第31回チキチキかわいいあの子とくんずほぐれつ大会 後半戦
結局、その後すぐ新八が来た事によっては難を逃れた。
白目を剥いて畳に転がる家主を見た少年は、何も言わずとも事態を理解して
呆れたように、ひとつため息を付いた。
そしてがほんの少しの罪悪感に苛まれていた事も見抜き、原因の銀時には
同情の余地なしと判断して、後は任せて出勤するように言ってくれもした。
確かに時間もかなり経ってしまっていたので、その言葉に甘えて伸びたまま
の銀時を残し職場に向かった。
その夜、が仕事を終えて帰ろうとすると、入り口に銀時が立っているのが
見える。
「銀時?」
迎えに来たのだろうか?
それ以外考えにくいがどうも素直に喜んでいいのか迷っていれば、こちらを
見つけたらしい男はにこりとも笑わず歩き出してしまった。
「…帰ェーるぞ」
「うん」
素直でないのはお互い様。
素っ気ない言葉に小さく微笑みすぐ後を追う。
「飯は?」
「食べてないよ。銀は?」
もうずいぶん遅い。多分食べただろうとは思いつつ聞いてみれば、
軽く。と返った。
そっぽは向いたままだが、歩幅は合わせてくれる。そんな小さな事が嬉しく
てはそっと男の袖を掴む。
一瞬足が止まった銀時を不思議に思い見上げれば、ほんの少し驚いたような
表情でこちらを見ていた。
「なに?」
「や、…なんでもねー」
照れているのか、早口でそう言って銀時は鼻の頭を掻く。
その手はそのまま下ろされる事なくが持っていた荷物を奪い、空いた彼女
の腕を自分の腕に絡ませた。
「…呑み行くか?」
「うん」
また何もなかったかの様に歩き出した二人の口元はほんの少し綻んでいた。
そして、恋人たちは手頃な飯処に向かう事となる。
銀時の行きつけだと言う居酒屋で、大将にからかわれながらも食事をとり、
程よく酒も入っていい気分のまま店を後にした。
「お腹いっぱい」
「そーか? お前もっと食えよ」
他愛無い話しをしながら夜道を歩く。
すると、一人の女性が歩く二人に声をかけてきた。
「銀ちゃん?」
「アン?」
「久しぶりー」
よく見れば、も何度か見かけた事がある、ここの近くの茶屋で働いている
女性だった。
「最近ご無沙汰ねえ」
ニコニコと笑いながらこちらにも小さく頭を下げて来るその姿は、同じ女性
から見ても不快に思う事はない。
のに、の胸がチリ、と軋んだ。
たぶん、この女性が銀時に抱いている感情が自分に近いせいだ。
「またきてね?待ってるから」
一言二言世間話をしてから彼女はそう言って小さく手を振った。
紅を綺麗に引いた唇が、ゆっくりとカーブを描く。
「アァ」
返す銀時の表情は変わらずほとんど感情を伺う事は出来ない。
それはもしかしたらとても喜ばしい事なのかもしれないが、素直に喜ぶ事も
出来ず、顔を隠すようにもぺこりと頭を下げて銀時の後を追った。
「この後どうするの?」
「あー?お前は明日仕事だろ?…俺はもう一件行くわ」
ガリガリと頭をかきながらそう言う銀時は殆ど酔ってないように見える。
「どこに…?」
「そーさなァ…ま、安上がりなとこだな」
どうせ大した金は持っていない。女性の居る所などは行けないだろう。
とは思う。だが、たとえ安い屋台でも同じこと、何処にいようが気になる事
に変わりはない。不意に胸の奥が痛んだ気がして、は俯く。
「? どうかしたか?」
黙ったままのを銀時が覗き込んで来る。
「…呑み足りないの?」
近づいてきた気配を感じ顔を上げればふいと視線をそらされる。
「そー言うわけじゃねえけど、まあ暇だしな」
具合が悪いのかとも思ったが、あの程度の酒でが酔うとも思えない。
しかし、そんな頼りない顔をされると抑え込んだ熱がぶり返しそうで、銀時
は慌ててそっぽを向きながら、そう返した。
どうせ今帰ったとしても眠れるわけがない。
