:突然だが年少HERO達が○○しました:
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 *三行で分かる前回までのあらすじ。
 
 年少HERO縮みました。
 虎徹モテました。
 アントニオ凍りました。
 バニーちゃん血に沈みました。










 目映い光が断続的に視界を占領する。
 音の先にはバズーカの切っ先と見まごう巨大な黒い筒。
 それを何十分も、しかもブレず支えていられる豪腕を戦闘中も発揮すればいいのにと虎徹は密かに思った。
 もっとも、口に出そうものなら「イやだわ! はしたない!」と炎を纏った拳が飛んでくることだろう。

「あのさぁ……」
 いい加減しびれをきらした虎徹は、相手に声をかけてみた。
 だが、バズーカ――――もとい、カメラのシャッター音に紛れて相手に届かない。
 虎徹はめげなかった。
「あんさぁ……」
「いいわぁ〜、かわいいわぁ〜」
「えっとさぁ……」
「ブルーローズ〜。今度はこっちに目線くれないかしらぁ〜」
「ちょっと……」
「あン! だめよ折紙。せっかくカワイイお顔してたのに隠れたりなんかしちゃ!」
「ファイヤアアアアアエンブレムゥゥゥウウウウウウウッ!?」



 堪えきれなくなって、虎徹は叫んだ。
 部屋いっぱいに虎の咆吼がこだまする。
 びくりと怯えるように虎徹の帽子から顔をのぞかせていたイワンが身を竦めた。
「ダメじゃないの、タイガー。怯えさせたりして」
 悪いおじさんねぇ。
 ネイサンがイワンに視線を合わせにこりと微笑みかける。
 茶化された虎徹は舌打ちの代わりに無言でネイサンをぎろりと睨み据えた。


 あれから――――氷柱牛ならびにバーナビー血沼事件から一時間がたった。


 気絶したミニチュアバーナビーを連れ無駄に存在する医務室の中、一番近かった第五医務室に飛び込めば、一応上からお達しはきていたのか、縮みHERO'sを見ても驚いた顔一つ見せず医者は処置を施してくれた。
 一緒に運ばれたアントニオも治療して貰い、現在医務室のベッドで騒動から一時離脱中。
 なんせ頭のてっぺんからつま先まで見事に凍らされていたのだ。
 一応ネイサンに溶かして貰ったはいいが全身凍傷は免れず、さらには解凍されて開口一番呟いた言葉がいけなかった。



『なんか――――花畑でマッドベアとそろいの割烹着着たジェイクに、にこやかにミソスープ勧められた……』



 聞かされた他のヒーロー達が一斉に医務室で休むよう勧めたのも無理はない。
 その中で、同じような体験をした虎徹は一人「これから臨死体験をする度に奇天烈ジェイクに出迎えされ続けなきゃいけないのか……」と密かに絶望した。
 自分で作った血の泥沼に沈んでいたバーナビーにも休憩を勧めたのだが、当の本人はと言えば周りの意見などさっぱり無視し、虎徹にしがみついて離れない。
 引きはがそうとすれば、先ほどのカリーナ同様恐ろしい力を持ってして虎徹を抱き潰そうとする。
 自分の骨がきしむ音というのはいつ聞いても嫌なものだ。
 結局腹にバーナビー、肩にパオリン、片腕にカリーナ、頭にはイワン、そしてなぜかもう片腕にはキース(の手)をつれて、元の部屋に帰還した虎徹を待っていたのは、先ほどのバズーカ――――もとい、カメラのレンズであった。




 これに関してはカメラマン曰く、
「やっぱりいくつになってもオンナノコってカワイイものが好きじゃない? こんな貴重なシーン、撮っておかないと後悔しそうだしぃ。それに、この記録が後々このNEXTの能力を解明する手がかりになるかも!?」


 ……どう聞いても前半が本音。後半は付け足しだ。
 いくら何でもこの非常事態にのんき過ぎやしないかと思うが、カリーナ含む当の本人達がわりとノリノリなので虎徹達部外者は何も言うことができない。
 さすがにアイドルヒーローとして活動しているカリーナは慣れたもので、ネイサンの指示にも正確に次々応じてくれる。
 パオリンもわりと素直にポーズを決めていたが、どこかぎこちなさが抜けない。
 困ったのが男子陣で、イワンはまともに写ろうとせず見切れてばかりだし、バーナビーはバーナビーでカメラなどあってないもののように完全無視。
 ただひたすら、虎徹に抱きつくのに夢中になっている。
 虎徹達の方はと言えば、カメラのフラッシュが気になって会議に集中できない。
 なんて緊張感のない緊急事態だろう。
 虎徹は思わず天を仰いだ。



