第31回チキチキかわいいあの子とくんずほぐれつ大会 ロスタイム
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ。
鳴り止まない電子音。
ペチペチと首の辺りを叩かれ続けようやく銀時は目を開いた。
「ー…ん、あ?…?」
鳴り続ける目覚まし時計を止めて、時計と間違えいまだに自分を叩き続ける
の手を掴む。
「ー。サーン?時計鳴ってますよー」
「…んんーっ」
呼びながら細い肩を揺すれば嫌がるように銀時の胸に潜り込んでくる。
簡単に腕の中に納まったの髪が、さらりと銀時の腕に流れた。
そっと小さな身体を抱き込んで首を後ろに仰け反らせる。朝日が目にしみて
瞼の裏でちかちかと光った。目眩がするとは正にこの事だ。
「……あー… 起ちそー」
なんかもーこのまま布団に同化したい。ごと。
そのまま目をつぶり再び寝直そうとしていた銀時だったが、どうにも素肌に
感じる柔らかい感触や穏やかな寝息が、睡魔を次々追い返していく。
限界を超えた銀時の手がに伸びそうになったその時。
タイミング良く電話が鳴った。
後はもう大騒ぎで。
その時点で完全に遅刻だったはパニックに陥り、心配してかけてきた松本
からの電話に出たのは良いが、しどろもどろな返答を繰返した揚げ句、銀時が
隣にいる事に気づかれてしまった。
「……どーしよ…」
「とりあえずなんか着ろ。刺激強すぎだっつーの」
昨日の余韻を残したその色気漂う姿とはちぐはぐな、あどけない表情が銀時
の劣情を駆り立てる。
しかし、それをなけなしの理性でもって自制して、まだぼんやりしたままの
を促し着物を着させていると、外でエンジン音が響く。
「ジジイ車使いやがったな…」
どうせ駆けつけるだろうとは思っていたが、最速で来やがった。
忌々し気に銀時が舌打ちをしていると、すぐに廊下を走る音がして、続いて
勢い良く襖が開け放たれた。
「!無事か!?」
「それはないんじゃねーの?」
「だ、大丈夫(?)…です」
駆け寄った松本に赤くなりながらも俯く。
それを見た老医師の視線が刺すように銀時に流れた。
「お前はなにしとる?」
「ナニって…まあ、…かたづけ?」
「片付け?」
呆れたように声を上げる松本を、明後日の方向を見ながら誤魔化す。
「荷物が重いんだと」
それこそ抱えきれないくらいの想いをぶつけてやったのだから。
「まだ開けてないのがあるんだろ?」
「え?あ、…うん」
急に振られて、まだ若干放心気味だったらしいは流されるように頷いた。
どうやら耳から入る話の内容を殆ど処理出来ていないようだ。
「そうかァ?…まあ無理はしとらんようだし、そう言う事にしといてやろう」
「せんせ?」
「、今日は休んでいいぞ」
「え?でも…」
「人手は足りとる」
ぴしりと言い放つ松本はそれから柔らかく微笑む。
「お前は働きすぎじゃ。ちっとは休む事も知らんといかんな」
「そうそう俺のようにな」
腕を組んでうんうんと頷いていると、脇腹に攻撃を喰らった。
「白鬼。お前は休みすぎじゃ。つうか働け」
「へえへえ」
「人であろうと鬼であろうと、文無しにはやらんからな!」
「あーそりゃこまったなあ」
殴られた脇を擦りながらこれ見よがしに大げさなため息を付いている銀時と
それでも男から離れようとしないを見て、最後は呆れたように笑った松本は
ようやくまだ仕事の残る病院へと帰っていった。
「ったく、相変わらず食えねえジジイだ」
嵐のように来て嵐のように去っていった老人を二人で見送る。
「銀時と張るね」
苦虫をかみつぶしたような顔をが小さく笑った。
その笑顔を見た銀時は徐にの手を引いて部屋へと戻りだす。
「じゃあ、まあ…昨日の続きだな」
「え!?」
昨日の激しさを嫌でも思い出させる布団の惨状を見て、ようやく慌て出した
だが時既に遅し。
「…ッ、無理!」
「無理じゃねえよ」
ころりと寝床に転がされ、にやりといやらしい笑いでに多い被さる銀時の
唇が迫ってきた。
「ちゃんと手加減しただろうが」
ワケのわからない言い訳とともに。
昨夜、望んだ通り彼女の身体を思う存分貪り喰らったというのにのどの渇き
が納まらなかった。
身体だけが欲しいわけではないのだから本当は無理をさせたくない。
けれど、どうしても抑える事が出来ない。
それはたぶん、質の悪い独占欲。
ようやく取り戻した愛しい女の自分の知らない数年に嫉妬しているだけ。
「やっ、…アーッ!!」
まだろくに体力も回復していなかったのだろう。ほとんど抵抗出来ずにいる
の理性を溶かすように愛撫を施し、焦るように身体をつなげた。
「ふ、あ…ああっ」
ぎちぎちと、音がしそうなくらい締め付けてくる彼女の中は我を忘れそうに
なるほど熱くて狭い。
すべてを持っていかれて、何もかもを曝されそうになる。
絡み付く肉壁に絡めとられ、すべてがへと向かってゆく。
出来れば、なにものにも捕われない生き方を。
所詮無理な話だが、本気で思っていたあの頃。彼女に出逢って銀時のすべて
が変わった。
一度空っぽになった身体を温かなこの存在が、再び満たしてしまったのだ。
大切な存在を失って受ける傷みはこれ以上ない苦痛と恐怖。
もう二度と味わいたくない。
「ぎ、 んときぃ…」
どうしてこんなに大切な存在を、一時でも手放す事が出来たのか。
