ENDLESS STORY
         第六章



 四人は木の葉の森を駆け抜ける。
 里から屋敷までは、さほど遠くはない。
 綱手の言うように、日没前には着くだろう。

 人質の写真、と見せられた物に写っていたのは少女。
 以前に撮られた物なのか、そうで無いのかは、にはまだ分からなかった。
 大抵が有るならば、最近の写真を添付する。
 しかしその姿はあまりにも幼かった。

 詳細は走りながら話すと言っていたアスマが口を開いた。
 
 「火の国の大名の娘。名は彩愛(あやめ)6歳。」
 「6歳・・・」
 
 やはり先ほどの写真は最近撮られた物。


 あんな小さい子が誘拐され、監禁されているなんて。
 誘拐する側からすれば扱いやすいのだろうけど、許せない。


 「手荒な扱いされてないよね。」
 「どうだろうな。忍び込んだヤツの話だと、くの一らしい女が面倒みてるらしいが・・・。
  まあ、ビービー泣かれるは厄介だからな。下手な真似はしないだろうよ。」
 「だといいけど。」

 一定の間隔を空け、枝から枝へ飛び移る。

 「で、敵さんは?」
 
 カカシはアスマの方とチラリと見て、視線を前方へと戻した。
 
 「里を持たない忍の集団だな。身代金を要求してきた。大方資金調達だろう。
  取引は明朝7時。その前に救出、保護。」
 「ねえアスマ。取引時間前に送り届けろなんて言うんじゃ・・・」
 「ああ。依頼主はそれを望んでる。」
 「そう・・・。」
 
 紅が小さく頷いた。
 
 「それで、この任務の隊長は。」
 「私?!」

 
このメンバーで私が隊長・・・。
 隊長なら上忍になる前に何度も経験しているけど、上忍になってからはまだ無くて。
 この場合お手並み拝見と言った所かな。


 この先が、最高ランクの任務を遂行する部隊の隊長として、
 やっていけるかの審査も兼ねているのだろう。
 大体が先輩上忍の元で初隊長を経験する。

 「だいじょーぶ。俺達が付いてる。」
 
 カカシは一つしか見えない目を細めながら笑う。
 
 「まあ今更って感じもするけどよ。の事は実力も含めて、よく知ってるしな。」
 
 アスマの言葉に紅も頷いた。


 そうだね。
 皆が居る。


 「了解!!」
 
 そう言って後方を飛んでいたは、先頭へと躍り出る。
 
 「副隊長はアスマ、よろしくね。」
 「ああ。」
 「取引時間云々もそうだけど、早く助けてあげないと。
  彩愛ちゃんの精神状態が心配だよ。跳ばすね。」
 
 今でもかなりのハイペースで向かっているが、のスピードは更に上がる。
 殿を勤めるカカシの、暖かい視線を背に受けながら。








 火の国の国境近くの森に、ひっそりと建つ真新しい屋敷。

 「ここね。」

 木々で身を隠し、高い位置から屋敷の全景を望む。
 綱手の部屋を出る間際、渡された小さな人形。
 少女が大切にしている物だから、渡してやってほしいと、母親から託されたそうだ。
 リュックからそれを出し、見つめる

 「カカシ、パックン。」

 カカシは頷くと、

 「忍法口寄せ!」

 ポワンとした煙の中から、カカシが信頼する忍犬が姿を表した。
 
 「よお!なんだか、えらいメンツだな。」

 前足を上げ挨拶をするパックン。
 
 「六歳の女の子が誘拐されて、監禁されてるの。隊長は私。力を貸してね。パックン。」
 
 は跪き、目線をパックンに合わせる。
 
 「お安い御用だ。」
 「此処に彩愛ちゃんの人形があるから、匂いを覚えてね。」
 
パックンに人形を差し出した。

 これほど良い情報はないだろう。
 忍が変化を使っていたとしても、パックンの嗅覚は誤魔化せない。

 「覚えた。」
 「よろしくね。パックン。」
 
 少女の人形を大切にリュックに仕舞う。

 「そろそろ日が暮れるけど、待ってられない。
  どうせ明朝の取引じゃ、警備も薄くならないだろうし、
  夜遅くじゃ可哀相だもの。みんないいよね。」
 「に従うよ。」
 「ああ。いいんじゃねーか。」
 「私もよ。」
 「それじゃ、行くよ!」
 
 四人は枝を使い、地面に降り立つ。


 待っててね、彩愛ちゃん。
 今助けるから・・・。
 今夜はちゃんとお家のお布団で寝ようね。


 忍び込むのなら闇に紛れるのが得策、という事は十分承知している。
 だが完全な闇が訪れるまでの時間が惜しい。
 相手もかなり警戒しているだろう。
 それは夜間とて同じ事。
 だったら早い方が少女の為に良い。
 戦闘も避けて通れれば良いが、敵もそんなに甘くはないはず。
 自分の判断が少女と、仲間の命を脅かす事にならなければ良いと願いつつ、屋敷へと近づいた。