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あの後病院に行って治療した方がいいとリョウに言ったの
だけど、『明日遼(ハルカ)の勤務時間内に行く』と言って
結局首を縦に振ることはなかった。
そして五人衆の子達を玄関で見送った私を真っ直ぐ寝室に
連れ込み、ベッドから少し離れた場所に立たせる。
それから自分はベッドの縁に座り、スタンドの明かりしかない
薄暗い部屋で、唯一マットな深い光沢を放つシガレットケース
から取り出したタバコに火をつけた。

「……服を脱げ」

一瞬その言葉に目を丸くして驚いたものの、タバコを咥えた
まま片手で自分のネクタイを緩め、シガレットケースをサイド
テーブルに置きながら私に向けてくる瞳を見て、リョウが私の
存在を今すぐ確認したいのだとわかった。


結び目を解き、シュッと音を立ててネクタイを抜くと、リョウの
目を見詰めながらYシャツのボタンを上から一つずつ外していく。
紫煙を燻らせたまま、私を見詰める鋭く熱いリョウの視線。
その熱さを感じるだけで私の中の欲望が全身を取り巻いていく。
……早く抱かれたい……
リョウの熱い楔で貫かれながら、リョウが私の元に帰って
来たのだと、心の底から実感したい……

熱い視線を意識しながらYシャツの前をゆっくりとはだけ、
震える息を吐きながらベルトに手を掛ける。
リョウは灰が落ちそうになっているタバコにも構わず、ただ
左手の指にそれを挟んだまま黙って私を見ていた。

カチャカチャと音をさせながらベルトを外し、ズボンのボタンも
ファスナーも外して手を離すと、ベルトの重みで勢い良く足元に
ズボンが滑り落ちていく。
リョウの方に一歩進み出ながらそこから足を抜いてしまうと、
残るのは下着と前を肌蹴たまま羽織っているYシャツだけ。

視線を合わせたまま静かに笑いかけると、一瞬目をすがめた
リョウがサイドテーブルに置いてあった灰皿でタバコをギュッと
揉み消した。
そして肌蹴たYシャツの隙間から差し入れた両手で私の腰を
力強く引き寄せ、そのまま腹部を舐め上げていく。

「あっ…ぁ……」

ゾクリという快感があっという間に全身を駆け抜け、タバコの
残り香に包まれながら首を仰け反らせてリョウの髪を掴んだ。
それと同時に私の下着を引き下ろし、既に立ち上がりかけて
いる私自身をいきなり口に含みながら舌を絡ませる。

「……んっ……」

一度口を離したリョウは、思わず声を漏らしてしまう私に見せ
付けるように自分の右手の指を舐めた。
そしてもう一度私自身を口に含んで鈴口に舌を捻じ込みながら
脚を開かせ、唾液で濡れた指を後ろに這わせてくる。
肌蹴たYシャツがリョウの動きに合わせてサラサラと体を掠め、
愛撫にも似たその動きに全身が蕩けていく。
キスさえもまだだというのに抑え切れない欲望が体中を渦巻き、
私の後孔はリョウの指を次々と呑み込んでいった。


いつでも私に自分の全てをぶつけ、そして私にも全てを明け渡す
よう求めて来る。
これこそが私の望んでいるリョウ……

私達の間に 『生まれ変わっても』 などという言葉はない。
私達の行く末は地獄だけなのだから。
だからこそ今あるその存在を、貪欲にどこまでも追い求め続け
られるという幸福を、一緒に感じ合える存在。
これ程までに求め合える人など、リョウしかいない。
こんな愛し合い方が出来る人は、リョウ以外には存在しない。

もがき苦しみながら築き上げてきた今の社会的立場でさえ、
リョウと共にいられる為なら一瞬で壊れてしまっても構わなかった。
この腕に抱かれる為ならば、何を犠牲にしても構わない……


全身を襲う快感に震え、だらしなく口を開けながら
『リョウ……リョウ……』とリョウを求め続ける。
リョウはそれに応えるように更に激しさを増していく。

緩急をつけながら前を口で扱かれ、後ろに3本の指を抽挿
されてしまうともう立ってはいられないほど膝がガクガク
し始める。
すると、リョウの肩に手を置いてくずおれないよう必死で立って
いる私の腰を左腕で支え、上目遣いでニヤリと意地悪く笑い
ながら軽く歯を当ててきた。

「ん、あぁっ……ッ!」

一瞬のその痛みの後に吸い上げられるゾクゾクするような
快感を与えられ、そしてリョウの絡みつくような視線に
追い討ちを駆けられて、一気にのぼりつめた私はそのまま
リョウの口に欲望の証を吐き出す。
リョウはそれを最後まで吸い取って後ろから指を抜くと、
ガクリと膝の力が抜けてしまった私の体を両腕でしっかりと
支え、そしてもう一度私を立たせた後、またしても腹部に
舌を這わせ始める。
それにブルッと身震いしながら見下ろすと、

「遼、まだまだこれからだろう?」

と唇を這わせたまま囁いて、左腕で腰を支えたまま右手で
内股を撫で上げて来た。
リョウの肩に手を置き直し、全身に鳥肌を立てながらも
その言葉に苦笑が漏れる。

「私の龍にキスをしなければ終われませんからね」

クッとリョウが笑って私を見上げた。

「それは俺が服を脱ぐまで続けられるという意味だな?」

その返事にクスクス笑う。

「そういう受け止め方が出来るとは気付きませんでした
 ……でも沢山睡眠も取りましたし、たまにはそれもいいですね」

すると相変わらず意地悪くニヤリと笑ったリョウが、視線を
合わせたままいきなり脇腹を吸い上げてきた。
ピリッというその感触に思わず声をあげて仰け反ると、

「……覚悟しろよ……」

と身悶える私を片腕で強引に抑えながら更に脇腹を強く吸い上げ、
次の瞬間には私自身を口に含んだ。


はぁ〜と甘い吐息を漏らしながらリョウの髪をかき上げ、早く
キスがしたいのに……と少しだけ不満に思う。
けれど意地悪なパートナーは私の望みをわかっていながら
わざとそれを避け、私が身を捩って強請るまで与えては
くれないのだろう。
……まぁそんな一面でさえ愛しくて堪らないのだけど。

私の昇り龍に再会出来るのは、一体いつになるのやら……
内心で苦笑しながら羽織っていたYシャツを脱ぎ捨てる。
そして惜しみなく与えられる快感に酔い、鋭く熱い視線に貫かれ
ながら自らの持つ全てを与え、お互いの存在を心ゆくまで感じ
合い続けた。