ENDLESS STORY
        第五章



 カカシに告白されてから数日。
 冬将軍も旅立った、暖かいある日。
 はすっかり定位置になった木の前で寛いでいた。


 「ー!」

 ぶんぶんと手を振り、何やら大事そうに持っているアンコと、横に一緒に歩く紅。
 アンコの叫び声で、の周りにいた鳥達は一斉に飛び立った。

 「何よ〜明ら様に。」

 鳥達を見上げ唇を尖らす。

 「アンコの声がでかいんだって。ね〜紅。」

 クスリと笑う紅。

 「食べよ〜。」

 とアンコが開けた包みの中身は、やはり団子。


 「で、あの後どうなったのよ。」
 「カカシは何だって?」

 アンコと紅が交互に質問してきた。

 「そんな二人して、尋問しないでよ。」

 はアンコが持ってきた団子をパクリと咥えた。

 「どこまでいったのさ。」
 「・・・はい。ちゃんと家まで送って頂きました。」
 「いや〜そういうボケはいいから。」

 片手はの返答に、いらない、いらない、と手を振り、新たな団子に手を出すアンコ。

 「え〜全部話すの?」
 「当たり前じゃない!」

 アンコと紅は口を揃えた。

 「うんとね・・・。カカシが私の事・・・好きだって・・・。」

 「それでは?」
 「私も好きだって言いました・・・。」
 「やりっ!」
 「やっと自分の気持ち認めたのね。」
 「う・・ん。」

 少し照れくさそうに二人を見る

 「あれからカカシとは、会ってないの?」
 「お互い任務続きでね。私もさっき帰ってきたし。でも任務に行く前に・・・」



 此処でカカシと会ったんだ。

 いつものように此処に座っていたら、カカシがやって来て。


 「どうしたの?カカシ。」

 少し離れた場所から、を見つめるカカシに声を掛けた。

 「驚かせたら悪いと思ってね。」

 カカシはゆっくりの傍に歩いてきた。

 「カカシの気配は分かるよ〜。」

 「ちゃんじゃなくて、この子達。」
 「あ、そうか。優しいね。カカシ。」

 見上げて笑うに、カカシは両手をポケットに入れたまま腰を曲げ、そっと口付けをした。

 「充電完了。」
 「もう!これから任務?」
 「そっ。」
 「そっか・・・。気をつけてね。」


 大切な人が任務に行く。
 この世界を知っているだけに、余計湧き上がる不安。
 友人を心配する気持ちとは違う、新たな感情。


 カカシ・・・怪我しないで、帰ってきてよね・・・。




 「・・・で任務に行く前になによ!」
 「ごめ〜ん。此処でね。会ったの。」
 「そう・・・。幸せそうな顔しちゃって。」

 紅がの額を指で弾いた。

 「でもあんた達って似てるよね。」
 「どこが?」
 「カカシもよく木陰で休んでるじゃん。あの本片手に。」
 「そう言われれば、そうね。」

 女三人、団子の肴になっているカカシは、今頃くしゃみでもしているのだろうか?


 その時一陣の風と共に、イワシがやって来た。

 「アンコさん。綱手様がお二人をお呼びするようにと。」
 「例のアレ?」
 「はい。」
 「もう分かったんだ。紅、、多分これから任務よ。」
 「分かった。」

 四人は綱手の元へ急いだ。






 「ご苦労。紅、、これから任務に就いてもらう。」
 「はい。」

 綱手の部屋には、図面を広げるゲンマとそれを見ているアスマ。

 「もう一人呼んである。そいつが来たら始めよう。」
 「もう一人ですか?」

 紅が綱手に問い掛けた時、

 「ああ。来たよ。・・・遅い!!」

 眠そうな目をした、猫背気味の上忍が入って来た。

 「俺、さっき戻ったばかりなんですよ。これでも急いで来ました。」
 「日頃の行いだ。」

 綱手が笑い飛ばす。

 「人使いが荒い・・・」
 「何か言ったか?カカシ。」

 カカシは頭を掻きながら首を横に振った。


 全員が依頼書を手にすると、綱手は口を開いた。

 「カカシ、アスマ、紅、のフォーマンセルだ。
  昨夜、火の国の大名の娘が誘拐された。直ちに救出してもらう。」
 「すごい部隊ですね。」 

 の顔に緊張が走る。

 「ああ。寄せ集めの反乱分子だが、相手は忍だ。」
 「分かりました。」


 相手は忍。
 戦闘は避けて通れ無いかも知れない。


 紅とは、ゲンマの広げている図面へと目をやった。

 「これが屋敷の見取り図?」
 「ああ。地下の部屋に監禁されてる。」

 は屋敷の図面を頭に叩き込んだ。

 「ゲンマ君。仕事早いね。」

 カカシは腕を組み、壁に寄り掛かりながら呟く。

 「諜報部隊をなめてもらっちゃ困りますよ。では綱手様、俺は次の仕事に取り掛かりますんで。」

 「ああ。ご苦労。」

 ゲンマは部屋を後にした。
 カカシがの肩越しから図面を覗き込むと、

 「娘の生存が絶対条件だ。」

 机の上に両肘を付き、手を合わせ険しい表情の綱手。

 「御意。」
 「今から向かえば、日暮れには着くだろう。では、散!!」
 

 四人は文字通り、風の如く里を発った。


 カカシと一緒の任務は久しぶり。
 彼が師と呼ばれるようになってからは、一度もない。
 任務の責任は重い・・・けど・・・
 不謹慎だけど、うれしい様な、複雑な想いで、は木の葉の森を駆け抜けた。