「…」
わかっていても、やりきれなくなる。
そしてその間、彼女に触れた…いるかどうかもわからない男に嫉妬する。
昨夜、の身体の至る所に散らした赤い華を更に増やして、鼓動を刻む胸の
中心にそっと呟く。
「もう誰にも触れさせねぇ…」
もし、その存在を知ってしまったならそれが誰であろうとも、殺してしまう
だろう自信がある。
先ほども松本だったからまだ良かったものの、他の人間からの電話だったら
と思うと、錆び付いた筈の感情が嫌な音をたてて軋む。
だが、そんな物騒な事を考えてるなど、決して知られるわけにはいかない。
銀時がどれだけを愛しているかを彼女が知る事があるとしたなら、それは
自分がこの世からいなくなった後でかまわない。
今はまだ心地良く感じるくらいの愛情と勘違いしていればいいのだ。
「昨日も思ったが…相変わらず狭ェなあ。しばらくぶりなのか?」
途端に飛んでくる白い手を掴んで口付ける。
本当は、いくらでも殴られてやりたいところなのだが、目覚まし時計代わり
と合わせて、それはまた今度にとっておく事にする。
にやりと笑って突き上げてやると、艶やかな悲鳴が上がった。
は、…あたりまえだが数年前より綺麗になった。
火照って紅く染まる頬と、潤んだ瞳。
睨むように見つめられただけで背筋がぞくりとする。
細いだけだった身体も、曲線がはっきりして少女から女の身体に変化した。
そうしたのは、ただ時の流れか、それとも他の誰かの仕業か。
「ひっ!…最低ッ」
喘ぎながらも、気丈に銀時を見据える真っ直ぐな瞳。
「知ってる」
こうやって、はぐらかすように憎まれ口でも叩いていないと、暴走を抑えら
れそうにない。
「…ッ、みんな に、一通りの護身術を仕込まれたんだから、…そこらの、
男の餌食にはならないわ」
燃え上がる悋気の炎に灼かれそうになった銀時の耳にの声が滑り込む。
「…違いねぇ」
「銀…」
苦く笑う男を見つめる瞳が聖母のように柔らかいものに変わった。まるで、
何もかも見透かすかのように。
「……?」
「それに、白夜叉の女に手を出す命知らずなんているわけないじゃない」
「…護られていたのよ。離れていてもあなたに。いままで、ずうっと」
そっと銀時の首に回される尚の細い腕。
「ーッ」
それは声を失うに十分の、 身に余る施し。
「申し訳ございませんでした!」
辛うじて座ってはいるが、今にも倒れ込んでしまいそうなの前で、銀時は
土下座の真っ最中だった。
あの後、案の定暴走した銀時に翻弄されまくったはぐったりとしながら、
その原因を睨みつけている。
だってしょうがないじゃないか。
惚れた女が離れている間、その身を他の男には指一本触らせてなかったなど
そんな男冥利に尽きる事言われて、平静でなんていられるわけがない。
ただ、その暴走のせいで、ちょっと無理をさせたなあ。
と、ほんの少し悪かったとか思ってもいるわけで。
「謝らなくていいから、誠意を見せて?」
「じゃあ、もう1ラウンド…ぐはっ」
飛んできた拳を先ほど松本に殴られた同じ場所で受ける。
「実家に帰らせていただきます」
すっと空気が冷えた。
「すいませェん!」
「で?」
冷たい促しが銀時を急かす。
言葉がすべてではないにしろ、声に出していって欲しいという女の気持ちは
わからないでもない。
ただ、それを言葉にするには男にとってかなり戸惑われるもの。
とは言え、在りもしない妄想に駆られて暴走した銀時に弁明の余地はない。
だから、彼女が望む通りにするしかないのだが、どうにも素直になれず。
「……大事にします。この命に代えても」
一言がなかなか銀時の胸から出てきてくれそうもない。
甘かったり卑猥だったりクサい台詞はいくらでも言えるのだが。
「それは重いなあ…」
「おまっ」
素っ気ないフリでこちらを見るに焦って言い募ろうとすれば、見透かした
ように、にこりと笑われた。
「ウーソ!嬉しいでーす。…で?」
きっと気付かれてる。
「…クソッ」
必死の代替も許さず逃がそうとしないくせ、蕩けるような甘い視線でじっと
こちらを見つめるにとうとう銀時は観念した。
ただ、せめて顔は見られないように引き寄せ、その身体を抱き込む。
ゆっくりと肺いっぱいに空気を取り込んでそれを唇まで押し上げる。
「…あー、サン?」
「ハイ」
素直な返事が返って、出逢った頃のあどけない笑顔を思い出した。
あんな顔をこの先ずっとさせる為なら幾らでもみっともない姿を曝け出そう。
「………………………………………………………………………………………………愛してるぞコノヤロー」
掠れた己の声を聞いた女が、胸元で満ち足りた猫のように笑う気配。
「私もだぞコノヤロー」
負けっぱなしがほんの少しだけ癪だった銀時は、その返事に素直に喜べず、
苦く舌打ちした。
そして今日も幸せな一日が始まるのです。
2007.05.11 ECLIPSE

アトガキ
結局の所バカップルだったと…(遠い目)
ちょっとエッチが入ってるんですが、そんなじゃないので制限なしです。
苦手な方いたらスイマセン。
でもね、どうしても最中に言わせたかった台詞があってね…
サンには申し訳ないんだけど、朝から疲れてもらいました。
さて後は閉会式です。
まあ、これはおまけみたいな?