「・・・ありがとうございますっ!!」
歌が終わるのを待って、4人に向かって何度も頭を下げる。
誕生日当日じゃなくても、誰かに祝ってもらえるって、すっごいうれしいもんなんだ、って思った。
「じゃ、俺たちは仕事に戻るわ。薫兄ぃが食べ終わったら、食器片付けといて。その頃にはたぶん原稿出来上がってると思うから。
おい、雄二、陽一。行くぞ。」
「はいはい。」「了解。」
哲也さん、雄二さん、陽一さんが作業部屋に戻ろうとした時、俺の携帯電話が鳴り始めた。
この着メロ・・・
「何?出ないの?」
哲也さんに急かされる。
「あの、これ・・・昨日振られた彼女から・・・」
「出てやんなさいよ〜。」
「うん、早く出た方がいいよ。」
雄二さんと陽一くんにまで急かされ、仕方なく携帯を取り出した。
「もしもし。」
『もしもし・・・?昨日は先に帰ってごめんなさい・・・早く会いたかったのに、全然来なかったから、帰っちゃった・・・。
仕事忙しいの、わかってるのに私・・・』
「いや、いいんだ・・・ごめんね、俺も時間どおり行けなくって・・・」
『遅くなってしまったけど、明日、誕生日のお祝いしたいんだけど、ダメ?・・・勝手なことばかり言って、怒ってる・・・?』
「い、いやっ、怒ってないよっ・・・?っていうか、ホントにいいの?」
「よかったなぁ、安岡。仕事辞めてなくて。彼女に『お前に振られたから仕事辞めました』なんて言ったら、カッコつかねぇぜ〜?」
「ホントだな!それちょっとカッコ悪い!」
電話中だというのに、哲也さんと雄二さんに冷やかされる。
その横で陽一くんも笑っている。
「もうっ、みなさんうるさいですよぉっ!」
『何?どうしたの?』
「い、いやっ、何もないよ、うん。」
『じゃあ、また明日。仕事終わったら電話して?何時でもいいから。』
「ん、わかった。」
電話を切ると、薫さんが「ごちそうさまでした。」と言って席を立った。
「もう少しで完成するから、早く食べな。・・・さてと、あともう一踏ん張りだっ、と。」
薫さんがヒラヒラと手を振り、作業部屋へと入っていった。
今日のサンドイッチの味は、我ながら格別の味だった。