音でしかなかった騒音が、心に響くハーモニーへと変化を遂げていた。
聖歌隊の中でも飛び抜けて歌がうまかったルカ・ユリエル・レオにソロパートを与えて、曲に厚みをつけてゆく。
「お〜、さっきよりさらによくなってるじゃねぇか。バッチリバッチリ。
あとは〜、ラストの『アーメン』のとこ。もう少し長く伸ばせないか?あと1秒ぐらいでいいから。・・・じゃ、初めからな。」
手で合図をすると、それをキッカケにパイプオルガンの音色が流れ始める。
パイプオルガンはヘタなままだけど、俺は楽器があまり得意じゃないから、口出しはできない。
前奏が済み、聖歌隊が歌い始める。
指揮の真似事をしながら俺も口ずさんでいると、遠くでコツと音がしたような気がして、そちらの方に目を向けた。
音の主はちょうど立ち去るところだったらしく、少し見えていた黒い服の裾は じきに柱の陰へと消えて行った。
あれ・・・司教、だよな・・・?
気にはなったが他のヤツらは気づいてなかったので、俺も歌に没頭することにした。
俺が聖歌隊の教育係に就いて1発目の日曜ミサがやってきた。
俺以外のヤツは、皆
朝から緊張した面持ちで、聖堂に向かって歩いてゆく最中も足取りが重い。
なかでもユリエルの緊張度は相当なもので、肩をいからせ口を真一文字に結んで歩いている。
「おい。そんな緊張するなよ。」
「緊張するなって言ったって無理ですよぅ!だって、俺、そ、ソロパートあるんですよ?!」
ユリエルが余裕のない口調で反論する。
「あのなぁ・・・今までのあの音痴な讃美歌を聞かせてた方が恥ずかしいんだぞ?
今はみんなうまくなってる。見違えるほどよくなった。だから自信持てよ。お前、チキンじゃないんだろ?」
「だからぁっ、人間をニワトリ呼ばわりするなって言ってんでしょうがっ!!」
「そんだけ元気がありゃ大丈夫だな。今ので緊張も解けただろ。・・・あなたに神のご加護がありますように。」
俺がイイ声で司教のマネをして言うと、ユリエルの隣にいたレオが「似合わな〜い!」と茶化した。
「さ、モタモタしてっと怒られるぞ。」
ユリエルの背中を押し、一同聖堂へと急いだ。