ENDLESS STORY
           第二章




 今日木の葉の里を照らしていた太陽が、違う場所を照らすべく、
 姿を隠し始めた頃、街のネオンもポツポツと付き始めた。
 今日の夕焼けも、とても綺麗。

 「おつかれ〜。」
 
 まだ僅かに残る太陽の光と、街の明かりが交じり合う中、
 アンコが待機所の中へ入ってきた。
 
 「お疲れ様。」

 待機所にいる面々が、口々に声を揃える。
 奥のテーブルに向かい合って座っていた、と紅はこっちこっちと手を振った。
 
 「アンコお疲れさまー。お茶飲む?」

 が席を立ちながら言うと、

 「もらう、もらう。」

 と片手を自分の顔の前に立て、悪いね〜とでも言いたげに、紅の前の席に座る。

 「はいよ〜。」

 はお茶を入れる為、台所に向かった。

 「ラッピング出来たって?」
 「うん。此処に来る前に引き取ってきたよ。」

 アンコは少し大きめの紙袋をかざした。
 それはの昇進祝い、という名目の服。
 一日中、忍服でいる事の多い職業だけに、プライベートで着る服は、
 同世代の女の子達に比べると、多い方ではない。
 流行にはあまり捕らわれず、シンプルな物が多い
 それはそれで、スタイルの良いには似合っているのだが。
 
 「どうしよっか〜?今渡して、着せて行きたいよね。着てくと思う?」
 「多分・・・無理ね。」
 「だよね〜。」

 アンコは肩を落とす。

 「いつも忍服で飲んでるんだから、いいじゃんって言いそう。」
 「そうね。いくら昇進祝いの席なんだからって言っても、
  だからって自分が普段と違う格好で行くなんて、ベタ過ぎるからイヤ!って言いそうよ。
  私達も着替えればよかったかしらね。」

 紅はの口調を真似しながら言った。

 「なんかいい方法ないかな?」
 「だったら、飲んでる時渡したら?少し酔わせて。
  私達だけプレゼント渡すの、なんかあれだから、上手くやるわよ。」

 何やら企んでいるような雰囲気を醸し出し。

 「あー!それいい!折角だから着ろって言えば、着るよきっと。
  そんでさ〜荷物もあるし、酔ってるしってカカシに送らせればいいじゃん。」

 名案、名案と喜び、手を叩く。

 「おまたせ〜。」

 がアンコのお茶を入れて戻ってきた。

 「何アンコ騒いでるの?」
 「いえ〜別に。今日は飲めるな、と思ってうれしくてね〜。」

 受け取ったお茶を、ふうふうと冷ましながら笑う。

 「よく言うよ・・・。」

 は紅の隣に座った。

 あれこれ雑談しながら時計を見ると、そろそろ待機の時間も終わる頃。
 アンコは少し冷めたお茶を、一気に飲み干した。

 「そろそろね。」

 席を立った紅が、テーブルの湯のみを片付け始めた。

 「ご馳走様。あたし幹事だから、先行ってっていい?」
 「そうなの?一緒に行けばいいのに。私らもすぐ行くね〜。」
 が手を振ると、アンコは荷物を抱え待機所を出て行った。



 達が待機所を出た時には、すっかり太陽も顔を隠し、
 変わりに美しい月が、木の葉の街を照らしていた。



 会場は「酒酒屋」
 大皿料理の中華居酒屋だが、最近、商売女性客の心を掴んでこそ!
 とのオーナーの意向で、女性好みの酒の数はここら辺で群を抜いている。

 ちょうど店の前に差し掛かった時、他のメンバーもちらほら現れた。

 「よお!」

 手を上げ声を掛けるゲンマ。
 ライドウとアオバも一緒だ。
 紅の開いた扉に、

 「飲むぞー。」

 と声を揃えながら、吸い込まれて行く。

 其処は、外の音とはまるで違い、ガヤガヤとした繁盛している店の中の音。
 その音はかなりの雑音とも取れるが、飲みに来た者達に高揚感を与えるスパイスになる。

 奥にある個室にアンコは席を設けていた。
 大抵此処に来る時は、奥の個室。
 上忍、特別上忍が集まる飲み会で、一列向かい合わせに座れる位の広さを持つその部屋は、
 全員のお気に入りだ。

