ENDLESS STORY
第十二章
ちょっと荷物多かったかな?
はバックを抱え、カカシの部屋へ向かう。
なんか旅行に行くみたい。
自分の荷物を見てクスリと笑った。
きっとこれからカカシの部屋で過ごす事が多くなる。
そう無意識に感じた。
だから、買い置きしておいた化粧品などもバックに詰めた。
然程離れていない、自分の部屋とカカシの部屋の距離。
その道のりを歩く。
ただ歩いているだけなのに、心臓が早まった。
さっきまでずっと一緒だったのに、早く会いたい。
想いが通じ合ってからも、二人の時間はあったけれど、それは愛し合う二人には短くて。
これからゆったりと過ごす、カカシとの時間。
じゃれ合い、ふざけ合う甘い時間と、きっと一緒に過ごす事になる夜。
喜びと、期待と、僅かな不安が交差する。
遊んでいた子供達が家路へと急いで居た。
風が何処からか、美味しそうな匂いも運んでくる。
穏やかに、そして暖かく里は暮れる。
空には宝石を散りばめた暗幕が降り始めた頃、カカシの部屋の前に着いた。
その部屋のドアをノックする。
「カカシ。私だよ。」
「開いてるよ。」
カカシの声が中から聞こえると、はドアを開く。
開かれたドアはの姿を隠すと、静かに閉じた。
「お邪魔しま〜す。」
台所からカカシがやって来て「おかえり。」と出迎える。
『お邪魔します』か・・・。
これが何時か『ただいま』になってくれると、嬉しいんだけどね・・・。
そしてその逆も。
「なんか荷物増えちゃった。」
照れくさそうに笑うに、「い〜んじゃないの」と二色の瞳が笑う。
「さっきの荷物、寝室に置いてあるからね。タンスの一番下とクローゼット少し空けてあるから。
分かるよね。」
「うん、大丈夫。あの時は相当酔ってたけどね〜。」
「確かに。」
「だって二次会の場所がなくて、カカシの部屋に雪崩れ込んだ日でしょ。
皆此処なら潰れても平気だからなんて言って、結構飲んだもんね。
でもちゃんと覚えてるよ〜。」
は寝室に入ると、荷物を仕舞い、着替えて、自分の忍服をカカシの忍服の隣に掛ける。
二着並んだ忍服を見て、なんだか不思議な気持ちになった。
するとその忍服を纏っていた本人に会いたくなって、寝室を出ると、
カカシの後ろから抱き締めた。
「どうしたの?から抱きついてくるのって珍しいじゃない。嬉しいケド。」
自分の体に巻かれたの手を握りながら言った。
「ん・・・何となく・・・ね。もう作ってるの?」
「そっ、味付けはこんなもんかな。」
「ごめ〜ん。すぐ手伝うよ。」
ポケットからクリップを出し髪を纏め、手を洗う。
「秋刀魚、捌こうか?」
とカカシの隣で笑いながら、美味しそう!と煮物を覗き込んだ。
襟足より少し上でくるりと巻かれた髪。
普段隠れている首から肩のライン。
の方が美味しそうなんですけど・・・。
カカシはの首に口付けた。
「きゃ!・・・びっくりした。」
「いや〜あんまりにも美味しそうなんで、つい。」
「あはははは・・。火、使ってるからかね。暑っ〜。」
「そっ?」
耳まで真っ赤にしながら、は包丁を握る。
逸る心臓が手に伝わって、僅かな震えを感じた。
静まって心臓。
カカシに聞こえちゃいそうだよ・・・。
唇を重ねた事は何度もあるし、それ以外の場所にだってカカシは口付けて来た。
でも今日は普段の倍以上ドキドキしてる。
それはやっぱり、これから迎える夜の事を意識してしまうから・・・。
お互い口には出さないけれど、明日という日を一緒に迎えるつもりでいる。
それは決して嫌ではなくて・・・。
むしろそう成りたいとさえ思っている。
頭ではそう思っているのに、心が意識する。
本当に人を好きになった時って、こういう気持ちなんだとは思った。
が下準備をした秋刀魚を焼いて、カカシの好きな味噌汁を作って、
緑の物も取らなくちゃねっと野菜も茹でた。
二人で盛り付けて、テーブルに並べる。
「出〜来〜た!!こういうのって楽しいね。」
さっき買ったお揃いのお箸を持って、恵みに感謝しながら、頂きますと声を揃えた。
「カカシ、食べるの早いよね〜。」
「まあね。はゆっくり食べてよ。」
カカシは向かいの席で、ニコニコしながらを見つめている。
「照れるってば・・・」
「何で〜いいじゃない。」
自分の目の前にが居る事が嬉しい。
段々と自分の部屋に溶け込んでいくから目を離したくない。
ずっと傍に居てほしい。
カカシは先ほど作った銀色に光る物を、ポケットの中で暖かくなるまで握った。
「ご馳走様でした。美味しかった〜。カカシって料理上手いよね。」
「そ?もね。」
「ありがとう〜。お互い自炊してるしね。」
お茶を飲むの前に、スッとカカシの手が差し出された。
手を退けるとテーブルの上には一本の鍵。
「カカシの・・・部屋の鍵?」
「有った方が便利でしょ。
欲を言うとね、此処で暮らさないかって言いたい所なんだけど、それは急がないから。
にも生活があるし、俺の事もっと知ってからでもいいからね。」
「うん、分かった。ありがとう・・・カカシ。」
は貰った鍵を胸の前で握りしめる。
「無くさない様に仕舞っておかなくちゃ。ちょっと待ってて。」
席を立つとは寝室へ向かった。
BGM 皐月