俺はちょっと意外だった。
今までのヒビキから考えると、
絶対ミスズちゃんの事を考えてあげるように思えないんだけど。

すると又シノブが笑いながら話し出した。

「あの子が仲の良い友達に話してるのを聞いた奴がいてね。
 カナデは太陽みたいで憧れるって。
 いつも明るく周りを照らしてて、
 傍にいると自分の汚い部分も洗われる様な気がするって。
 ヒビキは彼女の気持ちが良くわかったから、
 せめてそれ位はしてやろうと思ったんじゃない?」

ヒビキを見ると、壁に寄りかかって腕を組んだまま下を向いている。

「さ、もう準備しないと。
 サトル、控え室まで付き合ってよ。じゃあヒビキ待ってるからね。」

とシノブは言った後、俺の傍に来て耳を貸せ、と言い、

「ヒビキさ、カナデに話して貰えなかった事で随分落ち込んだんだ。
 でもそれは自分が子供みたいな独占欲を丸出しにしてるからだって
 反省して、少し大人になって彼女の気持ちだけは認めてあげようと
 したんだよ。
 カナデも弟の頑張りを認めてあげてね。」

と言った。
そしてポンと俺の肩を笑って叩いたサトルと一緒に行ってしまった。

ヒビキも着替えに行かなきゃいけない時間。
でもその前に一言だけ話したかった。
だけどさすがに人目がある所では話し辛かったので、周りを見回し、
誰もいなさそうな用具室にヒビキの腕を掴んで引っ張って行った。


思った通り誰もいなく、ヒビキが中に入ってから戸を閉めて
鍵をかけた。
これで少しは二人で話せる。

ヒビキは戸の脇に寄り掛かって俺の方を黙って見ていた。
その目を見ながら、俺は一度深呼吸をする。

「ヒビキ、今日は勝手にここへ来てごめん。
 その上俺のせいで怪我させちゃって。
 それから今までの事も全部ごめん。」

俺は頭を下げた。
ヒビキはずっと俺の事をやきもきしながら見てたんだろう。
ミスズちゃんに振り回されている俺を本当に心配してくれたんだと
思う。
だから、俺が話をしなかった事で傷付いたのにも関わらず、
こうやって影で俺を守ってくれようとしたんだ。
それなのに俺が全部台無しにしちゃって……

「ヒビキに言われたように、
 最初からミスズちゃんにはっきり嫌だって言うべきだった。
 それなのに俺が曖昧な態度を取ったせいで、周りみんなを
 巻き込んで、ヒビキもミスズちゃんも傷付けてしまったんだよね。
 それに、最初に変な手紙が来た時からヒビキに
 相談するべきだった。」

ヒビキが口を開いて何かを言おうとしたが、俺はそれを遮って
話し続ける。

「ミスズちゃんが俺の事を好きだと思ってくれる気持ちは
 ありがたいと思った。
 でも悪いけど、もう俺には関係ないし、もう二度と
 あんな協力しない。
 だからヒビキ、俺を許してくれる?
 ヒビキが弟だから、信用出来ないから話さなかったんじゃない。
 俺は……ヒビキの負担になって嫌われるのが怖かったから……」