昼前、携帯に京から「飯食いに行こうぜ!」という誘いがあったので、は無理やり八神を誘った。ほぼ半分以上のセリフを無視された挙句「黙れ」とまで言われたが、最終的には「奢るから!」の最終奥義(?)が勝敗を決めた。バンドマンらしい彼は、意外と実入りが少ないのかもしれない…。
「何で八神が居んだよ」
待ち合わせたロビーに行くと、京と矢吹は先に着いて待っていたようで、と一緒に現れた八神を見て、早速京が噛み付いた。
「つかテメー、に変なコトしてねーだろうな?」
京としては、こののほほんとして危機感も猜疑心も持ち合わせていないような、可愛らしい顔をした年上の従兄が心配でならなかった。
そんな京を、八神は鼻で笑った。
「『変なコト』とは何だ」
「ハァ?」
「『変なコト』とは何だ、具体的に言ってみろ。…SEXの事か?」
最後の一言を、八神はワザと低い声で囁いた。
「んなっ…!て、て、てめぇ!!」
京は顔を真っ赤にして、無意味に八神を指差した。
(ああもう、京ってば…)
そんな京の初心な反応がちょっと可愛くて、は肩をすくめた。
「はいはい、もう京も馬鹿な事言わないの。SEXなんてしてませんっ」
「ー!!そんな可愛いお口でそんな事言うなー!!」
京はクルリと方向を変えて、今度はを指差して叫ぶ。
(か…可愛いお口って…。僕の方が年上なんですけど…?)
「可愛いお口…ね。SEXが駄目なら、フェラチオでもしてもらうか」
八神が鼻で笑いながらとんでもない事を言い出した。
「八神ぶっ殺す!!!だから言っただろ、八神は危険人物だって!」
(てゆーか、「お口」から何連想してんの八神君!!)
これには、さすがにも恥ずかしくなる。
(思わず想像してしまった………)
「おい、真吾!やっぱりお前、と部屋替われ。そしてお前が八神に喰われろ」
「酷いっすよ草薙さん!真吾の純潔がどうなっても良いんすかー!?」
「…俺はそんな悪食じゃない」
ビシッと嫌な命令を下され、京にすがり付く真吾だったが、八神が溜息と共に放った一言に「酷いっす…」と肩を落とした。それはそれで寂しかったらしい。
「ちょっとー、あんた達なに大声で下ネタ連発してんのよ!」
突如響いた声に振り向くと、不知火舞が両腕を豊満な胸の前で組んで立っていた。その横では彼女の婚約者(?)であるアンディ・ボガードが苦笑いを浮かべている。
「こんな所で日本人の恥を曝すのはやめてよね。ただでさえ目立つって言うのに…。行きましょ、アンディ」
その言葉に周りを見回すと、遠巻きにしたギャラリーの視線は自分達一行に集まっていた。そこにきて、八神と京は大会参加者の中でも特に注目される存在であった事をは思い出した。
「………ご飯、食べに行こうね」
「あ…ああ」
に促され、さすがに京もバツが悪そうに頬を掻きながら従った。
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