家で独り、もんもんとするより酒で我を忘れた方が幾分ましな気がした。
「うちで呑んでけば?」
しかし、の方はそれどころではない。
「ハア?」
昔から、実は意外に人目を引くこの男は、自分がどれだけのモノか、少しも
わかってないのだ。
だから無駄にモテない。それは安心出来る処ではあるのだけれど、こうして
もやもやするこちらの気持ちも少しはわかってもらいたいものだ。
「それじゃ俺がもう一件行く意味がねえだろうが」
呆れたように言われ、思わず睨みつけてしまった。
その顔を見て銀時もため息を付く。平行線のまま歩き続ける二人はそうする
うち、松本家の門の前に着いてしまい、ようやく立ち止まった。
「なんで」
「だからよー…」
「さっきの、女の子のとこにでも行って慰めてもらうの?」
くだらないと思う。子供じみた嫉妬なんて嫌われるだけなのに。
いくつになっても大人の女の余裕なんて持てない。
「なに言ってんだ?」
困惑したように眉をひそめる銀時に後悔が過るも、次々唇からこぼれる言葉
は止まってはくれない。
「…仲良さそうだったから」
こんなことを言いたいわけでは、決してないのに。
「いいかげんにしねえと、怒るぞ」
「怒ってるのはこっちよ」
「…なんでが怒るんだ?そんな必要ねえだろうが」
それではが銀時を想ってないと言われたも同然だった。
「 …ッ」
思わずカッとなりあげた手は銀時の頬を打つ前にその大きな手につかまれて
しまう。
「それに、家に入れたが最後、どうなるかわかってんだろうな?」
熱い掌からの手首に熱が流れ込んでいく。
「え?」
「訴えられるぞ? …俺が」
「な…」
「なんで? きまってんだろうが」
真っ直ぐな瞳に見据えられ、知らず知らず後ずされば背中が扉にふれた。
顔の真横に大きな手を押しあてての逃げ道を塞いだ銀時は身体を屈め視線
を合わせると、ほんの少し困ったようにしながらも唇の端を上げる。
「銀時?」
の問いかければ、ゆっくりと唇が重なった。
「たぶん、泣かせる。 いやだって言われても、止められねぇ」
唇が触れ合ったまま囁かれたのは、極上のデザート。
途端に顔を赤らめ、ぎゅっと目を閉じたに銀時が小さく笑う。
「」
「…ッ」
「んだよ。妬いたのか?」
目は開けられないが、呆れた顔をしているのだろう。
それでも、この上なく優しい音色の囁きがにおちた。
「違ッ…」
「まあ、たまには一つ二つ妬いとけ」
答える間もなく、扉の内へと連れ込まれる。
「…俺なんか、妬き過ぎで売るほどあらァ」
ぶっきらぼうで早口、しかも潜められていたが、残念ながらの耳へと届い
てしまっていた。
そして、それが結果としての抵抗を弱める事になっていたりする。
もちろん男の方は存ぜぬ所だが。
玄関までの長い道のり(実際は短いのだが)を歩いて、ようやく家へ入り、
戸の鍵をかけた途端にの身体が浮いた。
その急な浮遊感に声を上げる。
「ひゃあ!」
「っせ、だまってろ」
ジタバタと暴れるを担ぎ上げて銀時は一直線に彼女の部屋へと向かった。
「銀ッ!?」
しかも、自分はいつの間にかブーツを脱ぎ捨てているくせに、は草履さえ
脱がしてもらえないままだ。
「ジジイは?」
「先生は、朝まで帰らな…ッ」
何となく、その問いには答えてはいけなかった気がする。…後から気づいて
も遅いのだが。
「そーか。じゃ、遠慮なく…」
「遠慮してえ!」
「まあ、出来たらな」
左足からすとんと草履が落ちた。
どさりと下ろされたのは、の私室として開けてもらった一室。
「………」
引っ越しの際、銀時たちも手伝ってくれたので知っているのは良いのだが、
奴にしては覚えがいい。
「何度も脳内シュミレーションしたからな」
そんな考えを見透かしたのか、背後でにやりと笑う男が一人。
