=両雄邂逅=
ryouyukaikou

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+循環運命+


予感はしていた。
予感と言うより、どちらかといえば確信に近いものだったけど・・・





























釣りざおを持つ手にピリリとした痛みが走った。
竿を取り落とすほどではないけど、確かに感じた痛み。
「・・・・・・」
この感覚はなんだ?
ざわめく胸を抑え、シグレは釣りを再開した。
と、そこへ。













「たすけて――!はやく――!とくにそこのお兄ちゃん――!!」



















突然芝居がかった叫び声がこだまする。
「なんだ・・・?」
状況もわからずぼんやりしていると後ろから人の気配。
それも・・・かなり知っている・・・








「久しぶり・・・・・・変わりはないようだね・・・・・・」
「シグレさん、おひさしぶりです。こんな所で会うなんて・・・」
「ルック・・・・・・フッチ・・・・・・?」

















振り返った目前に突然現れた、変わってしまった仲間。
今自分はどんな顔をしているだろう?
きっとどうしようもなく間抜けな顔をしている事だろう。
内心からこみ上げる複雑な感情。















「あ、あの〜・・・」
ルック達の後ろからおずおずと声がかけられる。
見れば幼い少年少女と騎士風の青年二人が自分と同じ様に呆けている。
その内の最も最年少と思われる少年が、縋るような目つきで
「僕らを放って話を進めないで・・・」
「ああ、ゴメン」
さして悪びれもせずルックが振り返る。
「あの、こちらがトランの英雄こと・・・」
「フッチ。その呼び方は止めてくれ」
それを聞くたび悲しくなる。
「す、すみません」
はっと気づいたフッチが顔を伏せる。
なんとなくあたりに重苦しい雰囲気が流れた。
「・・・」
「・・・」
「・・・あの。そっちの、方たちは?」
シグレはその空気を消すように、後ろで呆けている面々に水を向けた。









「え、えと、僕はハクウです!」
「あたしはナナミ!ハクウのお姉ちゃんです!」
なぜか顔を赤らめ元気一杯に挨拶するハクウとナナミ。
「お初にお目にかかります。私は同盟軍に末席を置く元マチルダ赤騎士団団長のカミューと申す者。
以後、お見知りお気のほどを・・・」
「お、同じく元マチルダ青騎士団団長のマイクロトフです!」
恭しく頭をたれ、手を取るカミューの隣で真っ赤な顔を見せるマイクロトフ。












今日は特別気温が高いわけでもないのになぜみんな顔が赤いのか。
シグレは訳もわからぬままに、
「シグレ・マクドールです」
と簡単に挨拶を返した。





























「ところでフッチ、ルック。こんな所を通るなんて、共和国に何か用なの?」
問うと、フッチは首を横に振った。
「・・・貴方が、ここにいると聞いたから・・・」
「・・・えっ?」
思いがけない言葉。
「実は、ずっと探してたんです。でも見つからなくて・・・やっとここにいるって話を聞いてやってきたんです」
「・・・・・・」
探していた。
自分を。









「・・・どうして」
知らずにでる硬い声。
「もう一度会いたくて」
「会ってどうする気だったの?」
「それは・・・」







「坊ちゃん!大変です!!」





重い空気を乱す従者の声。
「グレミオ・・・?」
慌てた様子のグレミオは真っ青な顔で主人の腕を掴み、走る。
「どうした」
わざと落ち着いた声を出すがグレミオの耳には届いていないらしい。
次第、自分の足も駆け出す。










――背中を、嫌な汗が一筋流れ落ちた。


あとがき

隙間多すぎですね(汗)
おかげで薄っぺらいモノが余計に薄っぺらく・・・
坊ちゃん視点は難しいです(滝汗)

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