ピンポーン。
『・・・はい。』
中から男性の声。ご家族かな?それともアシスタントさんかな?
「プラチナ出版の安岡と申しますが・・・」
『安岡?』
「あっ、はい!今日から街角先生を担当させていただくことになりました。」
『ちょっと待ってて。』
ドアが開くと、そこには髪が少し長めの長身の男が立っていた。
「あ、あの、原稿は?」
「入って。」
「・・・はぁ・・・お邪魔します・・・」
玄関にあったちょっとフカフカのスリッパを履いて、男の後ろをついて歩く。
案内されたのは広いリビングだった。
「あの、失礼ですが、先生は?」
「そこの部屋で作業中だから。そこ座って待ってて。」
「は、はぁ・・・」
男はさっき指差した部屋のドアを細く開け、中に入っていった。
俺は男に指示されたとおり、大きなソファに腰掛けた。
広いリビングにひとり取り残されてしまった。
じっと待っていたのだがすぐに退屈になってしまった。
ソファの座り心地を確かめたり、見晴らしのいい大きな窓から街並を眺めたり、観葉植物の葉っぱ触ったり。
それでも間がもたなくなって、待ちくたびれた俺は、リビングから隣の部屋に向かって声をかけた。
「・・・あの〜・・・」
「ん〜?」
さっきの男の声だ。
「・・・原稿、まだ、ですかねぇ?」
「もうちょいだな。もうちょい。」
「はぁ。あの、先生にご挨拶もしたいんで・・・」
「ああ、描き終わったらな。」
「お願いします。・・・あと、それと・・・」
「・・・何?」
「お手洗いは・・・?」
「玄関入ってすぐ右。」
「お借りしま〜す・・・」