10月7日金曜日
昼休みの購買。
今日はいつものカツサンドに新発売の五目おにぎりを買った。
数日前に売り始めていたから早く食べたかったんだけど、やっぱり
大人気でなかなか買えなかったんだ。
ツカサ君も喜んでくれるかな〜?
その上ヨシナガ先輩の姿が見当たらなかったので、嬉しいのと
ホッとしたので何だかルンルン気分のまま屋上に向かった。
ところがいつもあいている筈の鉄の扉に鍵がかかっている。
何か用事でもあって遅れて来るのかな?
じゃあたまには僕が先に屋上に出て、ツカサ君が来るのを待とうっと。
サトルに教えて貰った通り、ガチャガチャ鍵穴をいじってみると
見事に鍵がひらく。
僕って天才かも〜っ!
自己満足に浸りながら扉を開けようとした瞬間、
「残念だけど、今日は友達に会えないと思うよ?」
と、突然後ろから声をかけられた。
その声に慌てて振り返ろうとした瞬間、いきなり後ろから口を
押さえられて、そのまま右手にある用具室に引き摺り込まれる。
抵抗する間も無く床に叩きつけられるように転がされ、痛みで
うずくまっているちょっとの間に、声の主が用具室の鍵を
しめてしまう。
その音にやっとの事で振り向くと、やっぱり、ヨシナガ先輩……
「……ハシモト君、どうして僕じゃダメなの?
空手にしか興味が無いなんて嘘でしょう?
毎日嬉しそうに屋上に通っているくせに。」
先輩は僕の方に一歩ずつ近寄って来る。
逃げなきゃって、早く動かなきゃって思うのに、僕は身動き
一つ出来なかった。
空手の試合ではどんなに怖い視線を向けられても怯んだ事など
一度も無いのに、見慣れない意志を湛えている先輩の目が
何を考えているのかわからなくて、恐ろしくて堪らなかった。
先輩はどんどん近付いて来て横に膝をつくと、そのまま僕の
両手首を掴んで乱暴に床に押し倒した。
その勢いで固い床に頭をぶつけ、一瞬クラッとしてしまう。
その隙に先輩は僕に馬乗りになり、片手で両手首を一纏めに
掴む。
「ハシモト君は図体の大きい男が好きなの?
……それとも純情な見た目と違って、アソコが
大きい方がいいのかな……?」
何を言われているんだかわからなかった。
だけど目の前まで近付けられた先輩の目の奥に
どす黒いモノが渦巻いている。
……これは何?
……先輩は一体何を考えているの?
そう思っていた時、頬をベロリと舐められた。
瞬間、全身に悪寒が走る。
「やっっ!!」
必死で顔を背けるのに、先輩の舌はそのまま顔中をピチャピチャと
音を立てて舐めながら頬、顎、首にどんどん移動してくる。
それと同時に学ランの前ボタンをはずされ、中に着ていた
Tシャツの裾をズボンから抜かれると、直接肌の上に先輩の手が
忍び入って来た。
ザワザワという気持ち悪さが全身を駆け巡り、僕は懸命に
『やだっ!やめてっっ!』と言いながら顔を左右にふり続けた。
反撃しようとは思うんだけど、空手は絶対暴力に使わないと
小さい頃から叩き込まれて来た体は、思うように動いてくれない。
それに瞬発力や速さ、技で戦うタイプの僕は、元々自分の
力自体は弱かった。
だから通常に抵抗しようと思っても、力だけではどうやっても
敵わない。
その内先輩の手はズボンの上から僕の縮こまっているモノを
何度も擦り始め、経験した事のないその感触がショックで、
涙目になりながら必死でもがき続ける。
「……ハシモト君、このまま僕のモノになっちゃいなよ?
大切に大切に抱いてあげるから。
それに君の友達は、今頃僕の友人達のサンドバッグに
なっていると思うよ?
いくら体が大きくたって、さすがに5人には敵わない
んじゃないかな?」
その言葉に息を飲んだ。
ツカサ君が……
ツカサ君の顔を思い出した途端、僕の体は一切の抵抗をやめた。
首に舌を這わされている気持ち悪さも、その合間に時々強く吸い
付かれるような痛みも、下半身を弄られる、吐き気がするような
感触も、まるで薄いベールを被ってしまったように一気に遠ざかる。
そして心のどこかが凍りつくほど冷えていった。
けれどそれに反して体中の血が一気に沸騰し、目の前が真っ赤に
染まったような感覚に襲われる。
……僕のせいでツカサ君が……っ!
抵抗を止めた事で少し安心したのだろう先輩が、僕の両手を押さえて
いた手の力を緩めた次の瞬間、そこから自分の両手を一気に引き抜き、
禁止されている顔面攻撃を繰り出していた。
いつもだったら絶対こんな事しない。
顔面攻撃の危険性も充分わかっているし、その上相手は空手の経験
などもちろんない人で、小さい頃から鍛錬を積んで来た僕の攻撃が
どれだけダメージを与えるのかもわかってた。
だけど止められなかった。
何も考えられなかった。
ツカサ君にひどい事をした先輩が許せないって、
その時はそれだけしかなかった……