第6話
さらに増員(1)
優がユタタを再び袋に入れて連れ帰った後。
村上家では、昼食をどうするかという討論が巻き起こっていた。
「なぁ〜・・・陽一、何食いたい?」
哲也がソファに寝そべったまま、やる気なさそうに尋ねる。
「何でもいいよ。兄ちゃんは?」
オカルト関連の本を読み入っている陽一が、本から顔を上げずに返事した。
「俺は〜、そうだなぁ・・・何でもいいや・・・。」
「これじゃ全然決まんないね・・・。」
すいません、討論ってほどではなかったですね・・・。
「あ、そうだ、軍曹に聞いてみよっか。ねぇ、軍曹は何食べたい?・・・あれ?軍曹は?」
陽一が投げかけた質問に、ムララの返事は戻ってはこない。
哲也が「よいしょっ、と。」とジジくさいカンジでカラダを起こし玄関に向かうと、玄関のドアノブに必死に手を伸ばしているムララの姿が目に入った。
「こら、何出ていこうとしてんだよ?」
哲也がムララの首根っこを摘んでドアから引き離し、玄関から続く廊下にポイッと放り投げた。
『いっ、てぇ・・・!なんだよっ、ハラ減ったから牛丼でも買いにいこうかと・・・』
「そんな気味の悪い姿で外を出歩こうとすんじゃねぇよ!」
『気味が悪いって・・・ヒドい!ヒドすぎる!!』
哲也のあまりの言いように、ムララはショックを受けた様子で玄関に崩れ落ちる。
「なるほど、牛丼か。俺らもそうするか。・・・牛丼は俺と陽一で買いにいくから、お前は外出禁止な。わかったな?」
『外出禁止とは・・・そんなごムタイな・・・』
おいおいと泣き崩れるムララを気にする様子もなく、哲也は陽一を玄関に呼びつけて牛丼を買いにいく旨を伝える。
「ごめんね、軍曹。さすがにその姿で出歩くのはマズいよ。軍曹の分もちゃんと買ってきてあげるから、留守番頼むね。いってきま〜す。」
陽一はムララをなだめて、哲也と一緒に出ていってしまった。
『陽一〜!俺ツユダクだからな〜!!』
閉められたドアに縋って泣き叫びつつ、ツユダクを伝えるのは決して忘れないムララであった。