 やがてネイサンは満足げな吐息とともにカメラを片づけ始めた。
 やっとまともな話ができると、キースと顔を見合わせ苦笑い。
 すると、とたん下降するバーナビーの機嫌。
 どうも幼少時のバーナビーは今から想像もつかないくらい甘えただったようだ。
「コテツさん。よそみしないでください。ちゃんとささえててください!」
 バーナビーが頬を膨らませ、抱きしめる虎徹の胸を叩く。
 他のちび達もバーナビーほどではないがよく甘える。
 今だって、撮影モードから戻ったカリーナが虎徹の胸にしがみつくバーナビーを引き吊りおろそうと懸命にジャケットの裾を引っ張っていた。


「なによう! あんたいっつもじゃまなのー! そこかわって! そこ、わたしのなんだから!」
「ざんねんですね、ブルーローズ。コテツさんのいたるところはすでにぼくのものです。かみのけいっぽんからつめのさきまでぼくのだ!」
「いや、バニーちゃん。おじさんは誰のものでもないから。強いていうなら鏑木・T・虎徹の時は娘のもんで、ワイルドタイガーの時は市民のものかなー?」
「ふくすうガワモブプレイがおこのみですか、このビッチめ!」
「お願いだから子供の顔でそういうこと言うの止めない!? 子持ちとしてすげー複雑!」
「なになに、プレイって何!?」
 牙向くバーナビーに、耳ざとく聞きつけ目を輝かせるネイサン。
 カリーナはバーナビーのジャケットを握りしめたまま真っ赤な顔で固まっている。
 ――――ああよかった。カリーナ(女の子)にまで男の身の上で"ビッチ"と罵られたら再起不能になる所だった。
 と、虎徹が安堵したのもつかの間。



「たいがー、ビッチってなにー?」



 意外な伏兵現る。
 最年少HEROからまさかのパス。まさかの羞恥プレイ。
 慌てふためきなんでもないと叫ぶが、好奇心に駆られたパオリンは諦めない。
「ねー、ねー、ばーなびーさん。ぶるーろーずー。ビッチってなにー?」
「だからパオリンには関係ないし、まだ早い! 頼むからお前はまだ清らかなままでいて!」
 肩にしがみついたまま首を傾げるパオリンに向かって、必死に懇願する虎徹(もはや涙目)
 首を傾げる者はもう一人いた。
「ワイルド君、バーナビー君の言っているビッチとは……?」
「お前は知っておけよ! いい年だろうに!?」
「たたたたたたた、タイガーしゃんは、そんな、び、びっびびびびびびビっ……チじゃあなぃ、ななぁっ」
「庇ってくれてありがとう、イワン! でも、お前大丈夫か? 顔から煙吹いてるぞ!」
「ねぇ、たいがー」 
「ッダァ、もう! みんなお口チャック――――!!」



 閑話休題。



 部屋の中央におかれたソファ。
 ちびHERO達を周りに侍らせた虎徹。その隣にキース。二人の向かいにネイサンという形で、会議は続行される。
「まぁ、さしあたって私たちが出来ることは少ないわよね」
 仕切り直しに出されたネイサンの冷静な意見に、キースも同意を返した。
「確かに。この一件は我々の力の及ぶものではない」
「っ! んなこと、」
 冷たすぎやしないかと口を開きかけた虎徹だが、キースの無言の制止に再び沈黙する。
「私達はNEXTの能力を使い戦うことができる。そして守ることができる。ただNEXTの能力を完全に"理解"出来ている訳ではない」
 言い方は悪いが、能力を「病」とすれば能力者は「NEXTを患っている病人」
 はたして病人のどれほどが、自分の病について理解し、その治癒方を知っているだろうか。
 結局専門家である「医者」に任せるのが良策だ。
 キースはそう説いた。
 だが虎徹は納得しない。


「……指加えて見てろってのかよ」
 虎徹の眉間にしわが寄る。噛みしめた唇から、錆びた鉄の味。
「病人」と例えられたことも腹立たしさに拍車を掛けた。
 記憶の鍵は案外脆くできている――――幼い頃の鍵は、特に。
「――――だぁれもそこまで言ってないじゃなぁい」
「アダッ!」
 記憶の沼に沈みかけていた虎徹を引き上げる、ネイサンの呆れ声。
 しわが固まる眉間に強烈なデコピンを喰らい、虎徹は大いに身もだえた。


