『さてと。皿洗い終わったから風呂の湯、沸かしてくるわ。』
「・・・は〜い。」
聞いてるのだか聞いてないのだか、上の空での返事である。
しかしムララは気に留める様子もなく風呂へと向かった。
冷め冷めのカレーを、気にする様子もなく時折口に運ぶ陽一。
すっかりひとりぼっちであるが、優が入部する前のオカルト研究会でもずっと孤独であったため、特に苦には感じないのである・・・。
「CMの後、秘密のヴェールに包まれたマヤ暦について、さらに迫ります。」
盛り上がってきた場面でCMが入り、陽一はようやく顔を皿に向け、カレーに手をつけ始めた。
スプーンで最後の一口を頬張った、ちょうどその時だった。
リビングの頭上、屋根の上に何か大きなモノが落下したような、尋常ではない規模の衝撃音と震動が起こった。
「うわぁっ!!な、なに?!何が起こったの?!」
陽一は手にしていたスプーンを空になった皿に投げ置き、庭へとつづく大きなガラス窓を開けた。
そこから顔を出し、上部を覗き見たが、屋根の上はまったく見えない。
仕方なく裸足で庭に出て、再び屋根を見上げた。
「げ・・・!」
モノだと思っていた落下物は、なんと、ヒトであった。
暗闇で容姿などはハッキリ見えないもののピクリとも動く様子はない。
ただ、グッタリと横たわっていることは見て取れる。
「ちょ、誰か・・・。あ、そうだ、ユジジさん!」
庭に設営したテントに暮らしているユジジに助けを求めようとテントのファスナーを開けたが、残念ながら無人。
『この町の猫事情を把握するため、現在外出中です』という、誰に向けたのやらわからない手紙が1枚、ひっそりと置かれている。
「ちぇっ、カンジンな時に役立たねぇ〜・・・」
ついつい口が悪くなる陽一でした・・・。