=両雄邂逅=
ryouyukaikou

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+為すべきは+
「ゆ、許してくれ――――!」













いかにも柄の悪そうな男が地面に這いつくばり、がたがたと震えている。
山の途中で見つけた山賊は、こっちが拍子抜けするほどあっさり白状した。
『トランの英雄』の名はこんな辺境の山賊にも力を持っているらしい。
・・・・・・なんとも皮肉な気持ちになってしまう。
「さあ、たっぷり後悔したはずですから、コウくんを帰してくれますね?」
「あ、あのガキは・・・・・・」
わずかに男が言いよどむ。
「あの、あのガキは・・・・・・」
「何なんです?」
グレミオがきつく先を促すと、山賊はぼそぼそと喋りだした。
「この先に行った所で・・・・・・ば、化け物に会っちまって・・・・・・」
「まさかっ!?」
ハクウが声を上げる。
シグレは自分の体温がすぅっと下がるのを感じた。
目の奥で少年の無邪気な笑顔が甦る。
「それで、よもや・・・・・・」
「ああ!置いてきちまったんだよっ!!」
「なんだと!!」
やけっぱちの告白に、ハクウが山賊の胸倉を掴んだ。
「なんて事をしたんだ!」
「仕方なかったんだ!逃げなきゃ俺達の方が・・・・・・っ!」
「・・・・・・っ!!」
ハクウが目を見開く。
かみ締めた歯からギリギリと音がする。
「見捨てるなんて・・・・・・おまえらっ!」










「ハクウ殿!」








シグレは振りかぶったハクウの腕を、寸前で止めた。
同じように男の胸倉を掴んだままの腕を押さえる。
男はその場で膝を突いた。
「止めないでください!こんな奴!!」
「ハクウ殿・・・・・・」
完全に頭に血が上っている。
捕らえたままの腕を振り払おうとする力は案外強い。
シグレは足に力を込め、逃さぬよう力を加えた。
「落ち着きなさい、ハクウ殿」
「こいつが・・・こいつらが・・・・・・っ!」
「ハクウ、落ち着いて!」
傍で諌める姉の声も耳には届いていないらしい。
ただその目には留めきれない怒りが宿っている。
「ハクウ。ねぇ、ハクウ!」
「こんな奴らが・・・・・・っ!」
「ハクウ、ハクウ・・・・・・」














「――――落ち着けっ!ハクウ!!」















「っ!」
「あっ・・・・・・!」
突然の叱咤の声に、その場にいた全員が動きを止めた。
「・・・・・・シグレ・・・・・・さん」
「坊ちゃん・・・・・・」
呆然とこちらを見るハクウに目線をあわせ、淡々と言葉を紡ぐ。
「落ち着け。君はそれでも軍を率いる人間か?今君がすべき事はこの男を罰する事ではない。一刻も早くコウ君を救い出す事だ。目先の怒りに我を忘れ、その怒りのままに行動すれば待っているのは後悔だけだ。こうしている間にも、コウ君が無事でいる確率は確実に零へ近づいていっている」
「坊ちゃん・・・・・・」
「・・・・・・」
静かにシグレの言葉を聞いていたハクウがまるで憑き物が落ちたかのように、開放された腕をだらりとさせる。
シグレはなおも続けた。
「それでもまだこの男に何かしたいのなら止めはしない。殴るなり殺すなり好きにすればいい。僕は先に行く」
シグレは何か言いたげなグレミオの横をすり抜ける。
「・・・・・・帰ったら解放軍なんて子供の遊びは止めろ。感情に振り回される君が軍を統べれば、ただ死人が増えるだけだ」
言う事だけ言って、シグレは先を進んだ。
後からグレミオが追いかけ、並ぶ。
「坊ちゃん・・・あの・・・・・・」
「グレミオ・・・・・・」
グレミオの言葉を遮る。
「僕は僕に関わった人間の末路を知っていて、それでも人を欲する」
「・・・・・・」
「――――僕は非情か?」
隠し切れない自嘲が言葉に滲む。

















答えは返ってこなかった。


あとがき

無口と言う設定のくせに坊ちゃんが語る、語る。
こういうシーンはゲーム中に無かったですが、ずっと書きたかったんです。
カッとなる主人公に一喝する坊ちゃん。
うちの坊ちゃん精神が老齢してます(汗)

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