「あッにすんだァ!」
「アンタが似合わないセクシーな顔してたからよ。デコピンで押さえてあげたアタシに感謝なさい」
 今度そんな顔したらチューするから。
 まんざら冗談でもない声音と笑顔に虎徹は頬を引きつらせ、カリーナとバーナビーは警戒心もあらわにネイサンに向かい立ちはだかる。
 ジョークよ、ジョーク。と肩をすくめてネイサンが話を打ち切ると、キースが後を引き継いだ。
「無論、私達だって手を拱いてみているだけじゃない。私達は別方面から事件の解決を目指す」
 能力の解明は専門家に任せておいて、自分達は根源――保護されたNEXT――へのアプローチを行う。
 今は心神を喪失しているが、目覚めてくれればもしかしたら能力の解除を、最低でもヒントくらいは分かるかも知れない。
 なにより組織に利用され人間兵器となるところだった彼女をこのまま放っておくのはHEROとして、同じNEXTとして忍びない。
「彼女が心を閉ざした原因がNEXTとしての能力にあるのならなおさら有効だ。NEXTの気持ちはNEXTが一番よく分かる」
 そうだろう?
 優しく微笑むキースを見て、虎徹は一瞬息を詰めた。
 穏やかな裏に見える頼もしさが、今も憧れるHEROと重なる。
 虎徹の脳裏に甦るのは幼い頃出会った凛々しい笑顔と力強い言葉。
 彼の存在があったから墜ちずにいれた。曲がらずにいれた。
 ここにいるみんなにもそんな存在がいたのかも知れない。
 ――――自分達は、彼女の"レジェンド"になれるだろうか。
「……ん。そーだよな」
 虎徹は帽子を引き下げ頷いた。閉じた瞼の裏で蘇る、虎徹の"HERO"。その勇姿。
「HEROってのは、別に犯罪者ブッ倒すためだけにいる訳じゃねぇもんな」
 悪を倒すだけでなく、人を助けたくてHEROになった。
 自分を救ってくれた彼のようになりたくて、今も背中を追い続けている。
 きっと今この場にレジェンドがいれば、キースと同じ事を言ったはずだ。
 虎徹は瞼の裏にあの日手を伸ばしてくれたHEROの姿をしっかりと刻み、勢いよく立ち上がった。
「っよっしゃあ! そうと決まれば行動あるのみ!」
「ちょっと、どこ行くのよぉ!?」
 鼻息荒く部屋を出て行こうとする虎徹に向かい、慌ててネイサンが声を掛ける。
 虎徹はちびHERO達をしっかり抱きかかえ、笑顔で振り返った。



「ちょっくらあの女の子が保護されてる病院行ってくる! ちょうど楓と同じくらいだったし、あの年頃の女の子の扱いなら任せろ!」
『世界で一番信用できない!』



 ネイサン、ちびHERO達から揃ってツッコミを喰らうが今の虎徹には暖簾に腕押し。
「アンタ自分が何言ってるのか分かってンの!? KOO(キング・オブ・親に欲しくない)連続覇者のくせに!!」
「どこ主催だ、その嘘八百ランキング!? ――――いいから見てろって! この俺の話術と熱意を駆使すればあの子のハートだってすぐ完全ホーおっぶぁあっ!?」
 ネイサンとの言い争いに夢中になっていたのが悪かった。
 よそ見したまま勢いよく部屋を出た所で虎徹は何かにぶつかり、ひっくり返る。
 とっさに胸に抱いたちび達を庇ったはいいが、おかげで受け身がとれずしこたま腰を打ってしまった。
 ずきり、と肉の薄い尻に痛みが走る。
 いったい何にぶつかったのかと涙のたまる目でそれを見上げた虎徹は――――次の瞬間絶句した。
 隣のネイサンも、追いかけてきたキースもまるで幽霊でも見たかのように固まっている。
 何も変わらないのは虎徹にしがみついたちびHERO達くらいのもの。
 息が詰まって数秒後。虎徹は恐る恐る、絶対零度のまなざしで見下ろす壁の正体を口にした。




「ばにー……ちゃん?」
 眼前に現れたのは、相棒だった。





 見慣れた、縮んでなどいない、全く平時と変わらぬ姿の相棒が表情なく立っている。
 視線が、虎徹からちびバーナビーに移る。
 途端、苦虫を噛みつぶしたかのようにバーナビーは表情を歪ませた。
「おじさん、"それ"を渡してください」
 静かな声で"それ"と顎で指したのは虎徹にしがみつくちびバーナビー。
 不穏な空気を察したのか、虎徹にしがみつくちびの力が強まる。
 見下ろすバーナビーの目に一瞬炎が奔った。



