「私は織田家臣、明智十兵衛光秀。信長様の命により救援に参りました」
「光秀殿、危ない所でした。感謝いたします」
光秀と共に粗方の敵を片付けた陸遜は光秀に一礼すると、その後ろからひょっこりと顔を出した人物に息を呑んだ。
「陸遜!」
馬から飛び降り、陸遜の胸へと飛び込んできたを、混乱する頭のまま受け止めた。
の背中を抱きしめようとして、自分の手が震えている事に気付き、何だか可笑しくなった。
「…、なぜ貴方がここに…?」
なんだか様々な感情が溢れ出てきて、陸遜は泣き笑いのような表情で問い掛けた。
「貴方を心配して、成都より単独で駆けつけて来られたそうですよ」
二人の姿に微笑みながら光秀が答えると、陸遜は自分の胸に顔を埋めているの頬を撫ぜ、そっと顔を上げさせた。
「成都から………。私の為に…?」
顔を上げたの潤んだ瞳が陸遜の理性を揺さぶった。しばらく会わなかった間に、益々綺麗になった気がする。
美しい二人の青年の様子に、ただの友人ではない雰囲気を感じ取った光秀は、既に制圧した拠点の様子を見に行く振りをしてその場を離れた。
陸遜はそれを視界の端で捉え、気を使わせてしまったかと申し訳なく思いつつも、光秀の心遣いに感謝した。
今はとにかく、との再会の喜びに浸りたい。
「陸遜の事が心配で………。孫市が、馬を用意してくれたんだ」
「孫市殿が…」
「孫市は…、気付いてたみたい。…僕が、陸遜を…好きだって」
「………、それは…本当ですか?」
「うん…、孫市は勘が鋭いから…」
陸遜はクスッと笑っての顔を両手で優しく包み込んだ。
「そちらではなくて。…私の事が、好き?」
陸遜がゆっくりと囁くように問いかけると、は真っ赤な顔で小さく頷いた。
「…、私も貴方が大好きです」
囁きと共についばむように口付ける。
背中に回した手で首筋をくすぐる様に撫でると、の口から吐息が漏れ、その隙に口内に舌先を差し入れると、ビクリと震えたは腕を突っ張って口付けから逃れた。
「だ、だめっ…。光秀殿が…」
「まだ大丈夫ですよ」
(彼は気遣いの人のようですから)
と、心の中で付け足す。
「でも…」
尚も躊躇いを見せるに、陸遜は切なげに目を細めてを見つめた。
「…、私は雪には慣れていなくて。…とても寒いんです」
はハッとして陸遜の姿を見直した。
確かに陸遜の衣装は肌の露出が多く、まして雪に慣れていないと言うからには、温暖な地方の出身なのだろう。だとしたらこの寒さはきっと切実なものに違いない。
露出した肩に触れてみると、そこは石のように冷たくなっていた。
「陸遜…。お腹も、すごく寒そう…」
の細い指が陸遜の剥き出しの腰に触れた。その瞬間、陸遜の中心が甘い疼きを訴えたが、陸遜は努めて冷静を装った。
(これを無自覚でやっているんだから、全く性質が悪いです…)
先程までとは反対に、が陸遜を包み込むように抱きしめると、陸遜は「生殺し」という言葉を感じながら、そろそろ光秀に戻ってきてほしいような、まだしばらくこのままでいたいような、複雑な思いに晒された。
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