Hostias et preces Tibi,
Domine,
laudis offerimus:
石畳の上に響くは、重くゆったりとした足音と、軽いが迷いのない足音の ふたつ。
やがてその音はぴたりと止み、夕闇の迫る静けさが辺りに満ちる。
「僕らの魂は塵の如く。昼も夜も、僕らの糧は涙ばかり。人々は絶え間なく云う、お前の神はどこにいる、と。多くの人々は云う、神の中に救済は無いと。目も、魂も、はらわたも、苦悩により衰えゆく。命は嘆きのうちに、年月は呻きのうちに尽きていく...誰もかれも背き去った。皆ともに、汚れている。善を行う者はいない。ひとりもいない。」
子どもの高い声が細く紡がれる___決意を秘めた足音の持ち主。
「慄いて罪を離れよ。横たわるときも自らの心と語り、そして沈黙に入れ。俺の足は敵を追って大きく踏み出し、敵に追いつき、滅ぼすまで引き返さず、よろめくことを知らない。敵を打ち、再び立つことを許さない。敵は俺の足もとに倒れ伏す。神は戦う力を俺の身に帯びさせ、刃向かう者を屈服させ敵の首筋を踏ませてくださる。俺を憎む者を俺は滅ぼす。」
大人の低い声が煙と共に吐き出される___動じることを知らない足音の持ち主。
花が綻ぶように笑顔を零す子ども。つられるようにして口元を歪めて見せた大人。
二人の先にそびえ立つ重厚な門が、揺れる音を立てて開き始める。
放たれた江戸城門の向こう側で、ひとりのアクマが深々とお辞儀をして二人を出迎えた。
「さぁ、始めましょうか、
「手を抜くなよ、
まさか、と子どもは云った。そして、
「存分に殺し合いましょう、クロス・マリアン元帥」
(主よ、賛美の生贄と祈りをあなたに捧げよう。)