三人の死神に連れて来られた場所は、長屋の一室のようだった。誰も住んでいないのか生活感はなく、薄暗い廃墟のようにも思えた。
「痛っ…!」
は強い力で背中を押され、地面に膝を付いた。
転がされた拍子に、長さが合わなかった為、市丸の手によって帯部分で折り返して着せられていた着物がゆるんだ。
「な、何するんだよっ」
は三人を睨みつけるが、死神達は意に介さず、の乱れた裾から覗く白い下肢に生唾を飲み込んだ。
はその視線に悪寒を感じ後ずさるが、その行動は相手の嗜虐心を刺激するだけだった。
「へえ…、ガキかと思ったら結構色っぽい身体してんじゃねーか。こりゃ思ったより楽しめそうだぜ」
「お、おい、でもヤバくねーか?死神ではないようだが、もし貴族だったら…」
「…確かに、ただのガキにしちゃ着物が上質すぎやしないか?」
一人がに手を伸ばしかけた時、後ろの二人が異を唱えた。
「馬鹿言え、貴族の坊ちゃんがこんな寸法の合わねー着物なんて着てる訳ねーだろ」
その言葉に、二人も成る程と納得しかけるが、やはり気が進まないのか尻込みしている。
「チッ、意気地のねー奴らめ。ヤル気がねーなら後ろで黙って見てろ」
そう言った死神は、仲間が自分に従わない苛立ちをぶつけるように、乱暴にの着物の襟を掴んだ。
「嫌だ!放せっ!」
死神の手から逃れようと必死で腕を振り回すと、舌打ちと共にガチャリと音をたてて斬魂刀が抜かれた。
「殺されたくなかったらおとなしくしてろ」
目の前の死神の荒い息と血走った目。鈍く光る斬魂刀。
あまりの恐怖に身体がガクガクと震えた。
(嫌だ、嫌だっ…)
おとなしくなったに気を良くしたのか、死神はゆっくりとの着物の裾をまくりながら、すでに肌蹴られている胸元へと唇を寄せた。
首筋をねっとりと舐め上げられると、不快感から涙がこぼれた。
なぜこんなに不快なのだろう…。市丸にイタズラされた時は、突然だったから、というのを差し引いても、こんなに嫌ではなかった。それどころか、確かに快感があったのだ。しかし今は快感どころか、あるのは吐き気がする程の不快感だけだ。
「随分おとなしくなったなぁ、…お前もしかして慣れてるんじゃねーのか?」
いやらしい笑顔で言われた言葉の意味がわからず黙っていると、突然、後孔に指をねじ込まれ、その瞬間、下半身に激痛が走った。
「イッ…ヤアアァァ!痛い!」
市丸とは互いの中心を擦り合わせただけで、後ろには触れられていない。そこに濡らしてもいない指をねじ込まれたのだ。
「チッ、なんだよ初めてか。期待させやがって…」
そう言い終らないうちに、死神の顔の横をヒュッという音が通り過ぎた。ぱらりと数本の髪が落ち、頬を細い血が流れる。
恐る恐る視線を向けると、怖ろしいほどに妖しく光る斬魂刀。そしてそれを確認した瞬間、背後から聞こえたのは、笑っているような陽気な声だった。
「あかんよ〜、ヒトのもんに手ぇ出したら」
振り向くと、その顔は確かに笑っている。笑っているのになぜこんなに怖ろしいのか。
「い…市丸…隊長」
他の二人は、青ざめた顔でただ呆然と立ち尽くしている。そりゃあそうだろう。自分だって今にも気を失いそうだ。
「君、良かったな〜。事が終わった後やったら、死んでたで。 その子、僕の猫やねん」
後ろの言葉を、言い聞かせるようにゆっくりと言った市丸に、ぞわりと背中が粟立つ。
それが限界だった。
死神は「ヒイィ」っと情けない悲鳴を上げると、這う這うの体で逃げ出した。仲間の死神も慌ててそれを追った。
「、大丈夫か?」
「ギ…ンっ」
寸での所で助けられたは、涙で濡れた顔でふるふると震えている。そして、すがる様な瞳を市丸に向けているのだから堪らない。
「ごめんな遅なって、怖かったやろ」
「ギンっ、ギンっ…」
可哀想なくらい震える身体を、包み込むように抱きしめてやると、両手で必死にすがり付いてくる。
(あかん、ほんまに可愛いわ…)
市丸の口元が満足そうに弧を描いたのに、が気づく事はなかった。
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