 サンダルを脱ぎ、部屋に入ると、アンコとガイが待っていた。
 五人が部屋の中に入り終わった時、カカシとアスマもやって来た。

 「取り合えず、さくっと頼んどいたわよ。」

 アンコが声を掛ける。

 奥の部屋に人が集まりだしたのを確認した店員が、ビールと日本酒を持ってきた。

 「カカシ、遅刻しないで来れるじゃない。」

 紅がカカシを肘で小突く。

 「まあね〜。」

 と席の一番端に腰を落とした。
 ガイが座っているのはその列の頭。
 此処に来てまで、「勝負だ!」と飲み比べでも挑まれたら、
 めんどくさいとでも思っているような気さえする。
 はそんなカカシを見つめて、クスッと笑った。

 「な〜に?ちゃん。」
 「いえいえ。なんでも御座いませんよ。」

 笑いながら、何処に座ろうか悩んでいると、

 「今日は真ん中よ。」

 紅がカカシの向かいの列の真ん中に座らせた。

 ガイ、ゲンマ、ライドウ、アオバ、カカシ。
 アンコ、、紅、アスマ。

 という並び順。

 「これで全員?」

 紅はアンコに問い掛ける。

 「う〜んと、そうだね。あとは任務。」
 「そう。じゃ始めましょうか。」

 紅の合図を皮切りに、酒を注ぎ始めた。

 「じゃあガイ、音頭取って。」

 アンコがガイに求めれば、「おし。」と席と立ち、
 
 「の昇進を祝って乾杯ー!」

 グラスを高々と上げた。
 他の皆は座ったままだけど・・・。


 次々に運ばれてくる料理。
 酒のつまみ程度に食す者も居れば、夕飯だと平らげる者も居る。
 そろそろ酒の弱い者から、いい気分になり始めて来た。
 はこのメンバーの中では弱い方。
 他の皆が強すぎるんだ・・・と何時も思う。

 「なんかビール飽きちゃったな。」

 が言うと、

 「じゃあ何か頼んであげる。」

 紅が店員を呼んだ。

 少しすると、綺麗なオレンジ色をしたカクテルが運ばれてきた。

 「綺〜麗。なんてお酒?」
 「エルプレジデンテ。」

 ラムベースにオレンジジュースの入ったカクテル。
 甘いが、アルコールは高め。

 「、オレンジ好きでしょ。」
 「うん。おいしー」

 は少しつづ飲んでいった。

 しばらくすると、

 「暑〜い。」

 パタパタと自分の手を、団扇代わりに振る。

 「少し強かったかしら?ウーロン茶でも飲む?」
 「うん。」

 紅が使っていないグラスに、ウーロン茶を注ごうとした時、手を滑らせた。

 「ごめ〜ん。。」
 「いいよ。いいよ。大丈夫。」

 零れたウーロン茶は、紅の意思を持つかの様に、
 テーブルには少し、の服だけには思い切り零れた。

 「気持ち悪いでしょ。着替えてきたら?」
 「え?いいよ。それに着替えなんて持ってないし。」
 「あるのよ。ねアンコ。」
 「そうそう。こっちおいで。」

 アンコが紙袋を持って部屋から出ると、不思議そうな顔では着いて行った。


 「此処トイレ位よね。着替えられるの。」

 トイレの前で、アンコはに紙袋を渡す。

 「これ、のお祝い。紅と一緒に選んだんだ。」
 「えっ・・・。ありがとうアンコ。」
 「紅にもね。」

 そう言いながら手を振り、アンコは部屋に戻って行った。


 さてと、流石に気持ち悪いしな。


 の忍服は、腿から下が完全に濡れている。
 トイレに入り、服を着替え始めた。

 キャミソールのワンピに、袖口と、襟から前の合わせにかけて、
 大きめのフリルが付いた、落ち着いた色のカーディガン。
 ヴィクトリアン風の、胸元を強調したスタイル。
 の肩まである栗色の髪がよく映える。
 シンプルな物が多いは、一瞬戸惑った。


 こういうのも、たまにはいいね。


 流石は女性。ちゃんと、上から下まで全ての物が揃ってる。
 最後にブーツを履くと、はトイレから出て行った。


 なんか照れくさいなぁ・・・。


 は閉められていた個室の襖に手を掛けた。
 




 


  



読んでくれて有難う御座います。
なんだか友情物語になちゃいましたね。
最初、洋服の設定は書かない様にしようと思ったのですが、
一応少しだけ入れました。色は貴女のお好きな色で。
好みがあるからね。
ご自分の好きなスタイルに、当てはめ直して下さっても結構ですよ(笑)
では次回、カカシ始動です。
            かえで