「♪い〜まも〜抱き続ける〜、胸の〜痛み〜・・・ってか。」
鼻歌を交えながら席に備えつけられた紙ナプキンをテーブルの上に広げ、さっき店先で拾ったペンを取り出す。
ビフカツカレーができあがるまでの時間、絵でも描いて時間をつぶすつもりらしい。
特に何か描きたいモノがあるワケではなく、創作でサササッとペンを走らせる。
完成したのは、手のひらサイズぐらいの小さなロボットと、鉄人28号に出てくるようなベタなコントローラーの落書きだ。
「我ながら、意味不明な絵だな。・・・ん?」
雄二は自らの描いたロボットを見て、目を見開いた。
なぜなら、その紙の上の平面なロボットがみるみるうちに立体的になってきたからだ。
目を手の甲で擦って二度見したが、やはり見間違いではなかった。
たしかにロボットはそこに存在している。
どういうことだ、と考えを巡らせつつも、同じく立体化してしまったリモコンの方を操作するとどうなるんだろうという興味の方が勝ってしまっている。
雄二はリモコンを手に取り、スイッチをひとつ押した。
ウィ〜ン・・・
テーブルの上で寝っ転がっていたロボットが、上体を起こし、立ち上がった。
「このスティックを上に向けたら前進だろうな、常識的に考えて。」
そんなことをひとり呟きながら、スティックを上に押し上げる。
ウィ〜ン・・・
思ったとおり、ロボットは前に向かって一歩一歩
足を踏み出していく。
雄二は、最初に押したボタンの横にあるボタンを押してみた。
ピタッ。
どうやら停止ボタンだった模様、ロボットは動かなくなった。