―― そろそろいいでしょ?
誘われるままじゃなくて、
流されるままじゃなくて、
俺の事を誘ってよ。
【情事を連想させる5つのお題】
手加減なんていらない
髪を撫でる馴染んだ手の感触と、居る筈の無い人の気配を感じて、は瞼を開いた。
月光に煌く銀糸。
身体を包む濃紺と深緑。
撫でられる髪が二種類の感触を伝えて。
「・・・なんで此処に?」
問い掛けるを、優しく見下ろす蒼い瞳。
その持ち主の事を、どれだけ想っただろうか・・・。
会いたさが募って、無事が確認出来た途端、限界まで昂ぶらされた身体。
その熱さを、どれだけ持て余したか・・・。
心も、身体も、全てが、カカシを求めて、ないていた。
「ん〜に呼ばれた気がしてね。違った?」
「正解・・・。」
上体を起こしてカカシの肩口に、コツンと額を合わせる。
伸びていた筋肉が隆起した感触を額で感じると、カカシの下ろされていた腕がの肩を抱いた。
「カカシ・・・会いたかった・・・。」
「ありがと。俺もなんだけどね。だからこうして我慢出来ずに来ちゃった訳だけど。、お水は飲む?」
「・・・えっ・・あ・・・うん。」
「じゃ、一緒においで。」
カカシは立ち上がり、の頭にポンポンと二回手を置くと、その場から離れた。
パチンと音がして灯る部屋の電気。
暗闇に馴れていたの目はそれを拒絶し、カカシが瞳に映った瞬間から揺らめき出した炎を隠す。
「眩・・し・・・。」
反射的に瞼を閉じて、掌で自分の額に庇を作る。
痛いほど噴き込んで来た光の雨は、庇のお陰で和らいで。
ゆっくりと瞼を開けて、明るさに目を慣らすと、はベットから降りた。
「ねぇ・・・カカシ、ゲンマには会った?」
「さっき少しね。でも任務が入って帰ったよ。」
「あらら・・・そうなんだ。」
「何?ゲンマ君が帰ちゃって不満?」
「ん〜、というより、任務先まで呼び出しが来るとはね、思わなかったから。」
リビングルームのソファーに座って、カカシの注いでくれたミネラルウォーターを口に含む。
喉の渇きは癒えても、別の渇きは癒えなくて。
それを癒してくれるのは、与えてくれるのは、カカシだけ。
「それだけゲンマ君が優秀って事でしょ。」
「まあそうなんだけど・・・。大丈夫かな?結構飲んだんだ、二人して。」
「平気そうだったけどね。」
「そう?ならいいの。」
忍だって酒を楽しむ。
役職が上がるに吊れ、緊急性の高い任務に駆り出される事も多くなるけど、
そんな自体の為に一年中禁酒なんて事はしていなくて。
伝令が耳に届けば、一瞬にして忍の顔に戻る。
それは此処にいるカカシも含めて、皆。
そうだったと思い直して、グラスに残った水を飲み干し、テーブルの上に置いた。
「俺の悪口で盛り上がったんだって?」
隣に座ったカカシの声が耳元で響いて、思わず肩を竦める。
言葉の内容よりも、カカシの吐息が与える感触に身体が動いた。
「何〜そんなにヒドイ事話してたの?ま、いいけどね〜。」
カカシは笑いながら囁いて、の手の甲に自分の掌を重ねた。
ピクリと動くの指先。
それを感じて、再び心の中で笑う。
―― 、俺の事が欲しい?
だったら、ちゃんと言わなくちゃ。
言った筈だよ。
『俺の事を求めて』って。
『俺の事を欲しがって』って。
俺を誘ってみせてよ。
そうしたら、の欲しい物、全部あげる。
俺の溢れる想いを言葉に乗せて。
俺の昂ぶる想いを身体に刻み込んであげる。
だから・・・ね。
女だって、男を求める。
男にだって、聞きたい言葉はある。
何度抱いても、足りない。
すぐにを求める、心と身体。
そこに懐く焦燥感。
―― 俺だけじゃないと、
もそうだと、
俺に教えて・・・。
カカシはの手を一度軽く握って、「シャワー借りるね。」と振り返る事なく消えて行った。
握られた手が温かくて、じんわりと感触が残る。
浴室の雨が止むと、すぐにバスローブ姿のカカシが出て来て「は?」と親指が浴室を指した。
思わず見惚れてしまった素顔と素肌に恥ずかしくなって、
「入る。」とだけの短い言葉を残し、カカシの横を通り過ぎた。
―― 今日はどうして抱きしめてくれないの?
