「バレちゃったらもうこのカッコじゃなくていいかな!」
青年は「マルス・パワ〜!メぇ〜クア〜ップ☆」と謎の呪文を唱えた。
途端に青年のカラダは7色の光に包まれ、学生服とメガネが光に溶け込んでいく。
見えそで見えないもどかしさに苛まれているのはナレーション担当の自分だけでしょうかね・・・(安全設計により青年以外には見えない仕様になっています)
光はじきにおさまり、アニメに出てくるような戦闘用のスーツみたいな衣装に身を包んだ青年が姿を現した。
「地球で目立たないように着替えてたんだけど、やっぱこっちの服の方が落ち着くぅ〜♪」
「な、何て言うか・・・すごいね、うん・・・」
「え、そう?」
ただただ呆気にとられる陽一と平然としている青年との間に、しばしの沈黙が訪れる。
「ただいま〜。・・・ん?陽一、そんなとこで何やってんの?」
コンビニから帰宅したばかりの哲也が家の中から顔を覗かせた。
しかし、そんなことはお構いなしに青年がマイペースに大きく伸びをする。
「さってっと。そろそろ始めようかな〜♪・・・あれ?杖がないや。どこでなくしたんだろう?・・・ま、いっか。」
青年はひとり呟いて、おもむろに右ヒザを地面につき、左の拳を握り締めた。
深い深呼吸を二、三度繰り返したかと思うと、その拳を地面に向けて振り下ろした。
「はぁっ!!」
ズシ〜ン、という地響きとともにグラグラと地面が揺れる。
「うわぁっ?!」
「なんだなんだオイッ!」
あまりの大きな揺れに陽一も哲也も思わずその場にしゃがみ込む。
青年は顔色ひとつ変えず、いや、笑顔を浮かべながら、なおも拳を地面に叩き続けている。
「もうちょっとで割れるかな〜、地球♪」
「なっ?!そうはさせるかぁっ!」
大きな揺れの中、哲也が何とか立ち上がろうと足を踏み締めたその時、腰にタオルを巻いたムララが風呂からスッ飛んで来た。
『じ、地震だぁっ!ひぃっ・・・た、助けてっ・・・!』
「はぁっ!」
ズシ〜ン!
『きゃぁっ!地震っ、恐い〜っ!!・・・・・・ってあれ?お前何してんの?』
ムララが青年に気づき声をかけたことで、拳が地面スレスレでピタッと止まった。
そしてムララの方に顔を向け、その存在を確認するや否や、笑顔のままムララの元へと駆け寄っていく。