頬をペチペチと叩かれ、優はゆっくり目を開けた。
目の前にはカエルの人形のような黒い不思議な生物が。
このビジュアルどっかで見たような・・・
とはいえ、優にとっては初見、目の前の生物を震える手で指差しながら「な・・・ななななな・・・?!」と怯えている。
『あはっ!さっきはごめんねぇ〜!仲間探しながら飛んでたらぶつかっちゃって〜!えへへへぶぎゃっ・・・!』
ニコニコ笑いながら謝っている謎の生物の語尾が乱れたのは、優によって捕えられてしまったからだ。
「てっめぇ〜・・・オレが村上に声をかけようと意気込んでる時に・・・!命はないと思えよ?わかってんのか?あ?!」
き、急に態度と口調が豹変しましたけど・・・大丈夫っすか、この人・・・
という心配も時すでに遅し。
彼は謎の生物の足首辺りを両手で掴んでジャイアントスイングの要領で自分が軸となりグルングルン回り始めた。
「おんどりゃ〜〜〜〜っ!!!」
『ひぇ〜〜〜〜っっ!!!』
そして「飛んでけオラ〜〜〜っ!!!!!」という雄叫びとともに謎の生物を廊下の開いた窓からブン投げてしまった。
アンパンチを食らったバイキンマンのように、謎の生物の姿はみるみる小さくなって、最後にはキラ〜ンと星になって消えた。
「ぜぃっ・・・ぜぃっ・・・」
荒い呼吸で謎の生物が消えていった先を見つめる優。
コメカミ辺りと首の辺りのスジが、ハンマー投げの選手並みです。
優さん恐ろしか〜!
「・・・ったく、ざけんじゃねぇぞ、どいつもこいつも・・・」
どいつもこいつも、って・・・黒い謎の生物だけでしょうに・・・。
「うっせぇな、ナレーター!テメェのことだよ!さっきから耳障りなんだよ!テメェも投げてやろうか、こンの、クズめが!!」
すっ、すいません・・・!
以後気をつけます・・・はい・・・。
「あ〜あ、それにしてもどうしよう・・・また村上に声かけるキッカケ失っちゃったぁ〜・・・
なんかないかな〜、この辺にオカルト的なモノとか生物とか・・・・・・いた〜〜〜!!」
・・・・・・。
「いたじゃん、さっき!さっきまでいたじゃん!
さっきのアレ捕まえて村上に見せたら、話すキッカケができるじゃん!変人な友人ゲットできるチャンスじゃん!!
あ〜、オレのバカ!さっきのヤツどうして投げちゃったんだろ?!
って後悔してる場合じゃないか・・・よっし!さっきのヤツ、ゼッタイ見つけ出してやる!待ってろよ、バケモノめ〜!ひゃっほ〜ぃ!!」
優はひとりごとを目一杯しゃべるだけしゃべって、モーレツなスピードで校舎から駆け出していった。
それにしても・・・あ〜、恐かった・・・