今日はどうしてキスをくれないの?
四六時中、抱き合っているわけじゃない。
のんびりとした生活の流れや、任務明けで睡眠を貪る事だってある。
気絶しそうな身体を抱えて帰った日は、カカシの優しいキスと温かい腕の中で眠りに付いた。
その分、倍になった朝もあるけれど、ギリギリ限界のラインまではカカシは超えてこない。
でも今日は・・・違うのに。
こんなにも想っているのに。
自然な流れで身体を重ねる夜と、甘い言葉で誘われる夜。
今日のカカシは、いつもと違って、態々その流れを断ち切り、甘い言葉も囁いてはくれない。
焦がされて、焦らされて、煽られて。
私がカカシを求めてるのはきっと分かってる筈なのに。
カカシも同じだと想うのに・・・。
―― カカシに抱かれたい・・・。
ううん、そんな綺麗な言葉じゃ収まらない。
カカシが欲しい。
カカシとしたい。
高まる体温と、体中の血液に乗って、自分の言葉が全身を駆け巡る。
言ってしまえば望みは叶う筈なのに。
きっとカカシは・・必ずカカシは応えてくれる。
でも、その言葉が紡げない。
言っていい言葉なのか、自信が持てない。
求めてくれれば、誘いの言葉をくれれば、喜んで応えるのに・・・
客室に居るカカシを思い浮かべると、彼の言葉が頭を過ぎって。
『もっと俺を欲しがってよ。』
『もっと俺を求めて。』
『ちゃんと言って、俺の事が欲しいんでしょ。』
答えを求められた言葉。
聞きたいと願われた言葉。
―― そっか・・・。
今まで、カカシのくれた言葉が、私の言葉になって耳に届く事を、カカシは待ってる。
浴室から出たは、カカシの灯した部屋の明かりを消した。
替わりに淫猥な炎を宿して。
それを感じている筈のカカシは「もう寝るの?」と薄笑いを浮かべて、曖昧な言葉を投げかける。
月を背にしてソファーに座るカカシに膝を立てて跨り、普段隠れた顔のラインに手を添えた。
いつもと違う角度。
自分を見上げるカカシにドクンと心臓が鳴って。
「カカシ・・・。」
「ん?」
「キスしていい?」
「許可はいらないでしょーよ。」
微笑んだカカシの腕が伸びて、の髪に滑り込んだ。
はゆっくりとカカシの唇に自分のそれを落とす。
触れ合う唇。
重ねるだけで、気持ちが昂ぶる。
カカシの下唇を自分の唇で挟んで、舌先でなぞって。
隙間に舌先を割り入れ、カカシが自分を酔わすように絡める。
自分が導いているのに、身体に力が入らなくなって、カカシの肩に手を付いて唇を離した。
「随分とキスが上手くなったね。」
カカシの掌がスルリと落ちて、親指がの唇をなぞる。
曲がった人差し指の間接が、唇の縁取りを軽く撫でて。
「俺以外のヤツにしちゃだめだよ。」
「そんなの分かって・・・る・・・。」
力強い腕に引き寄せられて、また唇が重なる。
カカシのキスは身も心も酔わす。
カカシとするまで、キスがこんなに気持ちの良いものだとは知らなくて。
愛の無いキスは酔えない事を知った。
キスだけで、身体が震える。
唇の動き一つ、舌先の動き一つで身体が跳ね上がる。
息も出来ないほどの濃厚なキスで、華は夜露を垂らして。
唇が離れると、カカシの首にしがみ付いた。
「ねえ・・・カカシ・・・しよ。」
「何がしたいの?俺と。」
「・・・え・・・っと・・・。」
「の口から聞きたい。」
「・・・SEX。」
カカシは満足気に微笑んで、震えるの身体を強く抱きしめた。
首筋にキスを何度も落として。
「初めてだね。が誘ってくれたの。」
バスローブに包まれたの身体を撫で上げて、背中に回していた片手が乳房を揉みしだく。
布越しに乳首を引っ掻き、摘んで転がす。
