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しかし、攻撃した張本人のユタタは知らない間に紐から抜け出し、そのうえ、さっきのことなど何もなかったかのようにすっかり正気に戻っていて、

『あ〜っ、ムララさんだぁ〜!!』

ムララを見つけた途端に笑顔を浮かべて歓喜の声を上げた。
そして、ドリフのコントのように炭だらけの顔でプハッと白い粉を吐いているムララの元に無邪気に駆け寄る。

『ムララさん久しぶり〜☆ってか、その顔どうしちゃったんですかぁ?!真っ黒〜!』

そんなユタタの言葉に、哲也が「オメエだよオメエ・・・」と小声でボソッと呟く。
ユタタの元気な声にようやく意識を取り戻したムララがようやくまぶたを開ける。

『・・・お、おぅ、ユタタ・・・無事で何より・・・』

アンタどう見ても無事じゃないですけども・・・。

『てかムララさん、こんなとこで何やってんですかぁ?』
『はっ・・・!』

ユタタからの質問に、ムララは はたと気づいた。
仲間であるユタタに、征服しに来た地球の人間に自分が完璧に制圧されているとは知られるワケにはいかない。(あまりにもカッコ悪すぎるから)
哲也の手からヒョイと抜け出したムララは、ユタタの耳元に顔を近づけ、この部屋にいる人間に聞かれないように声を潜めて説明した。

『これはアレだよ、お前・・・あの〜・・・い、今はココの家の地球人に捕えられたフリをしてるだけだ。
捕らえられたフリをしてココを俺らの基地として占拠してあんだよ。地球侵略の起点として使えると思ってな。』

無理のあるムララの説明(言い訳?)に、ユタタが『なるほど〜!!さすがムララさん!!』と感心しきりで拍手する。

突如、ムララが『♪ムラムラムラムラムラムラムラムラ〜』と鳴き始めた。
それにユタタがそれに乗っかるように『♪ユタユタユタユタユタユタユタユタ〜』とハモる。

「オイ、ボケガエル・・・なんだコレ?」
『ん?共鳴だよ、共鳴。』

どうやらハモルン星ではハモリのことを“共鳴”と呼ぶらしいですな。
勉強になります。

『というワケで、ユタタ。今日からココがお前の家だ。』
『やった〜!ありがとう!!』

「ちょ〜っと待ったぁ〜!!」

先ほどからじっとムララとユタタの様子を見つめていた哲也が、突然大声で制止した。

「“ココが”っておま・・・もう1匹増えるってのか・・・!」
『ん?そうだけど?それがどうしたんだよ?』
「バカ言え!陽一が“どうしても”って言うから いさせてやってるけど、ウチそんなに裕福でもねぇんだぞ?宇宙人2匹も養えるワケないだろ!」

断固拒否する哲也の言葉に、ユタタが涙を浮かべてムララにしがみつく。

『ムララさぁ〜ん・・・!ボクぅ・・・どうすればいいの・・・?ひとりじゃ生きていけないよぉぅ・・・っ・・・』

ユタタの白々しい涙を見破った哲也は、顔を引きつらせて「演技派・・・!」と呟いたが、誰にも聞こえていない様子。
その隣で陽一も自らの額に手を当て、「う〜ん・・・たしかに、兄ちゃんの言うとおり、ふたりも増えるとなると大変かも・・・」と深刻な表情を浮かべる。

「・・・あっ、あの〜!」

突然挙手をした優に、全員(ハモルン星人含む)の視線が集まる。

「あのっ・・・俺、いや、僕が面倒見ようか?彼・・・」
「え?」
「ほらっ、ウチならおカネも若干余裕あるし・・・いつでも村上んち連れてきてあげるよ?」

優の申し出に、ユタタは『ホぉントぉ〜?!やった〜!!』と飛び跳ねて大喜び。

「ホント?!安岡ありがとう!!すっごくうれしいよ!ありがとう!ありがとう!」

うれしそうな笑みを浮かべて何度も礼を言う陽一を見て、優は・・・

“しめしめ!これで村上んちに遊びに来る口実ができたぜ!心おきなく変人観察ができるぜ!ぐへへ!”

と、ココロの中でとんでもないことを考えていた。
さすが優さん!恐るべしですね・・・!!

 


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