第4話
別の場所でも(2)
優が黒い謎の生物を探しに走り出した、ちょうど同じ頃。
ゲッ高から最寄り駅へと向かう通学路をノ〜ンビリと歩く男子高校生がひとり。
彼は酒井雄二。
哲也のクラスメイトだ。
「あ〜、早弁したらハラが減るな・・・やっぱり1時間目終わった後に弁当食うのは早すぎだったろうか。」
それはさすがに早すぎでしょう・・・。
「“仕事”の前にハラごしらえしておくとするかな。」
あれ?高校生なのに仕事?
そう、彼は普段は普通の高校生でありながら、その美声を生かし「DJ
UZY」という芸名で有名なラジオ番組の覆面DJをしているのだ。
クラスメイトの哲也はおろか、誰ひとりとしてその事実を知るものはいない。
「今日はうどんじゃなくてカレーの気分だな。」
雄二は踵を返して、行きつけのカレー屋に向かった。
3分ほど歩いてカレー屋の前に到着し、店に入ろうとした時だった。
雄二のヒザ辺りに1本のペンが突然現れ、アスファルトの地面に落下しコロコロと転がった。
「ん・・・?ペンだ。」
突然起こった不思議な現象に、雄二は首を傾げる。
しかし絵を描くのも好きな彼は、不気味に感じるよりも何よりも、絵を描く道具であるペンが誰かに踏まれるのが忍びなく思えた。
「カレー屋に入った客が落としたんだろうな。あとで店員に渡しておくか。」
雄二はそのペンを拾い上げて胸のポケットに刺し、店内に入った。
夕食にはまだ早い時間、客は雄二の他にひとりしかいない。
「いらっしゃい〜。」
「ビフカツカレー。大盛で。」
「はいよ〜。」
店に入るなり慣れた様子で注文した雄二は、窓際のテーブル席に陣取った。