「・・・これって、つまりアレか?このペンで描くと・・・」
雄二が結論づけようとした時、突如店内で悲鳴が上がった。
声の方に目をやると、銀色のスプーンが空中を漂っているのが見えた。
突然の超常現象に、店のオジさんは腰を抜かし床にへたり込んだ状態で、スプーンを指差して何やら言っている。
が、カミカミで聞き取れない状態だ。
スプーンは宙に浮いたままカウンターに向かって進んでいく。
カウンター席にいた客は、「ぎゃぁ〜!!」と叫びながら
もつれる足で店から飛び出していってしまった。
不思議なスプーンは、逃げ出した客の席の辺りに止まると、そこに盛られていたカレーを掬いとっていく。
掬われたカレーは一瞬にして消え、再びカレー皿に戻り、掬う、消えるを繰り返す。
雄二はふと気づいた。
「もしかして・・・透明人間か・・・?」
雄二は紙ナプキンをもう一度テーブルに広げ、さっきのペンでゴーグルのようなメガネをスラスラと描いた。
「出てこい、透明人間の見えるメガネ!」
紙ナプキンに描いたメガネが、先ほどのロボット同様、立体化していく。
雄二はそれを掴み、目に装着する。
「なっ・・・?!」
黄色いカエルのようなヘンな生物がカウンターのイスの上に立ち、スプーンで皿のカレーを掬っては食べているのが見えた。
雄二は、その生物に歩み寄り、猫を掴む要領で首根っこを摘んで持ち上げる。
「こら。お前さん 一体何をやっとるんだ・・・」
『もぐもぐも・・・ん?あれ?今
透明になってるはずなのに。見えるの?』
「ああ、見えてるとも。俺にはな。」
『あらま〜。』
取っ捕まった状態なのに、謎の生物は慌てる様子もなく返答する。
「話はあとでゆっくり聞く。店出るぞ。」
『え〜?まだカレー残ってるのに?』
「“え〜?”じゃない!・・・とにかく出るぞ。これ以上ヒトサマに迷惑をかけてどうする。
・・・オジさ〜ん、さっきのお客さんの分と、俺のビフカツカレーの分のお金置いてくから、取っといてください。」
雄二は財布から2千円札(とっておきの1枚)を出すと、レジの横のトレイに置き、釣りも取らずに店を出た。