Crescent 5
はたけカカシ Happy Birthday 2006
う〜ん・・・。
何時の間にか寝ちゃった・・。
が瞼を開けるとすぐに飛び込んでくるカカシの寝顔。
何時の間にか二人共元の姿に戻っていて、さっきの事は夢だったのかと一瞬思わせる。
けれど体に刻み込まれたカカシの痕跡がそうでは無い事を物語る。
着せてくれたんだ。
ありがとね。
カカシの頬に唇を落として起き上がると、明度を増した室内。
白み始めた空が夜明けの近い事を教えてくれた。
「・・・カカシ?」
振り向いて呼んでみてもカカシが起きる気配はなく、
はベットからそっと降りて床に転がるヒールに足を通した。
着衣の乱れを整え首を横に向ければ、カカシを深い眠りに誘う犯人。
あらら・・・殆ど残ってない。
うわ・・・度数高い・・・。
手に持った瓶を元の場所に戻し再びカカシの顔を覗きこむと、足元でクシャっと何かが潰れる様な音がした。
ヒールの下ではプレスされた銀色のシート。
薬のシート?
お薬飲んでいるのに、お酒はだめでしょ。
カカシの額を軽く弾くが、カカシの瞼は一向に開かず。
よくやる狸寝入りではなさそうだ。
「お部屋に戻るね。まだちょっと視察が残ってるから、あとで来るね。」
ふわふわとした銀の髪を指先に絡め、再び唇を落とすと、は静かに部屋から出て行った。
さっきまで安定していた深い眠り。
急に肌寒くなる体と、ふと消えた暖かい気配。
それを探すカカシの腕が宙に伸びて、虚しく空を掴む。
・・・?
慌てて飛び起き室内を見回してもの姿は何処にもなく、見慣れてきた部屋が目に映るだけ。
確かに居た筈の。
この腕に抱いた記憶と、リアルに残る感触。
あれが全部夢なんて事は無いでしょーよ。
再びベットに横になれば、僅かに残るの香りが舞い上がる。
やっぱりね。
かくれんぼでもする気?
昨日サクラが言った言葉と繋ぎ合わせて、確信を得たカカシは笑みを浮かべて。
綱手様も粋な人選してくれるじゃないの。
自室で書類に塗れているだろう綱手を思い出せば、
『だろ、カカシ。里に戻ったらしっかり働いてもらうからな。』
そう、綱手に返されたような気がした。
残る任務は建設中である忍舎の視察。
と言っても、まだ着工を始めたばかりで、出来上がってはいないのだが。
貰った街の地図と、忍舎の図面を持って部屋を出ると、
朝食から戻ったナルト達がの姿を見つけて走って来た。
「おはよ〜。」
「おはようございます。」
が朝の挨拶を投げかければ、礼儀正しく返す二人と、ニコニコ笑いながら話を進めるナルト。
「ねえちゃん、これからどっか行くのか?」
「建設中の忍舎にね。王宮の近くみたいなんだけど。」
「それなら俺達知ってるってばよ。な〜サクラちゃん、ゲジ眉。」
「あっ!あそこね。さんお供します。私達も遊んでばかりじゃ綱手様に怒られちゃう。」
「ありがと〜。じゃ、お願いしようかな。」
「はい。」
「お安い御用だってばよ。」
「でわ早速行きましょう。」
友人である上忍を思いださせるポーズを取ったリーの合図で、四人は現地へと向かった。
まだ基礎工事段階の忍舎は視察と言ってもさして見る所は無く、
現場を仕切る監督と少しの打ち合わせをして終了した。
「さ〜ん、あとは?」
「そうだな・・・。街を一通り見て終わりかな。」
忍舎を離れサクラ達でさえ知らない道も探索し、美味しそうなお店を見つけては立ち止まり、
可愛い雑貨屋を見れば立ち止まり。
文化の違う異国の地を観光客さながらに見て回る。
もう任務と言うよりは、市内観光。
時が経つのも忘れ楽しんだ四人の帰り道。
の隣にはサクラが、その前を男の子二人が歩いて。
くるりと後ろを振り返ったナルトがそのまま歩きながら問い掛ければ、他の二人の視線もに集中する。
「な〜そういえばねえちゃん、カカシ先生には会えたのか?」
「え?あ・・・えっと・・・寝てたよ。」
思わずお茶を濁してしまう。
会えたと言って、どうだった?と聞かれたりしても困るわけで。
あなた達の先生は酔ってました、などとはとても言えないし。
実際部屋を出る時は寝ていたのだから、強ち嘘でもない。
「カカシ先生寝ちゃってたんですか?タイミング悪かったな〜。」
「何が?サクラ。」
「いえね、カカシ先生が寝不足っぽかったんで、お薬処方してもらったんですよ。
よく眠れるように。」
お薬?
