Crescent 3
はたけカカシ Happy Birthday 2006
部屋に入ると、はすぐに荷物を解き始めた。
通常の里外任務なら、リュックの中身は殆どが予備の忍具。
あとは多少の着替えと身の回りの物と水筒。
でも今回は、外交任務に関するマニュアルに則り、パーティー用のドレスとそれに合わせた備品も入れた。
昼間ならばどの様な公式の場であっても、忍服が正装となるが、
夜間に行なわれる宴に対してはこの限りではなく、それ相応の装いが必要となっている。
リュックの中で小さく畳んであるドレスを取り出し、鏡台の前にある椅子に引っ掛けたは、
そのままバスルームへと向かった。
潮風に晒された髪と体を洗い流して、用意されていたバスローブに袖を通すと、ベットに倒れ込む。
ふぅ・・・気持ち良い〜生き返る〜。
シャワーとドライヤーの熱で火照った体を冷まし、汗が引くと掛けてあったドレスに着替えた。
そして髪を纏め上げ、化粧を施す。
時刻は集合時間の15分前。
がバルコニーに出ると、夜空には銀の川のように無数の光が帯を成していた。
カカシ・・・近くに居るのに、まだ会えないね。
さてと、いざ出陣!
普段あまり履かないヒールが絨毯に沈む感触を不慣れに感じながら、ダイニングルームへと向かった。
国王が挨拶をし、一通りの紹介を終えると、は国王に恭順し、短めのスピーチと乾杯の音頭を取った。
コース料理を味わってから、場所を大広間に移すと、立食式の酒宴の場。
まだ顔と名前の一致しない側近達や軍関係者が、代わる代わるの元へやって来る。
改めて自己紹介を含め、先だっての事件の事、これからの事などに華を咲かす。
一組、一組、丁寧に応対をしていると、少し離れた場所に居る国王の声が耳に届いた。
「祝いの席なんだから、あの方々も呼べば良かったね〜。」
と従者に話し掛ける。
「ああそうだ、祝いの品でも持っていってよ。若い子達にはお菓子とフルーツでいいね。
はたけさんはね〜あの人強そうだから、最高級の酒でも持っていってくれる?寝酒代わりになるでしょ〜。」
国王の隣にいた従者は「かしこまりました」と頭を下げ、近くに居たウエイターやメイドに指示を出していた。
あの子達にお菓子やフルーツは問題ないけど、カカシにお酒?
まぁ、病気って訳でも無いし、大丈夫か・・・。
カカシ強いしね。
はすぐに頭を切り替え、再び応対に追われた。
カカシが愛読書を片手にベットに座っていると、ドアをノックする音と共に男性の看護師が一人入って来た。
「どうですか?調子は。今夜の点滴はこれで終わりです。」
そう言って針と僅かなチューブを残して、カカシの手首にテープで止めた。
「明日又しますので、このままにしておいて下さい。
あとサクラさんから伺いましたが、睡眠はちゃんと取れていますか?
もし寝付けないようでしたら、こちらを飲んで下さい。
短時間型の軽い睡眠導入剤です。ちゃんとした薬ですので、問題ないですよ。」
ポケットから薬を取り出しサイドテーブルの上に置いた看護師がにこやかに笑うと、
カカシは「色々とすいません」と軽く頭を下げた。
「では、ゆっくりお休み下さい。」
空になった点滴をトレーに載せて看護師は部屋から出て行った。
睡眠薬ねぇ・・・。
薬に頼るのはあんまり好きじゃないし、色々と耐性の付いてる俺に効くのかね?
でもま、飲んでみるか。
これでと夢で会えたら・・・などど柄にもない事を思いながら、カカシは一錠の薬を飲み込んだ。
しばらくすると国王からの祝いの品だと、一人のウエイターが高そうな酒を運んで来た。
ご丁寧にその場で開封し、一杯作ってから、部屋を出る。
随分と年代物の酒だね〜。
態々作ってくれちゃって。
ここまでしてもらって飲まない訳にはいかないデショ。
目が弧を描き、心の中で誰かに言い訳しながら、カカシは注がれた酒を流し込む。
すぐに空になったグラスに酒を注ごうとすると、先程飲んだ薬のシートが目に留まる。
この手の薬は俺、あんまり効かないし・・・ねぇ。
一瞬躊躇した手が再び動き出し、二杯目の酒に口を付けた。
酒宴の席もお開きとなり、夜風に当たりたくなったは、大広間から繋がる庭園に足を運ぶ。
すると庭園内を走りこんでいるピンク色の髪の少女。
「サクラ〜!何してるの?」
声を掛けると、サクラはの方に走り寄る。
「うわっ!さん色っぽい〜。」
「あはは・・・ありがと。」
の纏うドレスはベアトップタイプのロングドレス。
胸のフロントには谷間を見せる小窓とストーンが散りばめてあり、そこを中心に左右、下へとギャザーが波打つ。
シワにならず、荷物になるアクセサリーを極力押さえられるデザインは大変重宝している。
「晩餐会は終わったんですか?」
「うん、今終わったよ。それより、こんな夜に修行?」
「・・・いえ〜そんなカッコいいもんじゃないですよ。国王様からプレゼントが届きまして・・・。
お菓子と果物だったんですけどね。あまりに美味しそうだったんで、つい・・・。」
「食べ過ぎちゃった?」
「そうなんですよ。だからカロリー消費の為に。」
はにかんだサクラはペロっと舌を出した。
「さん、まだカカシ先生に会ってないんですか?」
「そうなの・・・やっと時間が取れたけど、もう遅いしね・・・。
面会時間とかって決まってるの?」
「いいえ〜。そんなの無いですよ。だから大丈夫ですって、今からでも。」
「じゃ、顔だけでも見に行こうかな。」
「善は急げですよ、さん。
看護師さんの巡回とかもしてないですから、ゆっくりして来て下さいよ。」
「分かった〜ありがとう。じゃ、サクラも程々にね。」
「は〜い。」
お互い手を振り合い、は王宮内へ、サクラは門の方へと走って行った。
カカシ、起きてるかな?
