「よかったね、兄ちゃん許してくれて。」
空き部屋へと案内する陽一は、ムララに命の危機があったとは思えないほど淡々と労った。
『あ、あぁ、助かったぜ。ありがとな。』
「ううん、当たり前のことをしたまでだよ。はい、着いた。ここだよ。どうぞ?」
陽一がドアノブをガチャと回し、ドアを開けた。
その先はガランとした部屋になっている。
「長らく使ってないからホコリっぽいかも。あ、ちょっと待ってて。」
小走りでどこかへ行ったかと思うと、すぐに掃除機を手に戻ってきた。
「はい、これ使って。」
掃除機をムララに手渡していると、哲也の「陽一〜、風呂空いたぞ〜。」という呼び声が聞こえてきた。
「は〜い!・・・じゃあ、また明日ね。おやすみ、軍曹。」
『おぅ、サンキュ〜。』
陽一が去っていき、ムララは部屋のドアを閉めた。
『よ、よっしゃ・・・なんとかこれで地球侵略の足がかりができたな。拠点もできたし、ウハウハだせ・・・』
安堵のため息を吐いたムララの顔には、若干余裕のない笑みが浮かんでいた。
ちょ、こいつホントに大丈夫なのか・・・?!