第7話
さらに増員(2)
さて、第1集団の雄二と哲也はというと・・・
「待てぇ〜っ!空飛ぶなんて卑怯じゃねぇかよ!」
空に向かって叫ぶ哲也に対し、
「卑怯って言われると困っちゃうなぁ。ちょっとしたデモンストレーションのつもりでやってるのに。」
雄二は、空中でノートを枕に寝そべって余裕の表情。
またその平然とした様子が、哲也の怒りという名の火に油を注ぐのですな。
「はぁ?!で、デモ?デモン・・・?何言ってんだよ?!」
「ではでは、先に行ってますからね。失敬。」
ノートを持っていない方の手で優雅に一掻き二掻きした雄二は、すいすい〜っと哲也たちの家に向かって進んでいく。
まさに空中“遊泳”ってやつですね。
家に先に到着したのは、やはり酒井。
さっき空に飛び立った時と同じ要領で、羽ばたくノートを支えにして、エアリーなカンジで着地に成功した。
対する哲也も最終コーナーを曲がり、ついに最後の直線。
「カギかけて家出てきたから、そうヤスヤスとは入れねぇだろ!」
雄二が何やら厄介な技術を持ってそうなのはすでに理解済みだ。
しかし、さすがにロックしているドアを開けるには手間取るだろうし、そのうちに追いつけんじゃねぇの、と哲也は考えた。
ところが!
ドアノブを持ち押したり引いたりしてカギがかかっていることを瞬時に把握した雄二は、持っていたペンでドア一面に大きなファスナーの絵をスラスラと描き始める。
すぐに現物と化したファスナー上部の持ち手をつまんで下にスライドすることで、硬いドア板がキャンプ用テントのようにパックリと口を開いた。
玄関の物音を聞きつけ、牛丼を待ちわびていたムララはリビングを飛び出した。
『ツユダク待ってました〜!!・・・ん?』
玄関に立つ雄二と目が合ったムララは、動きを止めてパチクリと瞬きをする。