同日正午、あるマンションの上層階。
雄二が住む部屋のリビングに・・・
♪かんかんかん、かかかかかかんっ
「NHKのど自慢」オープニングの鐘の音が高らかに響いている。
日曜昼は「NHKのど自慢」→「新婚さんいらっしゃい!」→「アタック25」の流れが最強のコンボだというのが雄二の持論なのだ。
『はい〜、お待たせ〜。』
クロロは、自作のカレーを盛りつけた皿を、テレビ前に腰を据え「のど自慢」に見入っている雄二へと差し出した。
「おぉ、できたか。テーブルで食べるからそっちに運んでくれるか?」
『おけ〜♪』
クロロは雄二用と自分用のカレーふたつをテーブルにセッティングし、素早く席に着いた。
『食べよ食べよ〜。』
「よし、じゃあいただくとするか。いただきます。」
『いただきま〜す。』
いいよいいよ〜、と意味不明の呟きを交えて食べるクロロを横目に、雄二も「のど自慢」に見入りながらカレーを食べ進める。
「だいたいオンナふたりで出てきたら『待つわ』か『恋のバカンス』歌うよなぁ〜。・・・ん?」
雄二が手にしていたスプーンを置き、窓へと向かっていく。
ガラッと勢いよく開き、外に向かって突き出した顔を上下左右に動かして辺りを窺っている。
『雄二〜、どうしたの〜?』
「いや・・・誰かが部屋の中を覗いてたような気がしたんだがなぁ〜・・・」
『えっ、こんな高いとこにある部屋を、外から?』
お前だって時々ミョーチクリンな乗り物で空中を浮遊しているじゃないか。
・・・と思った雄二だったが、特にツッコミは入れずに席につき、食事を再開する。
「あっ、歌詞間違えたな。NHKのど自慢って歌詞間違いは結構厳しいんだよな。」
『へぇ〜、そうなんだ。俺も出た時は間違えないように気をつけよ〜っと。』
「お前、まさかその姿で出る気じゃないだろうな・・・?」