直に触られるのとは別の快感に、はカカシから身体を離して嬌声を上げた。
「・・・ん・・・あっ・・・。」
「俺、聞きたかったんだよね、ちゃんからのお誘い。我慢するの大変だったよ。」
乳房に添えた手が下りて、バスローブの紐を解く。
ハラリと離れた合わせの隙間に手を差し込んで伸ばすと、絨毯の上へ白い布が舞い落ちた。
「よく見せて。」
カカシはの身体を軽く持ち上げて、再び膝を立たせる。
白い二つの膨らみを下から撫で上げて。
するとそれはカカシの手の動きに合わせて形を変える。
「・・。」
自分を呼ぶカカシに視線を降ろすと、カカシは青白く光る肌の先端、薄紅色の乳首を舐め上げた。
周りを丹念に舐め回して、舌先で乳首を転がして。
口に含んで、吸い上げる。
それは、目にした事の無い光景。
自分がされている愛撫を瞳に写した事は初めてで。
恥かしいけど、視線が外せなくて、カカシの肩を強く握った。
「気持ち良い?」
先端を口に含みながら上目使いで見上げるカカシに、鼓動が一段と高く鳴り響く。
「・・・う・・ん。」
「素直でいい子だ。」
カカシはそう言うと、口の中の乳首に歯を立てて。
「あん・・・。」
は短く喘いで身体を反らせる。
その間にカカシの肌も覆う物をなくして。
全身を這い回る二本の腕がの背中を押さえて、片方は太腿の内側を撫でる。
触れるか、触れないかの軽いタッチで、わざとポイントを外し森を彷徨う。
「・・・ん・・あっ・・・・ん・・」
の両手がもどかしそうにカカシの肩を掴んで、切なそうな声を上げた。
カカシの親指はゆっくりと煌く宝石に近づく。
カカシに磨かれ更に輝きを増した紅玉。
その持ち主を見上げると、ぞくりとする程の艶を放って。
雫に濡れた指をそれにそっと押し当てる。
ビクリとの身体が震えて、更に指を進めて全体を捕らえると、
は喉をしならせながら歓喜の声を上げた。
「あぁ!!」
既に入り口の門を叩いていた中指をゆっくり体内に埋めて、
「はあ・・ん・・・。」
内部を掻き回し、関節を使ってピストンを繰り返す。
「あぁっ・・あん・・・あ、あ、あっ」
溢れた蜜はカカシの掌を濡らして滴り落ちる。
「カカシ・・・もう・・だめ・・・カカシがほしい。」
「ん?俺はのものだよ。」
「はぁん・・・意地悪・・・言わ・・ないで・・・。」
カカシはから指を引き抜いて、バスローブを一度軽く握ると、
の手を自身の猛り狂う欲望に導く。
「これでしょ?」
は黙って頷く。
「分かる?の中に入りたくて、ずっとこうなの。」
熱く張り詰めるカカシの雄。
ドクンと脈打ち、硬度を増したカカシの雄は、堪えきれず先陣の雫を垂らす。
「ベットに行く?それともこのままでいい?」
「もう我慢出来ない・・。」
「我慢しなくていいよ。今すぐあげる。おいで。」
カカシは己を持っての秘部に宛がう。
覆い隠す襞を前後に擦ると其処はくちゅり、くちゅり、と淫猥な音を響かせた。
その体勢で愛し合った事はなくても、どうすれば良いか位、教えられなくても分かる。
身体はカカシを求めて叫んでる。
でもあと一つだけきっかけが欲しい。
「、俺を中に入れてよ。」
カカシはそれをくれた。
「・・・うん。」
はゆっくりと腰を沈める。
先端が入っただけで、下腹部に力が入ってカカシを締め上げる。
「・・・・ん・・・あっ・・・カカ・・シ・・。」
「・・・っ。」
全てを飲み込みたいのに、自分の其処はまるで嫌がってでも居るかの様な抵抗をみせる。
只、其処はカカシの侵入を喜び、離すまいとしているだけ。
カカシに貫かれるなら、彼は『きついね。』と優しく微笑んで奥を目指してくれる。
でも今日は自分が導いていて。