かなり遅い時間だけど・・・。
扉をノックするも中から返事は無く、は躊躇いながら、そのドアを開けた。
「・・・カカシ・・・?」
部屋の明かりは落ちていて、ベットに眠るカカシの姿を窓から差し込む月明かりが照らす。
寝ちゃってる・・・。
でも顔色も良いし、安心した・・・。
「カカシ・・・心配したんだよ。」
カカシに語り掛けながら、ベットの脇に置かれた椅子に腰掛けた。
―― 夢・・・?
―― 幻聴・・・?
落ち掛けた意識が浮上すると、カカシはゆっくり瞼を開ける。
「ごめんね・・・起こしちゃったね。」
―― 幻聴の次は、幻覚まで見るようになったか・・・。
はカカシの手を取り、自分の頬に摺り寄せた。
―― 幻覚が実体化して俺の手を握ってる。
この声、この気配、この感触、随分とリアルだねぇ。
「カカシ・・・?大丈夫?まだ辛いの?」
―― これが幻術だったら、相当の術者だね。
間違いなく俺の首が飛ぶ。
でもこれは夢でも、幻でもなく、現実。
今、が此処に居る。
がカカシの顔を覗き込もうとした時、カカシは起き上がると、の両脇に手を入れ抱き上げる。
カタンと二回、の履いていたヒールが床を叩き、カカシは自分の膝の上にを跨がせた。
「・・・。何処行ってたの?」
「あ、祝宴に・・・。」
「俺、部屋でずっと待ってたんだけど。」
「・・・ごめんね、待たせちゃって。」
「随分遠い所だったんだね〜。」
「・・・そんな事はないけど、長引いちゃったかな。」
「里外の長期なら、ちゃんと言ってってくれなきゃ心配するでしょーよ。誰も教えてくれないし。」
「ん・・・?里外の長期任務はカカシでしょ。」
「何言ってんの?俺は部屋で待ってたって言ってるでしょ。」
「もしかして・・・カカシ酔ってる?」
「酔ってないよ、正気。」
大抵、酔っている本人にそうかと問い質せば、酔っていないと答えるもの。
自分自身も酒を飲んで来ているので、気に留めなかっただが、カカシからアルコールの匂いが感じられた。
あのカカシが酔うなんて・・・。
どんなお酒をどれだけ飲んだんだろう・・・。
さっきはカカシしか見えていなくて、目に入らなかったサイドテーブルを見ようとするも、
カカシの体で隠れて見ることが出来ない。
肩越しから如何にも高そうな酒瓶らしき物の頭が見えるだけ。
「ちょっと・・・ごめん。」
が横にずれて、テーブルを見ようとすると、カカシに押さえ付けられた。
「俺から逃げる気?」
「そうじゃなくて・・・ね。どんなお酒を頂いたのかな〜と思って。」
「こんな味だよ。」
の後ろに腕を回し、唇を重ねた。
触れ合うだけの時間は僅か。
すぐにカカシの舌はの唇を割り、少し開いた歯の隙間に差し込まれる。
目的の物を見つけると、カカシは自分のそれと絡めあった。
「飲ませてあげるね。」
「・・・なに?」
「ん〜お裾分け。」
「私も飲んできたから・・いら・・な・・・」
の言葉はカカシには届かず、カカシはビンから直接酒を口に含むと口移しで飲ませ始めた。
飲みきれない酒がの口からもれ、首筋を伝って落ちて行く。
「どお?」
どお?と聞かれても、普段ストレートで飲む事の無い酒が熱く体の中を落ちて行くだけ。
「・・味なんて、分からないよ・・・。」
「じゃ、もう一口。」
「そういう意味じゃなくて、本当にいらないってばぁ・・・。」
しっかりと肩を抱かれ身動きが取れないの唇は、三度カカシに塞がれる。
酒とカカシの口付けでの体は温度を上げ、内部に熱が篭る。
「あ〜あ・・・零れちゃって・・・。」
息の上がるの唇を舐め、そのまま零れた酒に沿って唇を這わせる。
「・・・随分と色っぽいかっこしてるね〜」
「・・ん・・だか・・ら・・今日は・・ね・・祝宴があって・・・」
「こんな服、着て来て、俺の事誘ってるの?」
「ちょっと・・・待って・・・だめ・・・」
「なんで?」
「ここではだめだよ・・・。」
「さっきから、だめばかりだね〜。そんな事言ってると俺のサド心に火が付くよ。」
「ちょ・・・と・・誰か来たら・・・どう・・するの・・んっ・・あ・・・。」
「大丈夫、誰も来ないから。」
重なり合った二つの影は、二人が眠りに落ちるまで動き続けた。
言い訳。
本館(表)なので、極力直接的な表現を避けました;(今更? 笑)
セリフだけのシーンは・・・ご想像にお任せ?なんていい加減な管理人・・・(すいません)
中向けしている部分は別館に掲載してありますので、条件の満たされる方、苦手ではない方はそちらをど〜ぞ。
最後に・・・
薬とアルコールの併用は危険ですので、やめましょう。
病室内での、飲酒はだめですよ。
〇〇〇もかな・・・多分?(汗)