「おじさん離れてください! 加齢臭が移ります!」
「ひでぇ! おじさんくさくねぇよ、むしろ世界が嫉妬するくらいフローラルだよ!」
「コテツさんはいいにおいです! かいでたらムラムラします!」
「黙れえええええええっ!」
 ちびバーナビーの言葉に突如激高するバーナビー。
 つかみかかろうとするが、寸前で虎徹はそれを避ける。
 バーナビーの目には、明らかに殺意があった。
 混乱する。高低の差はあるが、同じ声がほぼ真逆なことを叫んでいて混乱する。
 虎徹はどうにか脳内で仕分けようと試みた。



「お、落ち着け! 何があったか知らないけど落ち着け、バニーちゃん!」
『おちつけません! コテツさんとこんなにミッチャクしてるのにかはんしんがおちつけるわけないです!』
 息を荒げるちびバーナビー。鼻息荒くそれを否定するでかバーナビー。
「そんなこと考えてないッ! おじさん、それはやく渡してください! 二度とふざけた口がきけないよう、口から縦に引き裂きますから!」
「発想がコワすぎてどん引きだよ、バニーちゃん!」
 お前仮にもHEROだろう!
 ツッコむが、でかバーナビーは聞いちゃいない。
 どうにかチビを引きはがそうとするバーナビーを、虎徹は危うげな足取りで避ける。
 他のちびHERO達も振り落とされないよう必死で虎徹にしがみつく。
 何がどうなっているかはこの際後回しだ。
 今はこの魔人からちび達を守らねばならない。


「ちょっと止まれバニー!」
「おじさんがそれを渡してくれたらすむ話でしょう!?」
「渡したらそこで終わりだろうが!」
「ええ! 終わらせますとも、こんな茶番!」
「だからおちつ「伏せてタイガー!!」



 説得に重なる悲鳴。
 とっさに従う虎徹を襲う水蒸気。
 炸裂する熱気と湿気に閉じていた目を恐る恐る開けばそこにいたのは戦闘態勢をとりながら淡く発光するネイサンと、同じく迎え撃つ姿勢のバーナビーの背中。
 さらにキースが己の体を楯にしてくれなかったら、きっと蒸気で火傷は免れなかった。
「どういうつもり――――ブルーローズ!」
「カリーナァッ!?」
 叱りつけるネイサンの声に仰天して入り口の方を向けば、青く発光しながら仁王立つカリーナがいる。
 見慣れた大きさだ。彼女と視線が合う。
 途端、カリーナの顔色が赤から真っ赤にレベルアップした。


「そ、その子はやく離しなさいよタイガー! セクハラで訴えるわよ!」
『いいもん! タイガーにならセクハラされてもいいもん!』
「いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 ちびカリーナに言い返されてカリーナは悲鳴を上げた。
「思ってない! 私そんなこと思ってない!!」
「当たり前です! おじさん、それが言っていることはみんな嘘ですからね!」
 耳を押さえてうずくまるカリーナと、激昂して詰め寄るバーナビー。
 共通点はどちらも熟れたトマトのように真っ赤な顔をしていることと、自分の姿をしたちびに敵意を持っていること。
 いきなり出てきた通常サイズHERO達の異常な行動に、虎徹の脳は処理落ち寸前。
 さらにここに来て、忘れかけていた男が飛び込んできた。


「おい、虎徹ゥ! チビたちは無事か!?」
「アントニオ! お前もう大丈夫なのか!? いや、それより無事っ「アブねぇ!!」
 問う声を遮り、アントニオが叫ぶ。
 影が体を覆うのを見た瞬間、部屋に響く金属音。
 見開いたまま固まる虎徹の目が映すのは、能力を使い己の体で守ってくれている親友と床に落ちた手裏剣。
 そして……。


「おい、折紙ィ……」
 常にないほど怒りをあらわにしたアントニオが見据える先には、青い顔をしたイワンがいる。
 その背後には、同じく目を剥き固まるパオリンの姿。
 どちらも見慣れた大きさだった。
「お前、虎徹まで巻き添えにするつもりかぁっ!?」
「ご、ごごごごごごめんなさい! でも――――タイガーさんには当てません! 絶対、絶対僕にしか当てませんッ!!」
「それはそれでお前が無事ですまないだろうが!」
 アントニオが吠える。イワンが涙目でちびを睨む。
「お願い、タイガー! それボクにわたしてぇッ!」
「できねぇよ!」
 パオリンの悲鳴に、虎徹は即座に叫び返した。
 これまでの通常サイズHERO達の行動から察するに、きっとこの二人もちび達に危害を加えるつもりだ。
 ちびを見つめる二人の視線の剣呑さが何よりの証拠。


