=両雄邂逅=
ryouyukaikou

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+死闘+
「っ!」
「コウ君!!」
街道の真ん中で倒れている、見慣れた姿。慌てて駆け寄り、抱き起こすがぐったりと反応がない。
少年はただ荒い息を繰り返すだけだけだった。
「コウ君、しっかりするんだ、コウ君!!」
「坊ちゃん!!」
コウの額に手をやったグレミオが叫ぶ。
「熱が……何か毒のような物でやられたようで」
「毒……」
「シグレ!!」
今来た道から聞こえる声に、はっと振り向く。
見慣れた一団がこちらに走り寄ってきた。
「シグレさん、この子……」
「毒だね」
フッチとルックの言葉に、頷いてみせる。
「誰か、毒消しは!?」
「あいにくと持ち合わせが……」
「それにこの毒……」
ルックがコウの目を指で開き、脈を取る。
表情がいっそう険しくなった。
「この症状は、いつか本で読んだ事がある。普通の毒消しじゃ、治せない」
「専門家に見せる必要があるというわけか……」
マイクロトフが、重々しげに呟く。
「……」
ナナミとカミューの後ろで、傍観する少年。
ふと目が合うと、相手は目を伏せた。他の皆のように近寄っては来ない。
あんな事を言ったのだ。
当然だろうと、シグレはハクウから視線を外した。
正直彼らが追いかけてくるとは思わなかった。
信じられない気持ちの隅で、嬉しいという感情がぽっかりと浮かぶ。
「シグレ、ともかくこのままにしておけないよ。グレッグミングスターへ……っ!?」
「うわっ!?」
突如地面が揺れる。
「なんだっ!?」
「地震!?」
「――――っ!後ろ!!」
ハクウが叫ぶ。
茂みから土煙と共に現れたのは、巨大なワーム。
転がり出た巨体で行く手を塞ぐ。
「まさか、こいつが……?」
「グレミオ、下がれ。コウ君を守るんだ!!」
「分かりましたっ!」
「シグレさん!」


















――――ワームの発する不気味な鳴き声を合図に、シグレは棍を構えた。



















「切り裂きっ!」
ルックの指から発したかまいたちが、ワームの足を裂く。
「はぁっ!」
シグレの棍が傷口を狙う。だが切り落とすはずの足からは耳障りな金属音がして、とっさに下がる。シグレは痺れる腕に眉を顰めた。
「なんて外皮の硬さだ……」
「だいたい変身するなんてずるい!!」
包む炎をものともせず羽ばたく化け物に、ナナミが吠えた。
「確かにこの硬さは異常だ……」
「術はないのかっ!?」
毒に咳き込むマイクロトフを、ハクウが紋章で回復する。
「このまま戦いが長引けば不利です!」
全員に土の守護神をかけ終わったフッチが叫ぶ。
「何とか突破できないのかっ」
「くっそぉぉっ!!」
ハクウの連撃。
「切り裂き!」「大爆発!!」
皆持てる限りの技を使い、敵に立ち向かう。だがそれ以上に敵は手ごわかった。
「うわあぁぁっ!」「くぅっ!!」
「フッチっ!ルック!!」
敵の羽ばたく風圧に、フッチが、ルックが、木に叩きつけられ、気を失う。
「ぐあぁっ!」「マイク!!」
腹に衝撃をうけ吐血したマイクロトフに気をとられたカミューが、敵の鋭い爪の餌食となる。
足に一撃を負ったナナミが、溢れ出る血に思うように動けずその場で倒れ臥した。
「ナナミ!!」
「くっ!!」
「坊ちゃん!!」
グレミオの悲鳴に我に返る。
ギリギリで、敵の足が腕を掠めた。
手から棍が離れる。直撃は免れたが、片腕が痺れて使い物にならない。
「どうすれば……」
もはや立つものは、シグレとハクウ以外居ない。
絶望的な状況。
このまま……皆死ぬのか?
「こんのぉおっ!!」
死の予感に染まる頭に、戦う声が響いた。
ただ唯一、ボロボロになりながらハクウは敵に向かっていた。
「ハクウ殿!」
「諦めてどうするんですか!!」
「!?」
シグレははっと目を見開いた
「僕は諦めません。絶対こいつを倒して、皆を助けるんだ!!」
傷つきながらも、それでもハクウは立っていた。敵に立ちふさがり、睨みすえる。
一瞬見えたハクウの瞳には、絶望の色など無かった。
「ハクウ……殿。あなたは」
自身の胸元を握り締める。
ここで自分が諦めれば、グレミオや他の皆が死んでしまう。
そうすればまた大事な人を失う。
……しない。
「そんな事させない」
シグレはふらつく足を必死で支え、右手の手袋に手をかけた。
紋章が嘆きの声を上げる。
シグレは、形の無い相棒に向って子供に対するように笑った。
痛みに引きつる顔は、けして笑みの形にはならなかっただろう。
けれども。
シグレは微笑んだ。
「ソウルイーター。また君を使ってしまう。でも……誰も喰わせたりしないから。だから……」
掲げた手の甲に浮かぶ、暝き力の輝き。
「ソウルイーターよ…その力をここにっ!」
具現する冥府の力。裂かれる現世と涅槃への壁。
その隙間から見えない手が伸び、ポイズンモスの魂を攫う。
漆黒の闇。逃れられぬ死の誘い。
「くっ・・・・・・」
倒れるナナミにその手が伸びそうになるのを留めさせる。
誰もいかせはしない。誰も攫わせはしない。
だがその思いに反し、力は暴走し始めた。
敵の魂はすでにこの世にない。だが力は攫う事を止めない。
冥府の手がルックに、フッチに、マイクロトフにカミューに伸びる
懸命に収めようとするも、留めきれない。見えない死神が勝ち誇ったような哂い声を上げる。
ソウルイーターの、狂ったように泣き咽ぶ声が脳裏に響く。
止まらない。させないと誓ったのに……っ!
「や……め……っ!」
「輝く盾の紋章よ、僕に力を!!」
「っ!?」
力強い声と同時にふる光。
やわらかく、暖かく、あたりを包む。
それは生の光。それは聖の輝き。
死神の手が光に脅え、怯み、闇の中へと逃げる。
力が収まる。逆再生のように亀裂が塞がる。
ソウルイーターはまた紋章の中に納まった。
それだけではない。
光に触れた箇所から傷が塞がっていく。
「うぅ…ん?」
「これ、は……」
「みんなっ!」
全員が意識を取り戻し始めた。
「傷が……」
「ハクウ殿……あなたも……」
シグレの見開いたままの目に、ほっとしたように笑うハクウの姿が映った。

あとがき

実は、話は二年近く前にもう出来上がっていました。
しかし、アップする時は坊・2主視点二本同時に!というこだわりの為、
アップが遅くなりました。
戦闘シーンは、なるべく擬音を使わないようにしました。
多少の書き加え、修正はしましたが、大まかには変わっていません。
……成長してないってことか。

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