その後僕達5人は学園内を色々見て歩いた。
そしてサトルとカナデがクラスの担当時間だった2時半に教室に
戻った後、3時半過ぎにツカサとヒビキと一緒に2年C組に行った。
C組では【コスプレ写真会】というのをやっていて、沢山用意
された衣装の中から好きなのを着て写真を撮ってくれる。

最初に写真会の事を聞いた時、是非ともツカサに着て欲しい
衣装があったので、『じゃあお互いに衣装を選びあって、文句
なしでそれを着るってどうかな?』と提案したんだ。
そしたらみんな面白そうだって賛成してくれて、帰ってから
その話をしたツカサも賛成してくれた。

でもその後、わざわざサトルとカナデが一番最後の時間を担当
する事にして、それが終わってから他の人には内緒で撮影を
しようという事になった。
本当はどのクラスの出し物も3時半で終わりなんだ。
3時半から片付けをして、5時から体育館で閉会式だから。
なのでそれをサトルから聞いた時
『わざわざそんな事しなくても、普通の時間帯じゃダメなの?』
と聞くと、
『シノブがコスプレするなんて知られたら、学園中の奴らが
 集まって来るだろ?』
と言われた。
そんな事無いと思うんだけど、と首を傾げる僕に、ヒビキが
苦笑しながら
『今年はシノブのドレス姿が見れないから、余計人が集まるだろうな』
と言ったので、
『ドレスなんか絶対着ないもん!』と言っていたんだ。


C組には既にサトルとカナデの二人しかいなかった。
二人で片付けるから、と言って他の人達を教室から出してくれたらしい。
なんかクラスの人達には申し訳ない気がしたんだけど、それでも
ワクワクする気分が止まらなかった。

丁度その時あらかじめ打ち合わせしていた通り、ヨドカワ先生も
閉会式の準備の合間をぬって来てくれた。
先生は最初恥ずかしいから嫌だって言ってたみたいなんだけど、
サトルが渋々承諾させたらしい。
教室の窓という窓は元々布で覆ってあったし、扉にも鍵をかけて
みんなで衣装を漁り始める。
でも僕は最初からツカサに着て欲しい衣装が決まっていたので、
それを横に取り置いて、周りの片付けられそうな物を片付けた。


まずはサトルと、出来るだけ早く体育館に戻らなければいけない
先生を撮る事にした。
カーテンで仕切られた更衣スペースに二人で入り、お互いに
『お前、どういう趣味してんだよ〜!』とか
『お前こそなんで俺がこれなんだよ?!』とかいう会話が聞こえる。
何を選んだのかな〜?と想像を巡らせていた時、二人が出て来た。

サトルは銀縁メガネと白衣。
先生は学ラン。

「先生似合い過ぎ〜!」
「教師と生徒が逆だな。」
「オオトモ先生〜!」

笑いながら口々に声をかけた。
すると先生は赤くなりながら下を向き『早く撮るなら撮れよ』と言う。
ヒビキがポラロイドカメラを向けると、サトルが先生の肩を
抱き寄せてニカッと笑いながらVサインをした。
先生は恥ずかしそうに下を向いたまま。
でもサトルの方が背が高いし、ホントに先生が生徒みたい。

その後急いで着替えた先生が『後でお前達のも見せろよ!』と
言って、赤くなったまま教室を出て行った。
ヒビキが撮り終わったそのポラロイド写真に
【保健医に手篭めにされた男子高生】
と書いている。
それを見たサトルが
『それじゃあ随分俺が腹黒そうじゃないか〜?』と苦笑し、
僕達も笑った。


さて次は双子達。
『え〜?これ着るの?』とか『俺ってこういうイメージなのか?』
とかいう会話が聞こえて、ゴソゴソ音がした後に二人で出て来た。

ヒビキは新撰組の衣装で腰に刀を差している。
カナデは女性物の着物を帯をしないままで羽織っている。

「わっ!二人ともイメージ通りっ!」

思わず驚いてしまった。
ヒビキの剣士姿はとっても様になってるし、少し恥ずかしそうに
しているカナデは何だかすごく色っぽい。
それにしても、同じ顔なのにどうしてこんなに違う衣装が
似合うんだろう?
じゃあ衣装が逆でも似合うって事かな?
まぁカナデは細身だけど背はヒビキと同じなんだし、別に
おかしくはないと思う。
……でもヒビキが女性物の着物……?
ダメダメ。
そんなの絶対見たくない……