普段カカシの感じている感触がリアルに伝わって、強い締め付けが続く。
「力を抜いて、ゆっくり呼吸をしてごらん。」
カカシに言われるがまま、身体の力を抜いて、ゆっくりと息を吐く。
そして腰を更に沈めた。
「・・・あっ・・・あ・・・んくっ・・・。」
硬直の先端が内壁を抉りながら進むのが分かる。
自分の重みが自分を貫く。
「んああ!!」
先端が奥まで届くと、脊髄から脳に渡る導火線に火が付き、弾け飛んだ。
「逝っちゃったね。」
「・・・うん。でも・・・」
「でも、なに?」
「嫌いにならない?」
「多分、俺が喜ぶ言葉だと思うけど、違う?」
「そうかな・・・。いつものカカシと同じ。
・・・まだ足りないの。もっとカカシを感じたい。」
「その言葉、最高に嬉しいかも。」
「そう?カカシも気持ち良くなって。」
「十分気持ちいいケドね、の中。熱くて、ドロドロに溶けててさ。」
カカシが突き上げると同時に、は自分の腰を揺らす。
締め上げて、前後に揺らして、円を描いて。
上下に動けば、ぐちゅ、ぐちゅと淫らな水音を奏でて。
「はぁ・・・ん・・・。」
「・・・。」
快楽に必死に耐えるカカシの顔を初めて見た。
そして湧き上がる新たな感情。
それを何に例えて言ったら良いのかは分からないけど、何となく男の気持ちが分かった。
人差し指でカカシの身体をすっと撫でてみる。
鎖骨から、胸板、均整のとれた腹筋まで。
ほんの少しだけ動いたカカシが何だか可愛くて。
奥まで飲み込んだ杭を締め付けて、腰を振る。
「・・・くっ・・・。」
腰を押さえていたカカシの手が緩んで、腰を引いた。
はそれを追いかけて奥へと沈める。
「・・・出ちゃうって、そんなに動いたら。」
「いいよ、カカシ・・・気持ち良くなって。」
「・・・じゃ、一回逝かしてもらう・・。」
カカシはの腰を掴んで押し下げて、最奥を貫く。
逝きそうになる自分を堪えて、は腰を動かした。
「・・・出すよ・・・。」
「・・んあっ・・・う・・ん。全部・・・受け止めて・・あげるから。」
の中に埋め込まれていた肉の杭は、ビクビクと脈打ち、熱く迸る液を放った。
二人の息使いだけが聞こえる室内。
呼吸が整うと、カカシは今だ冷めやらぬ肉棒を一度に衝き立て、内部から引き抜いた。
途端にの秘部からは、愛液と精液の混じった液が流れ落ち、カカシを濡らす。
「今度はの番ね。」
カカシはそう言うと、を抱え上げてベットへ向かう。
「・・・カカシ・・。」
「ん?」
「手加減はいらないから・・・。」
「どういう意味だか分かってる?」
「うん・・・。なんて言ったらいいんだろ・・・こういう時って。・・・めちゃくちゃにして・・・?」
「・・・まったく・・・そういう言葉を何処で覚えたんだか。知らないよ、どうなっても。」
「いいから・・・。激しくして・・・。こういうのダメ?」
「い〜や、最高です。ではお言葉に甘えて。
後で後悔しても知らないよ。もう聞いちゃったからね。」
「うん。」
カカシはをベットに降ろして、その上に跨る。
「ま、動けなくなったら、俺が抱いて帰るだけだけど。」
「そ、それは・・ちょっと困るか・・・も・・・。」
荒々しく塞がれた口は最後の一文字をカカシの口に放って。
「いっぱい気持ち良くなろうね。」
カカシはの耳元に顔を埋めた。
新たなを俺に見せて。
乱れ狂うを・・・。
あんな言葉、聞いちゃったら、泣き叫んでも止めてあげられないかもよ。
俺の隠してた部分を表に出したのは、
それに火を付けたのは、・・・お前なんだからね。
次回手加減 2 少々濃いのでお気をつけを・・・
BGM 羅の河
-RaNoKawa-