ベルトから引き抜いた木刀を壁に立てかける、ことり。という小さな音が、
さらにを焦らせる。
「な んの…?」
「夜這い」
四つん這いのまま逃げようとするの足首を掴んで、更ににやつく銀時は、
右足に残っていた草履を脱がしてやる。
「お、お布団…」
「じゃあ、お前ェが敷けや」
ポイと草履を放り投げた手が、帯を解きにかかった。
「俺は布団を敷くの着物脱がしてるから」
「サイテー!!」
無駄にきりっとした顔で言い放つ銀時を睨みつけて来る。
その顔は昔と比べ特に変わったわけでもないのに、増した色気に煽られる。
「オラ 早くしねえと畳の上ですっぞ?」
「ーッ!!」
脅しのような促しに渋々動き出したの尻を銀時の掌が撫で上げた。
「相変わらず良いケツしてんなァ」
セクハラ発言にかまっていては、本当に畳の上でコトに及びかねない。
なんとか押し入れの襖を開けて布団を引きずり出すも、着物を脱がす合間に
いたずらに動き回る銀時の指がの思考を乱していく。
「やあっ」
畳まれたままの布団にしがみつくの両腕を掴んで固定すると後ろから覆い
被さる男の手が着物の合わせから侵入した。
必死に足を閉じようとしても正座が崩れたように座り込んだ体制のままでは
ろくな抵抗にもならず、内股を無遠慮な手が撫でまわす。
素直に反応する女に気を良くしたのか、首筋にねっとりと舌が這った。
「あ んッ…」
「さあ、お待ちかねのショウタイムだぜェ」
笑いを含んだ声がの項に堕ちてくる。
「…銀ッ」
「俺の宝刀… お、言い得て妙だな!」
「……」(最低だ。この男)
激しく呆れながらもそろりと後ろの男を振り返れば、ちょっとないくらいの
大興奮状態であった。
「、…お前っつう鞘におさめんだよおおお!」
「いーやー!!!!!」(号泣)
残念ながら、どうしてもシリアスが続かない二人であった。
「ナァ、やっぱうちに来いよ」
背中を優しく擦る腕に誘われ、は銀時の胸に頬を押しあてる。
ほんのり暖かい素肌は、先ほどの熱を何処に隠してしまったのか、うっかり
なにもかも明け渡してしまいそうになる。
…弱いオンナになりたいわけではないのに。
「そのうち。 …ね」
「あと一人や二人増えたって大丈夫だっていったろーが」
いつの間にやら複数になっている。
「…私で打ち止めじゃないの?」
「アァ?」
「まだ増やす気?」
訝し気に見上げれば額にため息がおちてきた。
「俺じゃねえよ」
ぶっきらぼうに言い放つ銀時の表情は相変わらず伺えない。
「…?」
「増やすのは、ちゃんですよー?」
おどけたように言いながら、ツンと、鼻先を突つかれる。
「……」
それって…。
なにかすごいことを聞いたような気がする。
おそるおそる顔を上げれば銀時もこちらに視線を向けてきた。
「増やす手伝いはいくらでもするぜ?」
ここぞとばかり強かに笑う男に、もうずいぶんと長い事、の心は捕われた
ままで。
「…っても、まぁアレだ。もうしばらくは独り占めさせてもらうがな」
ゆっくりと重ねられる唇。
間近で見つめ合ってようやくは、先ほど幾度も思い出していたあの笑みを
記憶の中ではなく現実としてみる事が出来た。
とは言え。
「………似合わなーい」
「っせえ。 ったく、素直じゃねえ女だ…」
やっぱり、お互い様の二人。
それでも、重なった身体が離れる事はないのです。
2007.04.14 ECLIPSE

アトガキ
どうも、お待たせしました(笑)
こちらはソフトにお若いお嬢さんとエッチが苦手な方用。
いやー…ちょっとくどいかったから。…自分で言う(泣)
はあ(溜息)。 閉会式もまだあるんでしたねー…。
ナニが?
銀「やっぱなー久々だし、銀さんはちゃんとちょっとでも長く
ほにゃららしたいと思うんですよー」
あ、なんか乱入してきた。