ENDLESS STORY
第七章
何時建てられたのか、その真新しい屋敷は、森に溶け込む様にひっそりと建っていた。
諜報部の話によると、確認出来た敵は十五人。
先ほど見た図面で、屋敷内の間取りは頭に叩き込んである。
地下へと繋がる階段の有る方角から忍び込み、屋根裏を伝い、階段の場所を確認する。
が天井から降りると、地下への階段の入り口を守っていたであろう忍は、
声を発する事も無くその場に倒れた。
まず一人。
その後を三人が続く。
アスマがの倒した忍を、拘束用の縄で縛り上げる。
「アスマ、カカシ、此処お願いね。」
「了解。」
戦闘に長けた二人を残し、地下への階段を下り始めた。
「少女とは別の匂いが混じってる。二人・・・いや三人だな。」
「ありがとう、パックン。」
踊り場に行く手前で下を確認すると、地下室の扉の前に二人。
紅は静かに印を結んだ。
「・・・金縛りの術。」
下忍でも使用出来る基本忍術ではあるが、紅レベルともなれば、
よほどの忍で無い限り逃れるのは難しい。
は素早く二人の前に立ち、首に手を衝き立てた。
「おやすみ。」
ドサッドサッと二人は床に横たわる。
これで三人。
ドアノブを回すと、案の定鍵が掛かっていた。
力でこじ開ける事も出来そうだが、あまり大きな音は立てられない。
「こいつ等、持ってないかな?」
が探ると一人の忍の懐から一本の鍵が出て来た。
「あった!」
「では、お嬢様をお迎えに行きましょう。」
静かに開錠し、その鍵を仕舞う。
壁に背中を預けた紅は、の無言の合図で同時に地下室へと入った。
地下室というより、洞窟。
薄暗い横穴の左右には、鉄の格子で遮られた小部屋。
これじゃ牢屋ね。
こんな所にいるなんて・・・。
囚人を収容する施設の方がまだマシだ。
最奥に一際明かりの灯る場所がある。
気配を殺し、天を伝いながら近づいて行くと、女の話声が聞こえた。
「毒なんて入ってやしないわよ。いい加減食べたら?」
牢の中に写真の少女。
くの一の言葉に何も言わず、首を横に振る。
きっと少女は、出された食事に手を付けていないのだろう。
賢明と言えばそうだが、六歳の少女が中々出来る事ではない。
「・・・ったく、可愛くないわね。」
くの一は言葉を吐き捨てた。
「ねえパックン、あの子、本物の彩愛ちゃん?」
「ああ、もっと近づけば確実だか、略間違いないぞ。
纏ってる衣服も、体も、その人形と同じ匂いじゃ。」
「了解!!」
と紅が飛び降りる。
「あんた達!何・・・も・・」
全ての言葉を言い終わる前に、このくの一も崩れ落ちた。
四人目。
「食事を持ってきたんなら、鍵も持ってるはずだよね。」
うつ伏せになって倒れている、くの一を仰向けにさせるとカチャンと金属音。
地面に落ちた鍵を拾い上げ、牢を開け中に入る。
「彩愛ちゃんですか?」
「・・・はい。」
「私は。後ろのお姉さんは夕日紅。このマーク何だか分かる?」
額当てを少し動かして見せる。
「木の葉の・・・忍者さん?」
「そうだよ。助けに来ました。だから安心していいよ。」
少女は大粒の涙を浮かべ、に縋り付いた。
幼子でも大名の娘。
木の葉と聞いて安心したのだろう。
「怖かったね。よくがんばったね。もうすぐお家に帰れるから。
これね、彩愛ちゃんのお母さんから預かって来たんだよ。」
は綱手から受け取った人形を、少女に手渡した。
「・・・ありがとう。」
瞳から溢れた涙は頬を伝い流れ落ちるが、それ以上増える事は無かった。
と少女が牢から出ると、紅はくの一を牢に押し込め、は鍵を締めた。
「さてと、行きますか!」
「そうね。長居は無用よ。」
「彩愛ちゃん、しっかり捕まっててね。」
は少女を抱え、今来た道を戻る。
紅が扉の前に倒れていた二人を中に入れ、鍵を閉めた後、は結界を施した。
術者が近くに居なければ、効果の薄れて行くタイプの結界だが、ある程度時間稼ぎにはなる。
階段を駆け上がり、待っていたカカシ、アスマに声を掛けた。
「彩愛ちゃん救出完了。・・・あの二人は仲間だから安心してね。」
少女に向かって優しく微笑むと、コクリと頷いた。
「おう。意外と早かったな。」
「まあね・・・。」
カカシか、アスマの返り討ちに合ったと見られる、新たな忍を見つめながら呟いた。
これで六人か。
「もっと手答えの有る奴が居ると思ったんだけどよ。」
アスマは拳を鳴らしてみせる。
「どうした?。」
「うん・・兎に角、早く出よう。」
「ああ、変わるぞ。」
両手を差し出すアスマに、は少女を託した。
「こんな奴らばかりじゃないよ。きっと。」
「もそう思う?」
「カカシ・・・多分ね。」
いくら寄せ集めって言ったって、上忍クラスの忍が居ない筈無い。
こんな事企てる位だもの。
幸いまだ出会っていないだけだ。
が脱出口から外を見ると、忍達が騒いでいる。
「まだ屋敷内に居るはずだ!探せ!!」
男の言葉にその場に居た忍達は、四方八方へと散って行った。
「どうやら、あちらさんも気づいた様で。どうする?」
何処から出ても、きっと同じ。
もう屋敷周辺は敵に囲まれている。
なら帰還ルートの方角が最も良い。
「・・・このまま突破する。」
「了解。」
カカシは額宛てをずらし、隠されていたもう一つの瞳を開いた。
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