第9話
強力な援軍(2)
さてさて、日が暮れてまいりました。
夕焼けの町にカラスのファルセットが響いています。
明日も晴れるかな?
おっと、そんな話をしている間に・・・村上家の電話が鳴っているようです。
ぷるるるる!
ぷるるるる!
今朝と同じ場所、同じポーズでオカルト本を読んでいた陽一が本に栞を挟み、電話へと向かっていく。
ぷるるるる!
「はい、もしもし村上ですが。」
「はぁ〜い☆安岡ですけどぉ〜!」
電話の相手は優。
あれだけ噛み噛みだったのに、今ではすっかり陽一に対する緊張が薄れている様子。
やったね優さん!
「あっ、安岡。どうしたの?」
「今から村上んちにお寿司届けたいんだけど、いいかな?」
「えっ、お寿司?!いいの?!そんな高いモノ・・・」
「心配しないで大丈夫だよ〜。ユタタに何食べたいって聞いたら『ウニ!』って言うもんだから、ウチの専属板前にお寿司作るように頼んだんだよ〜。
そしたら板さん、お寿司100人も用意しちゃってね〜。」
「ひ、ひゃくにんぶん?!」
金持ちのやることはやはり規模が違いますね・・・。
「そんなこんなで、みんなで食べようって思って、電話してみたんだけど。どうかな?」
「い、いや、うれしいんだけど、た、食べきれるかなぁ・・・あ、ちょっと待ってて。」
陽一は受話器を下ろし、リビングで「笑点」を見ている哲也とムララに声をかけた。
「ねぇねぇ、安岡がお寿司くれるって言ってるんだけど、100人前なんだって。どうする?」
その言葉に、いち早く反応したのはムララ。
『寿司?!いいな、食いたい!寿司寿司!』
もちろん寿司が食べたいのもあるが、なんてったって自分が作らなくて済むっていうのがムララにとっては大きいのだ。
しかし。
「100人前?バカ言うな。食えるワケないだろ。断っとけ。」
哲也により反対意見が出された。
これはまずい。
『食いたい食いたい!寿司が食いたい!
食いたい食いたい!寿司が食いたい!』
負けじとムララが哲也に向かってシュプレヒコールを上げるが、哲也は全く相手にしない。
片手でシッ、シッとムララを追い払い、再び「笑点」に見入ってしまった。
そこで、作戦変更。
ムララは訴えかける相手を陽一へと切り替える。
『・・・ねぇ陽一ぃ、お寿司を食べたいよぅ・・・ねぇ・・・お寿司・・・食べたぁい・・・』
ムララが小さい目を潤ませながら、陽一の脚にすがっている。
陽一はムララにめっぽう甘い。
それを利用した作戦だ。
「う〜ん・・・仕方ないなぁ・・・。あ、じゃあ、ムララ、クロロにもお寿司食べに来てって連絡とってくれる?雄二さんも連れてきて、って。」
『やっふぅ〜ぃ!待ってましたぁ!』
ムララは早速いそいそとクロロと連絡をとり始め、陽一も再び受話器を耳に当てて優にOKを伝える。
その様子を背後で感じ取った哲也は、チッと舌打ちをしたのだった。