僕はシュウさんの瞳に釘付けになってしまった。
今、シュウさんは僕に一目惚れをしたと言ったの?
……何だか頭が混乱する……
でもそんな切なげなシュウさんの目は見たくない……

「あのっ、僕何て言ったらいいかわかんないですけど……」

そう言った後、一度自分を落ち着かせる為深呼吸をし、
今の正直な気持ちを一気に話した。

「……僕、元々人が苦手で。
 でもシュウさんの笑顔を見た時、
 生まれて初めて人物像を描きたいって思ったんです。
 宿に戻ってきてからもシュウさんの姿が頭から離れなくて、
 それで気がついたら絵を描いちゃってたんですけど……
 でも、僕もシュウさんの笑顔をもっと見たいと思うし、
 もし辛い事があった時は、僕で良ければ話して欲しいと思います。
 そんな切なそうな目をして欲しくない。
 それがシュウさんが言う一目惚れなのかどうかは
 わからないですけど……
 でもシュウさんが恋に落ちたと言って下さった事、
 すごく嬉しかったです。」

シュウさんはしばらく黙っていた。
僕の心臓はバクバク言っている。
自分が思っている事をきちんと人に話したのは初めてかもしれない。
緊張で少し身体が震えてきてしまった。
僕を抱きしめていたシュウさんにその震えが伝わって
しまったのだろう。

「……そんな可愛い顔と言葉で煽られたら、
 無理やりにでも貴方を私のモノにしたくなってしまいますよ……」

そう言ってギュッと僕を抱きしめる。
先程のふわっという感じとは全然違い、
まるで僕が逃げるのを恐れるかのように……

シュウさんは僕を自分のモノにしたいと言った。
僕達は男同士。それも今日会ったばかりだ。
こんなのはおかしい。おかしいと思うけど……

……でもシュウさんの腕の中は暖かかった。それにとても心地いい。
この温もりにずっと包まれていたい……

「……嫌なら嫌だと言って下さい。
 それが無理なら早く私を押し退けて下さい。
 そうでなければ……」

左手は僕を抱きしめたまま、右手の人差し指で僕の顎を
上げさせると、ゆっくりと顔を近付けてくる。
そして今にも唇が触れそうだという所で。

「……ユヅキさん、今ならまだ逃げられますよ……」

少し掠れた声でそう囁く。
ここまで来ても、まだ僕に逃げ道を残してくれるシュウさんの優しさが
身にしみた。

……どこまで行けるかわからない。
でも精一杯シュウさんについて行ってみよう。
ただでさえ口下手な僕は、緊張で言葉がうまく出てこない。
だからその気持ちを表す為に、そっと両手をシュウさんの背中に
まわした。

「……ありがとう……」

シュウさんは緊張で震える僕の体をもう一度しっかりと抱きしめ、
そして僕達はキスをした……