「ボケガエル!!そいつヤベぇぞ!早く逃げろ!!」
ようやく家に到着した哲也が、ムララに向かって叫ぶ。
その言葉に自らの危機を察知したムララは、手榴弾を取り出し雄二に向かって投げつけた。
哲也はバツグンの運動神経を発揮し、すぐさま玄関から外へと避難した。
しかし雄二は逃げもせず余裕の表情を浮かべている。
「『吾(わ)が盾の堅きこと、能(よ)く陥(とお)すもののなきなり』、と。」
足元に転がった手榴弾が爆破するまでの何秒かの間に、雄二はノートにサラサラとペンを走らせると、すかさずそのノートを盾にする。
直後、「ちゅっど〜ん!」という高橋留美子的な派手な音を立てて手榴弾が爆発した。
が、盾がわりのノートの防御力は半端ない。
ノートを胸の前に掲げた雄二は、爆風をものともせず一歩一歩ムララへと近づいていく。
『えっ、ちょっ、ウソだろ・・・?』
ジリジリと後ずさるムララ。
その体が突然何者かによって羽交い締めにされた。
『うわっ・・・?!』
どうなっているのか首だけで振り返って背後を確認したが、そこには何もない。
『かっ、金縛り?!ま、まさか・・・ゆ、幽霊・・・?』
もがいてみたものの、やはり体はビクともしない。
その間にも、ゆっくりと歩みを進める雄二との距離はみるみるうちに縮まっていく。
『うわぁっ、神様仏様杉さまヨンさまぁっ、誰でもいいから助けてくれ〜っ!!』
パニックになって叫ぶムララの目前に到着した雄二は、ヨン様のようなさわやかな笑みを浮かべた。
「はい、もういいですよ。離してあげて。」
雄二がムララの背後に視線を向けてそう指示すると、ムララの体はようやく解放された。
しかし、恐怖のあまり腰が抜けてしまったらしく、その場にペタンと座り込み、怯えた表情で雄二を見上げている。
「君がムララか。手荒なマネをしてすまんね。君を探しているヤツがいてな、協力することになったもんで。・・・おぅい、そろそろ姿見せてやんなさいよ〜。」
雄二の言葉に、ムララの背後にいた何者かの気配がムララの横を通り過ぎ、前へと回り込む。
『ムララ〜、久しぶりぃ〜。元気にしてたぁ?』
聞き覚えのある声とともに、正体を表したのは・・・
『あろはぁ〜☆』
『げっ、お前かよ!』
クロロであった。
クロロってどんなんだったっけ、とお忘れのアナタは第4話を参照のこと!