「おい、どうなってんだ、アントニオ! お前なんか事情知ってんのか!?」
「詳しい話は後だ! とにかく絶対ちび共を守れ! じゃねぇと本体も死ぬぞ!」
 物騒なことを叫ぶやいなや、アントニオはちびイワンを奪い取る。
 虎徹から離れたのを見計らったかのように再びちびを襲う手裏剣の雨あられ。
「ワイルド君、すまない!」
「ちょっとこの子貸して!」
「うえぇえっ!? ちょ、キース! ネイサン!?」
 アントニオに倣うかのようにキースはちびパオリンを。ネイサンはちびカリーナを奪取する。
「さすがに全員を一度に守るのはワイルド君でも骨だろう!」
「分担したげるから、アンタはその子をしっかり守んなさいよ!」
「二人とも!?」
 キースとネイサンが虎徹から離れるやいなや始まる通常サイズHERO達の攻撃。
 つい数十分前まで平和だった部屋の中を、たちまち戦乱の嵐が駆け巡る。
 何が何だか虎徹には分からない。



 ――――事態について行けず、一瞬気を抜いたのが悪かった。




「やっててよかった! 一階食堂"世界の米料理フェア"!!」
「やめろおおおおおおおおお! やめろバニーちゃん! 俺そんな恐ろしい仔ウサギのリゾット食いたくねえええええええええええぇっ!!」
 奪い取ったちびの頭を鷲づかみ、駆け出そうとするバーナビーに取りすがると必死に止めようとする虎徹。
 だが思ったよりもバーナビーの脚力が強くて、必死の抵抗空しく虎徹の体はずるずるともろとも出口へ向かってゆく。
 虎徹は血走る目で他のHERO達へヘルプコールを送る。
 だが、向こうは向こうで大変なことになっていた。




 アントニオはどこからか飛んでくる手裏剣、クナイ、刀、鎖がま等々からちびイワンを守るのに手一杯だし、ネイサンはネイサンでカリーナ相手に奮戦中。
 氷のつぶてがちびカリーナを襲えば、到達する前に炎の花びらがそれを防ぐ。
 一進一退。
 二人の間には水たまりがいくつもできていた。


 ラスト、キースのほうはと言えば――――これが一番説明しづらい。
 まず目についたのが、なぜかどういった訳か宙に浮くちびパオリン。
 その下で執り行われるのは、パオリンとキースによる手技オンリーの組み手試合。
 どうも、ちびに攻撃を加えようとするパオリン→守るため一旦ちびを放り投げてパオリンの攻撃をしのぐキース→落ちてきた所を攻撃しようとするパオリン→やはり阻止するキース→以下エンドレス。
 ちょっとしたカンフー映画の一場面にありそうな光景。
 ただしこっちはワイヤーもCGも小細工も無し。本気と書いてガチで生身の真剣勝負。
 カンフーの熟達者たるパオリンの攻撃を涼しい顔で捌くキースにKOHの貫禄を見た。
 天高く舞うちびパオリンの無邪気な笑い声が、アントニオに弾かれる金属音と共に部屋の中を響き渡る。

 ――――ああ、だめだ。なんて言うのかダメダメだ。

 虎徹は早々に救援を諦めた。
 と、なれば残る手は一つ。



「バニーちゃん! ちょっとバニーちゃんなんか事情知ってるなら教えて! おじさんさっきっから訳わかんねぇんだけど!」
 必死になって説明を乞い、説得しようとするが取り乱したバーナビーには届かない。
「分からなくて結構です! むしろ分かる前に始末をつけます!」
「それマズイよな! たぶんちび共を始末したらマズイよな! お前ら死んじゃうってアントニオ言ってたじゃねぇか!」
 大切な相棒を自殺で失ってたまるか!
 魂からの雄叫びに、やっと一瞬だけバーナビーの動きが止まる。
「ッ、おじさ……」

『なかないでください。ぼくはコテツさんを――――およめさんをのこしてシにません!!』


『だァれがヨメだああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』


 ちびバーナビーが叫んだ瞬間、四方八方から襲い来る甲高いちび共の怒号と攻撃。
 ――――考えるより先に体が動いた。
 かつてルナティックの攻撃から身を挺して相棒を守ったように。
 虎徹は迫り来る三種の怒りの前に身を躍らせた。

あとがき

っつーわけで起承転結で言う所の承転いっぺんに襲来。
描いた本人が言うのもなんですがえらい疲れる話になりました。

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