今度は窓の外から上体だけをのめり込ませるようにして、「軍曹〜!ちょっとこっち来て〜!」と家の中にいるムララに呼びかける。も、返事はなし。
「・・・困ったなぁ・・・もう。みんな間が悪いんだから・・・。」
仕方なく、陽一は屋根の上に向かってひとり、声をかけることにした。
「あの〜!ちょっと!大丈夫ですか〜?!さっき、ものすご〜い勢いで落ちてきたみたいですけど!・・・お〜い!聞いてる〜?」
「・・・・・・うぅ〜ん・・・・・・」
しつこく呼び続けることで、ようやく屋根の上の人物が反応を示し、ゴロリと陽一の方に寝返りを打った。
が・・・
ゴロリ・・・ゴロン、ゴロン、ゴロンゴロンゴロゴロゴロゴロ・・・
傾斜のある屋根の上で寝返ったため、だんだん加速がつき、最終的に、ドッシ〜ン!!・・・とユジジのテントの真上へ落下した。
「ちょっ・・・さっきから何なの、もぅ・・・」
陽一はペッタンコになったテントの上で大の字になっている人に向かって駆け寄った。
それはよく見ると若くて少々小柄な男で、学生服にブ厚いメガネというイデタチである。
・・・キテレツ大百科のベンゾウさんじゃないですよ?
「もしも〜し!大丈夫ですか〜?!」
「・・・んん〜・・・・・・むにゃむにゃ・・・」
「え、寝てるの?!あんなすごい勢いでカラダぶつけまくってんのに?!」
ものすごい墜落の直後であるにかかわらず、脚や腕がヘンな方向に・・・みたいな大惨事にはなっておらず、かすり傷程度しかダメージを受けていない模様。
そのうえ苦しむ様子もなくグ〜スカ眠っていることから推測しても、相当タフなカラダのつくりのようだ。
「・・・あの〜・・・そろそろ起きてもらえませんかね・・・」
「・・・むにゃぁ〜・・・・・・はっ?!こ、ココは?!ココはどこですかぁ〜?!」
「えっ、どこって・・・月光町ですよ。東京の。」
「ゲッコ〜チョ〜?ト〜キョ〜?それって地球ですかぁ?」
「そうですけど・・・」
「やったぁ!無事に地球に到着できた〜!侵略成功〜!」
牛乳瓶の底メガネをかけた青年は、拍手をして大喜びしている。
「もしかして・・・あなた宇宙人、なの・・・?」
陽一の質問に、興奮気味だった青年がビクッと肩を揺らした。
「えっ・・・?!どうして俺が宇宙人だってわかったんですか〜?!もしかしてあなた、超能力者ってヤツ?!」
「いやいやいや・・・地球に着いたって喜ぶってことは地球以外から来た人って考えた方がいいでしょ・・・」
「・・・・・・あ、そっか。」
どうってことのないタネ明かしに、青年は高めのテンションをすぐに取り戻した。