カカシの部屋にあった薬のシートは睡眠薬って事?
そっか・・・あのカカシが酔ったのも、起きなかったのも多分そのせい。
もしかしたら、昨夜の事は覚えてないかな。
それなら、それでいいかも。
私も酔って勢いが付いて・・・何だか思い出すと恥ずかしいし。
「なんだ〜カカシ先生ってば、寝ちゃってたのか〜。」
何故か残念そうに項垂れるナルトは、再び前を向き歩くかと思いきや、くるりとまたに向かって。
「でも、これで任務は終わりなんだよな〜。これからゆっくり会えるってばよ。」
笑顔を残して前を向いた。
「でも早い方がいいわよね。」
サクラが笑ってそう言えば、
「だよな〜。」
「ですね。」
前を歩く二人は振り返って、ナルトがの手を掴む。
サクラがの背中を押して三人が走り出すと、自然との足も速度が上がり。
「そんなに急がなくてもいいってば〜。」
朱に染まり始める王宮へ、三人の下忍に連行される上忍の姿があった。
「何してるんですか?カカシ先生。」
「うわ!」
「無理は禁物ですよ。」
部屋に入ると目に写るカカシの姿は想像していたのと違っていた。
「見て分かんな〜い?君達。」
「腕立て伏せですけど・・・。」
「そ、腕立て伏せ。」
「そんな事して体は大丈夫なんですか?」
「あ?ま〜ね。」
「ならいいですけど。」
「それより、早く消えてくれない?」
カカシはすっと立ち上がり、ニッコリ微笑みながら言い放つ。
「お邪魔でしたか。何なら僕も付き合いますよ。」
「ひっで〜カカシ先生、折角見舞いに来てやったのによ〜。」
「そうですよ!ひっど〜い。」
喜ぶ部下と、口を尖らせる部下二人。
「ひどくて結構。大いに邪魔なの。お前等の姿。」
三人の前に立ちはだかり、ナルトとリーの頭に手を乗せ押さえ込むと、二人の姿は白い煙の中に消えた。
「ばれてた?」
「ま〜ね。」
「あ〜あ・・・やっぱり無理だったな・・・。」
「俺の事、誰だと思ってんの?」
「えっと、カカシ先生!」
あまりにも当たり前な答えにカカシは軽い溜息を付く。
「じゃ、写輪眼のはたけカカシ。」
「写輪眼を使うまでもないんだけどねえ。」
「あっ、それちょっとショック・・・。」
「俺が見間違う訳ないでしょ。俺だからと思ってほしいね。」
「そうなの?」
「そうなの。でももうちょっと甘い言葉を期待してたんだけどね〜。それより早く解いてくれない?変化。」
「忘れてました・・・。」
流れて消えていく白煙の中からの体が浮かび上がると、
カカシはその体を自分の胸に引き寄せて深く口付ける。
「これ位、だめとは言わせないよ。」
耳元で話すカカシの息が体を熱くする。
だからカカシの言葉に含まれる意味を理解するのに、少し時間が掛かった。
「もしかして・・・昨夜の事覚えてる?」
「さ〜どうでしょうねえ・・・」
「・・・やっぱり覚えてるんだ。」
「ま、に会えたから回復したんだし、大目に見てよね。」
「別に怒ってるわけじゃないけど。」
「そ〜だよね。」
「態々思い出さなくてもいいから・・・ね。」
なにやら思い浮かべてるカカシに、釘を刺してみるがあまり変わらなく、その目は細い三日月型。
でもまた真っ直ぐにを捕らえて。
「生かすも、殺すも次第って事かね。」
そう囁いた唇が再び降りてきて、を酔わす。
永遠に治る事のないカカシの病。
対処出来るのは一人だけ。
俺のチャクラはなんだから、切れ起こすとまた倒れちゃうかもよ。
窓から差し込む夕日が二人を優しく包み込むと、カカシはを連れて赤く染まる海へと飛び出す。
赤と青、朱と藍、二つの輝きを放つ海をはカカシの腕の中で見つめて。
海と同じ輝きを持つ瞳はを写して。
この島と同じ形の月が二人を照らすまでその姿を胸に焼き付けた。
END