「タカナシ、発想がやらしいぞ〜!」

サトルが笑いながらカメラを二人に向けた。
その言葉に僕とツカサも大笑いする。
だけどヒビキは一向に構う事無くカナデの腰を抱き寄せて、サトルが
シャッターを切る瞬間、カナデのうなじに口付けた。

ヒビキは着替え終わった後、自分達の写った写真に
【討ち入り前夜】と書いた。
それを見たサトルが『俺達に比べてカッコ良過ぎるだろ〜?』
と笑いながら文句を言ったので、みんなで笑った。


さぁ最後は僕たちの番。
時間が無いから急がなきゃ。
ツカサが何を選んだのかはまだわからないけど、僕はもう期待で
胸が張り裂けそうだった。
更衣スペースに二人で入るなりツカサに持っていた衣装を渡す。
当然僕が見たかったのは柔道着。
ずっとずっと見たかった姿をこんな形で見れる事が嬉しくて堪らず、
昨日なんてあんまり眠れなかったんだから。

ツカサは柔道着を受け取るなり『やっぱりな』とクスッと笑う。
そしてきちんとたたんだ何やら赤い衣装を手渡してきた。
何だろ、これ?
そう思っている内にさっさとツカサが着替え始めたので、それを
横目で見てドキドキしながら僕も着替え始める。
僕のは何やら胸に英語の文字が入った赤いノースリーブシャツ。
まぁ結構ノーマルかな。
ツカサは慣れた手つきで道着を着て、シュッと帯を締めた。
自分の着替えもそっちのけのまま、ほぅ〜と溜息を吐きながら
その姿に見惚れる。
やっぱりすっごくすっごくカッコいい……

「時間が無いんだろう?」

ツカサが苦笑しながら僕の頭をクシャッと撫でた。
ハッと我に返り、少し照れ臭くなりながら慌てて着替えを続ける。


……こ、こ、こ、これって……

着替え終わった僕が下唇を噛み締め、涙目になりながらツカサを
見上げると、ツカサはクスクス笑いながら僕に黄色くて軽い、丸い
ものを二つ渡してくる。
そして『文句なしって、シノブが提案したんだろう?』と言って、
そのまま更衣スペースを出て行ってしまった。

カーテンの向こうでは『さすが良く似合うな〜』とか『シノブがその
姿を見たがってたのがわかるよ』とか会話が弾んでいる。
でも僕がいつまでも出て行かないので『シノブ、早くしないと時間が
無いよ』と声をかけられ、真っ赤になって下を向いたまま渋々
カーテンの外に出た。

僕の姿を見た瞬間、みんなが絶句する。
あまりにも恥ずかしくて、そのままツカサの背中に隠れた。
すると途端にみんなが『シノブ、カワイイ〜!』とか
『お前、ハマリすぎ!』とか『そういう選択肢もアリだな』とか
勝手に言いながら大爆笑している。

……僕はブルマの上に真っ赤なミニのプリーツスカートを穿いて、
黄色いポンポンを持ったチアリーダー……

ようやく笑いが少し収まり、カナデが『ほら、写真撮るよ?』と
言ったんだけど、ツカサの背中から出て行く勇気が無い。
するとツカサがクルッと振り向いて僕を横抱きで抱っこした。
驚いて思わずその首にしがみ付き、ツカサが前を向いたところで
シャッターを切る音がする。
そしてヒビキが今撮った写真にさらさらと文字を書いた。


その後僕達は手分けをして教室を片付け、閉会式が行われる
体育館に急いだ。
先生がまだ見ていないので、写真はサトルが預かっている。

【保険医に手篭めにされた男子高生】
【討ち入り前夜】
【優勝した柔道部に自分をプレゼントするチアリーダー】

の3枚を。